パン屋さんに昔からある、定番の人気商品『クロワッサン』。
好きなパンランキングを3種類見てみると、クロワッサンは1位か2位。いずれも上位にランクインしています。(みんなのランキング・日本能率協会総合研究所・LINEリサーチ)
そんなクロワッサン、実は今、高級食パンに続き、専門店が続々オープンするほどのブームになっています。
その背景に何があるのか、取材しました。
■種類を絞って生産性向上→低価格を実現
まずやってきたのは、大阪・梅田。2021年11月にオープンしたミニクロワッサン専門店『MIGNON(ミニヨン)』です。
博多にある1号店は26年間行列が絶えず、満を持して大阪へ。季節限定のものも含め、常に5種類販売しています。
MIGNON梅田店 荒井徹エリアマネージャー:
「焼き上がってから5分以内にシロップを塗ることで、しっかりとクロワッサンに浸透していく。ベタつきを抑えられる効果があります」
焼き上がりのお味は…。
薄田ジュリアキャスター:
「生地が表面さっくりなんですけど、すごくもっちり伸びますね。おいしい」
朝から夜まで焼きたてを提供し、1日に販売している数は、なんと約8000個。
商品をクロワッサンに絞ることで、製造工程の単純化から生産性が上がり、多く作ることができるので、お手頃な価格で提供できています。
夕方から夜にかけて買う人が多いということなのですが…。
荒井エリアマネージャー:
「当店はおやつと、あとは翌日の朝、朝食にされる方が非常に多いので、夜にいらっしゃる方も多いです」
おやつとしても人気だというクロワッサン。
実際に、いつ食べることが多いか、街の人に聞いてみました。
男性:
「朝ごはんとかですね。サクサクしてて、中にチョコレートが入ってるのも好きです」
女性:
「中にホイップやフルーツが入ったクロワッサン。午後3時、おやつの時とかに食べます」
■低価格の秘密は“冷凍生地”…作業時間短縮し人件費カット
そんな間食としての需要に目をつけたのが『嵜本(さきもと)』。
高級食パン専門店にも関わらず、4月から甘いクロワッサン3種類を販売し、毎日夕方には売り切れるほど大人気です。
食パンを作りながらも参入できたのには、あるヒミツが…。
嵜本を運営するドロキア・オラシイタ 荒井健作さん:
「(工場で)一度生地を作って冷凍して、こちらの店舗に届くようになっています」
クロワッサンの生地は何層にも折り重ねて作っていて、層の数によって食感に違いを出しています。
嵜本がこだわったのは、通常の3倍とされる108層。
手間がかかる生地作りを工場で済ませ、そのまま冷凍。バターや小麦などの材料費が高騰する中でも、店での作業時間を短縮し人件費をカットすることで、なるべく価格を抑えて作ることができました。
荒井さん:
「弊社は食パンをメインで販売しているので、食パンをメインで、サブとして『ついで買い』でクロワッサンを買っていただきたいとか、明日の朝食に1つ持って帰りたいなというお客さんを狙って、お作りさせていただいています」
■“専門店新規参入セミナー”にも多くの受講生
このように、クロワッサンへの参入を考えている企業は、増えているのでしょうか。
企業のコンサルティングをしている船井総合研究所に話を聞くと、「クロワッサン専門店新規参入セミナー」があるとのこと。
船井総合研究所 堀雄斗さん:
「こちらが普段セミナーをさせていただいている会場です。机が埋まるぐらいの方にご参加いただきます」
セミナーの内容は、市場の盛り上がりや繁盛する店のポイントについて。
名物として売り出したい人や新規で出店したい人などが集まり、他のスイーツ専門店の講座に比べて約2倍の人が受講しているとのことです。
堀さん:
「日本人に好まれやすい食感なので、広く専門店として展開していくのに向いている商材かと考えています」
また専門店に特化することで、「いい商品を販売している」という意識を客に持たせることができるということです。
さらにポイントとなるのがバリエーションの豊富さ。
堀さん:
「クロワッサンの中で、フレーバー展開を約10種類ぐらいしているところと、サブ商品みたいな形でクロワッサンのサンドイッチを販売している店舗、そういった形で展開している店舗が繁盛しているかと思います」
■味わいを追求し、高級感を付加価値に
実際に神戸の人気店『ル・クロワッサン・ド・バカンス』に行ってみると…。
薄田キャスター:
「かわいらしい。店内がすごくおしゃれ!パンがたくさん並んでて、すごくキラキラしてるんですけど。どれもおいしそうだな~」
総菜系からスイーツ系、クロワッサンサンドなど、販売しているのは、なんと約40種類。1日約1000個が売れているということです。
ル・クロワッサン・ド・バカンス 追中隆シェフ:
「生地は一緒なんですが、素材に合わせて焼き方や、ものによって工程を変えたりして、全然違う食感や味わいを出しています」
商品化する前の段階“あんバター”を見せてもらうと…。
薄田キャスター:
「カットが、横になっているんですね」
追中シェフ:
「キューブっていううちの商品を使って、全く違う食感と味で、最初は試作していました。食べやすさと味のバランスと、サイズ感から今の形に行き着きました」
今試作しているのは、ハニーマスタードチキンのクロワッサンサンドです。
今回は甘めの味付けのチキンとブロッコリーに、塩が強めのクロワッサンを組み合わせました。
追中シェフ:
「(試作品を食べて…)率直に食べた感じだと、素材がクロワッサンの味に負けているのと、もうちょっと水分量が高いと食べやすいのかなと」
生地はサックリかしっとりか、切り口は縦か横かなど、毎日食べて20種類ほど作った中から選びます。
追中シェフ:
「世間がコロナで気分が沈みがちになっていたので、少しでも食べた時にリッチな気分を味わってほしくて。バターも国産で値段が上がっているものの、店でリッチな気分を味わえるのではと思うので、よかったんじゃないかと」
いろんな味わいがあり、ついつい手を伸ばしたくなるクロワッサン。
進化する余地は、まだまだありそうです。
(関西テレビ6月28日放送『報道ランナー』内「ヒットにワケあり!オカネのヒミツ」より)