“かき氷の聖地”奈良。
かき氷ファンの必需品となっている無料ガイドブック「奈良かき氷ガイド」は、最初の発行が2015年、今年で8年目を迎えるそうです。
今や、かき氷専門店だけでなく、レストラン、老舗和菓子店、道の駅まで参加し、掲載数は過去最多の60軒となっています。
猛暑ともにその盛り上がりもとどまるところを知らない、かき氷の最前線。
そのヒットのヒミツを取材しました。
■かき氷が今や観光誘致のコンテンツに
いよいよ夏本番。暑い夏に食べたくなるかき氷が、“スイーツ”に進化を遂げてはや数年。
雪のようにふわふわな氷は今や当たり前。求められるのは、見栄えの美しさです。
奈良市にある茶道文化を楽しむカフェ『茶論(さろん)』では、今年、お茶を豪快にかけて食べるかき氷が登場しました。
濃い緑色が白い氷に映えて目を引きます。
新作誕生のきっかけとなったのは、JR東海の観光キャンペーンポスター。
起用された際の撮影で思いついたのだそうです。
茶論 奈良町店 西優太廊店長:
「元々は白いかき氷で、見栄えを『もう少し“映え”させたい』と(JR東海から)相談があって。そこで濃茶をかけるという発想に至りました」
今や観光誘致のコンテンツとしても注目される、華やかなかき氷。
一体どんな魅力が、人々を引きつけるのでしょうか。
■「奈良は鹿と大仏しかおらへん」に奮起
奈良の“映え”かき氷をけん引してきた『kakigoriほうせき箱』は、オープンから8年目の今年も、毎日予約でいっぱいという人気ぶり。
イチオシは、カラフルなシロップにヨーグルトのエスプーマがのった「パステルフルーツ氷」です。
ほうせき箱 平井宗助代表:
「皆さん奈良っていうと『鹿と大仏しかおらへん』と。『鹿と大仏に失礼やっちゅうねん』って僕は思いながら…」
代表の平井さんは「奈良かき氷ガイド」を手掛けた1人。
“奈良にうまいものなし”という言葉がささやかれるほど名物が少なかった地を、大好きなかき氷で盛り上げたいと、取り組んできました。
ほうせき箱 平井代表:
「かき氷は氷を薄く削って味付けしているので、意外にサクサク。大きいんですけど、どんどん食べていける。ハシゴをするのに向いていると思いますね。かき氷を巡っていただいている間に滞在時間が長くなって、これを機に宿泊もしてもらえるかなと」
今では土産物店やホテル、フレンチシェフまでが、個性豊かなかき氷を提供するようになりました。
■8割が商品にならない“柿の葉”に着目
そんな、奈良の盛り上げ役を買って出た平井さんが今年4月、新たに立ち上げた『柿の葉茶専門店SOUSUKE byほうせき箱』。
こちらのかき氷のシロップは、柿の葉を焙煎して作った茶葉を煮詰めて仕上げています。
柿の葉はビタミンCやポリフェノールを含み、健康にも美容にも良いそうです。
ほうせき箱 平井代表:
「私、前職は柿の葉寿司のメーカーに勤めておりまして、その時に柿の葉っぱとご縁がありましてね」
奈良名物・柿の葉寿司には、規定に沿った形や大きさの美しい柿の葉が使われますが、それは全体の2割だけ。
残りの8割は商品にならないため、これだけで生計を立てるのが難しく、辞めてしまう農家が増えているのだそうです。
ほうせき箱 平井代表:
「小さくても形が変でも破れてても、使えるような商品を作れないかなと思って、お茶の開発を始めたわけなんです」
使われなくなった農地を活用し、柿の木を譲り受け、地産地消に取り組んでいます。
ほうせき箱 平井代表:
「多種多様なシロップと食感、味わいを工夫しやすい食べものなので。透明な純氷から、いろんなものが出てくるマジックなようなもので、これからもどんどん楽しくなっていくなと想像しております」
日本中のかき氷を食べ歩き、ガイドブック『かきごおりすと』を執筆する、日本かき氷協会の小池隆介代表は…。
日本かき氷協会 小池隆介代表:
「かき氷自体が氷でできていますから、いろんなものとの相性がとてもいいです。甘いだけではなくて、例えばちょっと塩分のある小豆などもいいと思います。体を冷やす、涼をとりながら、栄養も取り塩分も取るという、すごく理にかなった食べ物。例えば今であればSDGsということで、環境を考えたものやコンセプトがしっかりしたお店も増えつつあります」
■チョーヤが手掛ける“至極の梅かき氷”
調査をすると、SDGsの観点から生まれたかき氷を、京都で発見しました。
訪ねたのは、商業施設『GOOD NATURE STATION』。
ここで見つけたのが、梅酒を作って60年のチョーヤが手掛ける梅体験専門店『蝶矢』と『Hyssop』とのコラボかき氷“至極の梅かき氷”です。
真っ白な氷に青じそシロップをしみ込ませ、砂糖にじっくり漬けた梅をまるまる1個添えています。
梅シロップや梅酒を作る体験ができる『蝶矢』は、連日予約でいっぱいという人気ぶりなのですが…。
蝶矢 京都店 石橋俊志店長:
「42%の方が、漬け終わった梅の一部や全部を捨てていることが分かりまして…」
蝶矢によると、1年でおよそ2800トンの漬け梅が、家庭で食べ切ることができずに捨てられている計算になるのだそう。
フードロスを減らし、おいしく楽しむ方法を知ってほしいという思いから、梅シロップを作った後の“漬け梅”を使ったかき氷が誕生。中には、サワークリームのアイスが隠れていました。
蝶矢 石橋店長:
「意外と知られていない、おいしい組み合わせがまだまだあると思いますので、皆さんに『おっ!』とびっくりしてもらえるようなことをやっていきたいと思います」
■冬場の収納場所に困らないかき氷器も
お店で食べる特別なかき氷もいいですが、家で作るのも楽しみ方のひとつ。
最新のかき氷器を求め、大阪の会社『ドウシシャ』を訪ねました。
今年5月に発売されたばかりの、その名も「収納を考えた手動かき氷器」。
本体の骨組みはもちろん、氷を入れるカップまでパタリと折りたたんで収められています。
数分で、簡単に組み上がってしまいました。
ドウシシャ 紀之定良太さん:
「冬場の収納場所に困ったり、冬場に嫌われてしまうような部分もかき氷器にはあったので、冬場に嫌われないかき氷器を目指して開発を進めました。全てパーツを分解して丸洗いできますので、お手入れのしやすさは抜群です」
(関西テレビ7月5日放送『報道ランナー』内「ヒットにワケあり!オカネのヒミツ」より)