止まらない「値上げの波」。
油や冷凍食品など挙げればキリがないほどで、その数は今年中に2万品目を超える見込みです。
そんな中、価格を維持しているのが大手スーパー『イオン』のプライベートブランド「トップバリュ」。
食料品・日用品およそ5000品目の価格を維持していて、7月以降、価格を改定したのは3品目のみです。
■物価高でも価格を維持できるワケ
なぜほとんどの商品で価格を維持できるのでしょうか。
食料品売り場をのぞくと…。
薄田ジュリアキャスター:
「(お客さんに)かごの中身、見せていただいていいですか?トップバリュの商品がいくつかありますね。スナックと納豆と…。けっこう買いますか?」
客:
「お水も買いますね、プライベートブランド。メーカーのラベルがないのがある。剥がす手間がかからない」
この一工夫に価格維持のヒミツがありました。
イオン大阪ドームシティ店 青木武志店長:
「通常ラベルがあるんですけど、ラベルレスの天然水というのがありまして。こちらの商品についてはラベルを全てなくしまして。その分の資材コストを下げて値段をそのまま据え置きさせていただきました」
さらに製造拠点の数を増やし、配送コストも抑えることで2リットルのペットボトルは、1本60円という低価格を維持しています。
生活必需品のトイレットペーパーも価格維持に成功。
きつく巻くことで1ロールの大きさは変えずに長さを延長。
1パック8ロールで12ロール分の長さを実現しました。
一度に運べるパックの量が増えたことで、輸送費や原材料費のコストが上がった分をカバーでき、価格を維持したのです。
そして、意外な方法で価格を維持している商品が、おでんです。
青木店長:
「元々冷蔵で商品を展開していたんですけど、お客さんから『常温でも保存できるんじゃないの?』というお声をいただきまして」
コストが高い冷蔵のトラックで運んでいた分を、おでんは全て常温配送に変えて価格を据え置きました。
このように価格を維持することで、プライベートブランド以外のメーカーが値上げした商品で特に売り上げを伸ばしています。
そもそも比較的安さを保てるプライベートブランドの仕組みとは…。
流通ジャーナリスト 西川立一さん:
「メーカーから注文したものは全部買い取るということで。さらにどのぐらい売れるかちゃんと予測してるんですね。それに基づいて発注してますので、あまり売れ残りもありませんし。営業努力とか広告宣伝費もかからないので、コストもその分安いです」
やはり安さが魅力のプライベートブランド。
ただ、今はさらに進化しています。
西川さん:
「より付加価値を高めた商品もPBで出ていて、魅力ある商品が出てますので、そういった商品もやっぱりよく売れるようになってます」
■プライベートブランドに付加価値を
そのひとつがスーパー『ライフ』。
単価を抑えたプライベートブランド「スターセレクト」「スマイルライフ」に加え、添加物をなるべく使わない「ビオラル」、素材や製法にこだわった高品質の「ライフプレミアム」を展開していて、商品は1400種類にも上ります。
ライフコーポレーション 小林弘幸さん:
「『ビオラル』というPBがありますが、そちらのブランドに関してはコロナ禍以前の2021年対比では売り上げが160%ほど達成しています。その要因としては、健康志向が高まっているというところで、お客さまに支持されている証拠かと感じています」
着色料や香料を一切使用していない「ジンジャーエール」は、発売から4カ月で9万本の売り上げと、目標の2倍のスピードで売れ続けています。
「サラダチキン」は、鶏肉と塩だけで作られていて、発色剤や保存料を使っていません。
売り上げはおよそ2.2倍に。
中には、物価高の影響を受けて逆に売れたものも…。
小林さん:
「通常の油が、値段が上がっていて、この機会に付加価値のある商品を選んでいただくお客様がいらっしゃいます」
3月から7月は、去年の同じ時期と比べ、「こめ油」の売り上げが約1.4倍になりました。プライベートブランドは安さだけでなく、高級志向のお客さんにも対応しています。
小林さん:
「こちらの商品なんですけど、『ライフプレミアム』のピザで、ほかの商品を見ていただくと、お値段が100円ほど高いのがわかると思うんですけど、その分、美味しさや素材にこだわっている商品ということで、お客さまに非常に支持されている商品になります」
コロナ前の2019年と比較すると、昨年度は約2倍の売り上げを達成しました。
小林さん:
「こちらの商品、3種類あるんですけど、それよりももう一つワンランク上の商品を今開発していまして。498円ぐらいの値段になるかなと、今想定しているんですけど。その分、お客さまに、もっと美味しく感じていただける商品に今仕上げています」
■リッチも安価も…PBの対応の幅広がる
今回、その開発の様子を特別に見せていただきました。
製造するのは、冷凍や冷蔵、家庭用から業務用まで数多くのピザを手掛ける食品メーカー『デルソーレ』です。
デルソーレ 嶋津恵介マネージャー:
「前回の宿題でいただいたチーズの枚数を増量しました。もう1点、トリュフオイルのトッピングの順番を修正して…」
ライフコーポレーション 小林さん:
「売り場に並んだ時、しっかりと主張しているのでだいぶ改善していただいたと思います」
開発を始めておよそ1年。
今年のクリスマスシーズンに発売予定です。
ライフコーポレーション 小林さん:
「非常に美味しく仕上がっています。最後のトッピングのトリュフオイルも非常に香りいいかなと思うので、これで進めていただければありがたい」
トリュフオイルのアイデアは、デルソーレ側が提案したものでした。
メーカーとしてライフのブランドを任され、どう違いを出すか試行錯誤しています。
デルソーレ 嶋津さん:
「半分はチャンスだと思ったし、半分はプレッシャーでドキドキしながら商談していました。売り上げも含めて、拡大のチャンスをいただいたと思っています」
人気商品になればメーカーとして信頼度も上がり、ライフに来るきっかけにもつながります。
素材にこだわりたい人には付加価値をつけたリッチな商品を。
低価格にこだわる人には、企業努力の賜物の安価な商品を…。
対応の幅を広げるプライベートブランドの勢いは止まりません。
(関西テレビ8月23日放送『報道ランナー』内「ヒットにワケあり!オカネのヒミツ」より)