避難所生活の中で見えにくい“女性のSOS” 廊下に山積みの生理用品も…「受け取るのは気が引ける」 医師は『女性の方がトイレを我慢する傾向、健康リスクも高い』 2024年03月09日
元日の能登半島を襲った震度7の揺れ。
ふつうに暮らしていた人たちが突然、被災者になり、考える間もなく、避難所での生活が始まりました。
その中で出されていた「女性のSOS」を取材しました。
■毎月やってくる「生理」 避難生活では生理用品を受け取りづらい
大地震の混乱の中、避難先では女性特有の「生理の問題」が生じていました。
【避難者】「実は1月3日にちょうど(生理に)なった。(生理は)止めることができないし、感染症になる恐れがあるので、(生理用品の)替えは必要」
また避難所の女性の運営スタッフは「被災女性から『ナイト用の大きいナプキンありますか?』って」「それで物資担当の方にお願いして入れてもらったりした」と話します。
数日後にナプキンは届きましたが、通路や廊下に山積みの状態で、取りに行くのを控えた人もいました。
【避難者】「プライベートな空間があまりないので、(生理用品などを)受け取るのは気が引けるというか、恥ずかしい部分もあるかな」
■避難所生活では身の危険を感じることも
家族以外との集団生活は、気づかぬうちに、気持ちが追いつめられることもあります。
赤ちゃんを連れて非難をしている人は「広い場所なので、子供の泣き声が、みんなの迷惑になるので困っています」と話します。
こんな状態の中、身の危険を感じたという女性の声も聞かれました。
【避難者】「授乳しているめいっ子がいて、夜中に起きて暗闇で授乳していたら、男の人が急に入ってきて」
【避難者】「2月ぐらい、震災から結構たっているんですけど、金沢在住の男性から『生活に困ってるから、被災関係なく避難所でしょ、ここ』って。断ったら『もう1回、地震くればいいのに』って捨てぜりふ言って帰った」
被災地では、避難していた10代の女性の体を車の中で触った疑いで、19歳の男が逮捕されるといった性犯罪も起きています。
■女性の方がトイレを我慢する傾向があり、健康のリスクも高い
断水の影響で使えなかった「トイレの問題」について、多くの女性が声を上げました。
【避難者】「トイレは最初は外で穴を掘って。中身、全部見えるじゃないですか、大も小も」
【避難者】「学校のトイレをみんながどんどん使っていくので。(汚物で)盛り上がっていく感じ。すごく不衛生で、その状態で手も洗えないですし」
【避難者】「トイレとか困って水分とらずに我慢して」
男女問わず直面する「トイレの問題」。
ただ専門家は、女性の方がリスクが高いと指摘します。
産婦人科医の池田裕美枝医師は「女性の方がトイレを我慢する傾向にあったため、血栓症になりやすかったのではないか」と指摘します。
2016年の熊本地震では、エコノミークラス症候群で入院した人の約8割が女性でした。トイレの回数を減らすため、水分をとらないようにして、血栓ができやすくなっていたとみられます。さらに女性はぼうこう炎になりやすく、重症化するリスクも高いといいます。
【産婦人科医 池田裕美枝医師】「ぼうこう炎になると腎盂(じんう)腎炎のリスクも上がってくる、そうするとバイ菌が全身に回って、敗血症になったり重症になる。泌尿器系の細菌感染症のリスクは女性の方が大きい」
■避難に役立つポーチ、中には洗浄液や防犯ブザー…NGO代表は「持って歩いてほしい」
女性の困りごとを解決しようとする動きもあります。
物資の支援拠点で、NGOが配布していたポーチにはデリケートゾーンの洗浄液や防犯ブザーなど、非常時に役立つ物がまとめられています。
【災害NGOラブ&ピース 橋之口みゆき代表】「こういう袋に入れて、1番最初に本当は配りたい。今はちょっと遅いかなと。何よりも防犯に目を置きたいので防犯ブザー。余震で崩れても吹ける。持って歩いていてほしいなと」
■誰かに言われた訳ではないがそうせざるを得ない「役割分担」
災害は、無意識のうちに思い込んでいる「性別による役割分担」も表面化させます。
七尾市に住む、後藤ひとみさんは自宅が被災し、避難所で約1カ月間生活をしていました。
【後藤ひとみさん】「(避難所から家に)帰ってから、1人で頑張って片付けましたよ。お正月の煮物なんかは下にびったびたになっていて」
避難所では、女性たちが朝から晩まで炊き出しや掃除を担っていたため、自宅に戻り、片付けをすることはほとんどできませんでした。
【後藤ひとみさん】「(炊き出しは)1回だけというわけには、いかないとなるじゃないですか。誰かに『ずっと作ってください』と言われたわけでもないですし、流れで…そうせざるを得なくなってしまった。田舎ですからね、男女平等という言葉が世の中にあっても、『何、生意気言っているんや』と怒られるかもしれないですけど、この地域にはなかなか男女平等は通用しないのかなと」
一方で、男性の力を借りることで、スムーズにいった作業があったのも事実でした。
【後藤ひとみさん】「テントを避難所の中に設置する時も、男性がパパっと組み立ててくれたり。そう思うと、それぞれに役割があるのかなと、納得する部分もあるけれど、ご飯作ったり掃除は誰でもできるでしょ」
ひとみさんの夫の純一さんにも話を聞きました。
(‐Q.避難所では妻・ひとみさんが、ずっと料理を担当していたと聞いたが…)
【夫・純一さん】「そりゃそうやな。動ける人が動いてやらんと、当たり前です」
【ひとみさん】「っていう人です。だから動いていました…ということで、ちゃんちゃん」
【夫・純一さん】「動いていましたなんて言わなくていい。当たり前だから」
【ひとみさん】「当たり前だそうです」
■固定化された性役割を解決した避難所
性別による役割の偏りを解決しようと、早くから取り組んだ避難所があります。
避難世帯を班ごとに分け、炊事や掃除などを分担し、仕事や自宅での片付けがあっても参加できるよう、時間帯も考慮しました。
運営について話し合う班長会議には女性も参加しています。
【避難者】「(前にいた避難所では)ごく一部の人だけに負担がかかって、(担当者が)倒れた途端に、食事提供がなくなったら、さ~っと人がいなくなった。でも、ここに来たらちゃんと班で分けていて、みんなでやろう・みんなで考えよう・みんなで知恵を出そうとする。そうしたら、すごくいい避難所になった」
(関西テレビ「newsランナー」2024年3月7日放送)