今、注目が高まっている平屋住宅。
去年1年間に建てられた平屋住宅の建築総数は約5.7万軒と、2012年からの10年間で約1.8倍に増えています(国土交通省 建築着工統計調査報告より)。
取材を進めると、イマドキの平屋住宅がすごく進化していたことが分かりました。
平屋の人気のウラにはどんなヒミツがあるのか、取材しました。
■熊本地震やコロナ禍が“平屋人気”に影響
薄田ジュリアキャスター:
「淡路島に来ました。この素晴らしい環境で平屋に住み始める人が増えているそうです」
『アップルホーム』は、2階建ての家を販売する会社から独立した、平屋専門店です。平屋人気の高まりを受け、3年前に創業しました。
モデルハウスにもなっている事務所に入ると…。
薄田キャスター:
「玄関広っ!広々空間ですね、こんなにとっちゃうんですね」
アップルホーム 西川翔さん:
「リビングには大きい窓が広がっていて、明かりも取り入れることができ、かなり明るいと思います。今は30~40代の子育て世代の方の需要が増えてきております」
約25坪、広々とした3LDKの平屋住宅は、土地込みで3200万円前後だそうです(今回のモデルハウスの場合)。
なぜ今、平屋が人気なんでしょうか。
西川さん:
「熊本地震以来、平屋の需要がかなり伸びてきました。2・3階建ての地震に対する怖さっていうのが全国的に広がりました。2・3階建ては上が重いので、揺れがあった時にかなり横に揺れてしまうんですが、平屋の場合は重心が下がる分、地震に強いと言われています」
高さがない分、揺れが少なく、シンプルな間取りにしやすいので、耐震構造を作りやすいと言われています。
さらに、コロナ禍による生活の変化も影響があったそうで…。
西川さん:
「在宅ワークが多くなってきましたので、それに伴って郊外でお家を建てるっていう方の需要もかなり増えてきました」
テレワークでおうち時間が増えたため、郊外に自分好みの空間を作りたいという人が増加。また子供が巣立ち、夫婦2人のセカンドライフとして、ワンフロアで完結する平屋を購入する人も多いそうです。
■平屋専門店「家ではなく人が主役に」
アップルホームでも売れ行きは好調だそうで、その人気の秘密は、平屋ならではの構造に隠されていました。
西川さん:
「一番のポイントは階段がないことです。最近の2階建てはリビングに1回入ってから階段に上がるという動線が多いんですが、老後のことを考えると2階に上がる手間もない、ワンフロアで済むっていうのが一番のメリットかなと。平屋はワンフロアひと空間を家族が共有しますので、コミュニケーションも取りやすいです」
全ての空間に目が行き届き、家族のコミュニケーションが生まれやすくなると言います。
また、階段下のデッドスペースもなく、間取りを有効活用できます。さらに…。
西川さん:
「2階に子供部屋があると、お子様が巣立った場合、2階に上がることって少なくなると思います。平屋の場合はお子様の部屋も1階なので、例えば書斎等に有効活用できます」
2階がないことで生活動線が短くなり、シンプルな暮らしができるのも人気の秘密。
そして、コスト面でも…。
西川さん:
「2・3階建てとなると、各階にお手洗いをつけることが多いんですが、平屋の場合1つが多いです。そのため、水道代、電気代が抑えられます。照明に関してもそうですし、エアコンも1台で賄う方もすごく多いです」
建築時にも大幅なコストカットが。
2階にトイレを設置しないだけで、約40万円もの節約になるそうです(※アップルホーム調べ)。
同じワンフロアのマンションとは異なり、隣近所の音を気にすることもなく、自分好みの空間作りが楽しめる。それこそが平屋人気の秘密なのです。
西川さん:
「どういった家に住むのかではなくて、どういった暮らしをするかっていうのにシフトチェンジする方が増え、お家が主役ではなく人が主役になってきていると思います」
他にも、注文住宅を手掛ける神戸市の『ヤマト住建』が郊外型平屋住宅の販売を開始したり、滋賀県彦根市の平屋専門店『つなぐハウス』が事業を展開したりと、各メーカーがこぞって平屋事業を始めています。
■無印良品が手掛ける“可変式の家”
そして、さらに…
薄田キャスター:
「実は生活用品を販売している無印良品が、家を販売しているんです」
無印良品は、2003年から家を販売。3年前から「陽の家」と銘打ち平屋を扱っています。
無印良品の家 奈良店 片岡智子さん:
「お客さまからのお声もたくさんあがったんですね。無印良品の物を沢山買い集めていただいた方が、それを最後にいれる箱、すなわち家が欲しいというお声があがって、家の事業が始まったっていうのがきっかけですね」
「陽の家」とは一体どんな作りなのか…。実際にお住まいの家にお邪魔しました。
無印良品の家 片岡さん:
「南に向けて大きな窓が3枚あるっていう間取りです」
仕切りがない、広々とした一室空間。そして南向きに大きな窓を取り付け、日差しも抜群。この窓こそ、「陽の家」一番の特徴なんです。
今年4月、2階建ての一軒家から引っ越し、夫婦2人で暮らす森さん。初めての平屋暮らしだそうです。
薄田キャスター:
「ほとんど照明がいらないですよね?」
森さん:
「夜までつけたことがないです。窓から出るとウッドデッキになってるんですけど、お家の延長みたいな感覚で、ここにクッション持ってきてご飯食べたりとか、ここで歯を磨いたりとか。仕切りがないので、余計な影とかも家の中にはできないんですね。どこに立ってもお部屋を見渡せる、あとはお掃除がすごく楽なんです」
仕切りがなく段差もありません。そのため、掃除が格段に楽になったそうです。
約24坪、2500万円ほど(土地別)で購入した「陽の家」。実は、無印良品の家ならではの特徴が…。
無印良品の家 片岡さん:
「長く使える、変えられるっていうコンセプトがありまして、間取りを自由に変えられます。お部屋が欲しいとなった時に、扉をつけて個室にしていく。また個室が不要になった時は、扉を外して一室に戻していく。一番最初から何LDKという家作りはしていないんです」
実は、建てた後でも扉や柱を取り外せる「可変式」なのです。
そのため、生活スタイルに合わせ、その都度、間取りを自由に変えることができるのです。
森さん:
「高齢になった時の心配っていうのも解消されてますし、扉を開けた瞬間に家が開放的なので、気持ちいいんですよね。今まで外でストレス解消してたものが、家にいることがストレス解消になるというか」
かつての日本で主流だった平屋。
改めてその魅力が見直され、今後の人気がさらに広がるかもしれません。
(関西テレビ6月14日放送『報道ランナー』内「ヒットにワケあり!オカネのヒミツ」より)