今、冷凍食品は一昔前とは比べ物にならないほどクオリティが上がっていて、冷凍食品全体の出荷額も年々右肩上がりに増えています。
理由を探ってみると、冷凍技術がとてつもない進化を遂げていたことが分かりました。
■キーワードは「急速冷凍」
大阪初という『冷凍食品専門店 Reco』。ほとんどの商品がスーパーには並ばない冷凍食品とのことです。
冷凍食品専門店 Reco 徳山侑希さん:
「例えば、北海道でしか置いていないコロッケになってます。もうホクホク、サクサクでとってもおいしくて。青森のホタテとバラ焼きもあります」
地元だけで売っている商品が多く、直接全国の製造元と交渉して仕入れているそうです。
一方、目立つところにずらりと並んでいるのは、大阪府箕面市にある本格イタリアンレストランによるこだわりのピッツァです。
徳山さん:
「石窯で焼いたものをそのまま急速冷凍して。冷凍の機械がとても進化してまして、食感とか、そのままお店での味を表現できるようになったって聞いています」
窯で焼いて急速冷凍したというピッツァはどんな味なのでしょうか。
薄田ジュリアキャスター:
「このチーズがとろっと伸びる感じって、冷凍のピッツァではなかなか出せないですよね。トマトのみずみずしさまで感じられるっていうのが驚きでした。おいしい」
鮮度や香り、旨味まで凍らせて閉じ込める『急速冷凍』によって、その市場はどんどん広がっています。
コンビニには冷凍のお刺身まで並ぶ充実ぶり。水にさらして解凍すれば、鯛やカンパチ、馬刺しまで味わうことができます。今、冷凍食品がどんどんおいしくなっているのです。
■町中華の味が冷凍によって世界へ
箕面市にこの夏、新たにオープンした冷凍食品の製造直売店『FROZEN Lab.』。
この会社は大阪市の十三で59年間、中華料理店『龍鳳』を営業していました。その店を閉めてまで、新たに冷凍食品事業に進出した理由は…。
大真実業 大里佳史取締役:
「コロナ禍の中で社会情勢も変わり、飲食業も不透明だったので、冷凍の『中食』というのはまだ伸びしろがあるなと思いまして。違う形ですけども、龍鳳の味は残せるので」
先代から続く伝統の味と、腕のある料理人たちの職場を守りたい…。そこで目を付けたのが冷凍食品でした。中でも麻婆豆腐は自慢の一品ということです。
薄田キャスター:
「うわー!香りがすごいですね。(食べて…)おいしい!すごく本格的な。舌がちょっと痺れる感じがたまらないですね」
街中華の味をどうやって冷凍食品で再現するのか、併設工場に案内してもらいました。
大里取締役:
「3人前ずつ作っています。大量に作ると味がブレるので」
店とほとんど変わらない調理法でつくった麻婆豆腐を真空パックにします。そして、熱々のうちに、急速冷凍機へ。
大里取締役:
「この中が今マイナス30度の状態で保たれているので、ここで瞬間冷凍します」
麻婆豆腐の冷凍は特に豆腐の水分調節が難しく、従来からある冷気で凍らせる方法だとパサパサになってしまったそうですが、アルコールの液体で真空パックを凍らせることで満足のいく食感を実現しました。
大里取締役:
「日本中の方に食べていただけたら、第一段階としてはいいですし、販売網が広がって、また海外とかに行けたらいいなとは思っています」
こだわりの町中華のメニューを冷凍で長期間保管し、街を飛び越えて世界へ届けることも夢じゃない…。冷凍食品事業への期待が高まっています。
■電磁波と磁力で水分子が整列「プロトン凍結」
薄田キャスター:
「急速冷凍技術が進化する中、奈良県の企業が業界で話題の冷凍機を作っているそうです」
奈良市の『プロトンダイニング』。店内にはお弁当からお寿司、パン、さらには様々な洋食メニューまでずらり。全て特殊な急速冷凍機によって凍結されているそうです。
買い物客:
「冷凍食品が好きで『最近の冷凍食品ってどんなやろう』と思って調べてたら、“プロトン凍結”がどうこうって出てきたんで」
初めて聞いたワード「プロトン凍結」。一体何が特殊なのか、彩り豊富なそぼろ弁当を電子レンジで解凍してもらい試食してみました。
薄田キャスター:
「驚いたんですが、香りがすごいんです。冷凍食品だと思えないぐらい。出来たての香りが凄いたってて。(食べて…)しっとりふっくらしてる。冷凍独特のベチャっと感とか、ボソボソとした感じがなくて、本当に今作ってもらったみたい。冷凍かな…これ」
思わず疑ってしまう食感。一体どんな冷凍技術なのか、機械を見せてもらいました。
プロトングループ 総合企画部 樋口博一次長:
「上下に強力な磁石が入っています。電磁波と磁力を通すことによって、水分子が細かく整列することになるんですね。凍結した時にも破れにくいですし、その後解凍した時にもそこまでドリップが出ませんので、旨味が残って復元率が高いということになります」
従来の凍結方法に比べてプロトン凍結では魚や肉を冷凍して解凍した時にドリップが出にくいとのこと。
樋口次長:
「お魚とかって時期によって、やはりとれる時ととれない時が出てくると思うんですけど、この凍結でストックをして、あまりとれない時期に出荷できるようにすれば(価格を)ならすことができる。平準化ができます。色んな産地で使っていただいております」
■冷凍技術の進化で食文化の拡大も
奈良の名物として知られる柿の葉寿司の製造元『柿の葉寿司のゐざさ 中谷本舗』でもプロトン凍結機が活躍しています。
ネタとシャリ、そして柿の葉というバラバラの食材をこれまでは均一に冷凍するのが難しかったそうですが、プロトン凍結によって満足のいく商品になりました。
去年、2台目を追加で導入して本格的に冷凍柿の葉寿司の通信販売を展開しています。
中谷本舗 営業部 澤田真次長:
「海のない奈良県で生まれた保存食として発展したわけなんですけど、今回この冷凍技術を用いまして、今までお届けできなかった地域の方々にもお届けできる、食文化を広めていけるように今後やっていきたいと思っております」
技術が進化しておいしさも進化する冷凍食品…。時間を超え、空間を超えて、新鮮な食べものが届けられるようになり、新たな食文化の創造にも繋がっていきそうです。
(関西テレビ9月6日放送『報道ランナー』内「ヒットにワケあり!オカネのヒミツ」より)