10月に行われた衆議院選挙では、当選した女性議員の比率は9.7%と、公示前の10.1%を下回り、国会での「ジェンダー平等」は事実上、後退した。
また、自民党が絶対安定多数の議席を獲得し、日本維新の会の躍進が目立つ一方、ジェンダー平等や多様性の尊重を訴えた候補者が相次いで落選した。
この結果をどう受け止めるのか。
そして、未来はあるのか。
今回の選挙でジェンダー平等などを訴え、候補者の応援演説も行った、大学院生で「政治アイドル」の町田彩夏さんに聞いた。
■女性議員の比率が低下「もっと努力してほしい」
――Q:10月の衆議院選挙で当選した女性議員の比率は9.7%となり、ジェンダー平等は事実上後退しました。
法律ができても変わらないんだということにすごくびっくりしました。
候補者は男女均等にしましょうねという、法律ができたわけですよね。
(2018年に施行された候補者男女均等法)
結果として、頑張ったけどできませんでした、では済まされないと思うんですね。
実現できなかったことを恥ずかしいなと思ってほしいです。
結局、与党というか、選挙で勝つ政党が、きちんと女性が立候補しないと意味がないというか、割合自体増えないなと思っています。
選挙に強い政党こそ、この法律守るようにもっと努力してほしい。
努力義務くらいで現状を変えられないなら、一歩進んだ効力を持った法改正か制度づくりをやった方がいいんじゃないかなと今回の選挙の結果をみて思います。
■ジェンダー平等訴えた候補者の落選 「なかなか壁は大きい」
――Q;今回の選挙では、ジェンダー平等や多様性の尊重を訴えた候補者が相次いで落選しました。
なかなか壁は大きいなという印象ですね。
ジェンダー平等、特に選択的夫婦別姓の実現を訴えて、これだけ頑張っても、やっぱりそんなにいきなりは、社会は変わらないんだなというのが、率直な感想でした。
本来政治というのは、やはり弱い立場にある人のためにあって、制度や法律を変えることでしか救済されない人権というのもあると思います。
本来ならば当選された候補者の方々は、そういった弱い立場の人たちの事を考えて政治をしていくべきだし、価値観を共有できていれば、問題はありません。
けれども実際にふたを開けてみると、そうではないと。
差別的な発言をした人が、結局また議席を獲得して、例えば、LGBTQの問題に尽力してきた人が議席を失うというところを見ると、そうした価値観が共有されていないなと思います。
私たちは、しょせんマイノリティーというか、少数派だったなというのは、すごく思いますね。
だからこそ、ジェンダー平等や多様性の実現への支持をどうやって拡大していくかということを考えた時に、やっぱりそれは、草の根的な市民の集まりや連帯ということでしかないなって思います。
ジェンダー平等や多様性の尊重など、マイノリティーに寄り添う政治を目指してきた人たちを応援する、支持するということを、外から見える形でやっていくしか方法はないですね。
政党の方々には、人権問題に取り組んできた人たちに、「これは票にならない」といったことを言って「ジェンダー平等のことはそんなに言わなくていいや」となるのではなく、党として落選させてしまったことに、きちんと責任を感じてほしいと思います。
■ジェンダー平等は攻撃の対象に…でも「あきらめないで」
――Q;ジェンダーやフェミニズムは、時に攻撃の対象になります。
私が初めて選択的夫婦別姓について言及した時は、やっぱり反日とか言われたりしたんですよね。
実際、今でもフェミニズムっていうだけで、顔をしかめる人っているんですよ。
権力者から見ても、ジェンダー平等を考えましょうという人は、きっとめんどくさいのだと思います。
ただ、私はちょっとずつ時代が変わっていていると思っています。
私が高校生の時は、「クオータ制」という言葉をインターネットで調べたら、フェミニズムに対する中傷や誹謗、誤解に基いた批判などが、検索候補としてたくさん上がっていました。
その後、大学や大学院で勉強していくうちに、海外では、クオータ制を導入している国もたくさんあることを知りました。
きっと、どの国でも、最初は過激だと言われていたと思いますが、それでも、実証的な研究を積み重ねていった先に、やった方がいいとみなさん気付いていったんだと思います。
時間はすごくかかるかもしれません。
バッシングは受けますし、気持ちは落ち込みます。
けれど、そういう人たちのことを気にしすぎると、あまり言わない方がいいのではないかと、自制しすぎてしまい、逆に届けるべき人にも届かなくなってしまいます。
あきらめなければ、世の中は絶対に変わっていくと思います。
■がっかりしたとしても「怒りの種火を持ち続けて」
――Q:ジェンダー平等などを託して一票を投じた人は現実をどう受け止めればいいのでしょうか
がっかりできるというのは、きちんと自分の中で考えて、頭の中でこうなってほしいという理想像を描いて、投票したり、応援したり、したからこそ、がっかりしていると思うんですね。
なかなかすぐに結果が出てこない、応援したのに残念だなと思うかもしれません。
けれども、その悔しい、変わりたい、変えたいという気持ちが、本当に社会を変えたり、結果を変えていくことにつながります。
私は、その感情を大切にしたいと思っているし、怒りの種火を心の中に持ち続けて、来る次の選挙に備えたいなと思っています。