無意識の偏見を表す言葉、「アンコンシャス・バイアス」。
内閣府が初めて「男らしさ」や「女らしさ」に関する、性別による無意識の偏ったイメージ、「アンコンシャス・バイアス」についての調査を行い、全国の20代から60代の男女が質問に回答しました。
■「男性は仕事」「家事は女性」…男女ともに強い思い込み
男性、女性ともに「そう思う」という思い込みが強かったのが、「男性は仕事をして家計を支えるべきだ」で、また「家事・育児は女性がするべきだ」といった項目でどちらも50代、60代の男性に強い思い込みがあるという結果に。
調査では、質問36項目のうち33項目で、男性の方が思い込みが強いことも分かりました。
特に男女の差が大きかったのが、「デートや食事のお金は男性が負担すべきだ」という項目。
男性の約4割が「そう思う」または、「どちらかといえばそう思う」と思っているのに対し、女性は2割ほどという結果になりました。
こうした性別による無意識な偏ったイメージは、私たちの生き方や、働き方にも影響を与えると専門家は話します。
「苦しい思いや悲しい思いを相手にさせてしまう可能性がまずある。多くの場合は過去の経験だったり見聞きしてきたことで自分の中では普通はこうだ、こういうものだ、こうあるべきだという風に培われていくのがアンコンシャスバイアスです。アンコンシャスバイアスに気がづくことによって違った言動、違ったコミュニケーションや関り方をしてみるのが問題を軽減していく時に大切ではないかと思う」(一般社団法人アンコンシャスバイアス研究所・守屋代表理事)
■自分より英語の点数が低い男性が海外赴任へ…
関西テレビ「報道ランナー」の10月5日放送では、この「アンコンシャス・バイアス」について、新実キャスターがコメンテーターの崔真淑さんに聞きました。
新実:アンコンシャスバイアス、無意識の偏見と直訳するとなるんですが、バイアスと聞くとなんとなくネガティブな事実と異なる思い込みというイメージがありますが、固定化したイメージを男女お互いが持ってしまっているという問題だと捉えてほしいんです。例えば、「女の子なんだから脚を閉じて座りなさい。おしとやかにしなさい」こんなの言われましたか?
崔:言われましたね。閉じなさいって。
新実:私も2歳の娘がいるんですけど、とにかく性別に紐づいたことは言わないようにしようと色々気を付けてますね。バイアスもそうだし、彼女の性自認がわからないと想像すると、まっさらに言いたいと理想は思うんですけどね。崔さんは何かこれまでにアンコンシャスバイアスを感じたことはありますか?
崔:昔、働いていた会社で海外赴任するのが夢で、英語を必死に勉強して、応募したら、私より英語の点数が低い男性が採用されたんですね。なんでですか!って言ったら、君が女性だから海外赴任できないんだよって言われたときに、会社を去ろうってちょっと思っちゃいましたよね。
新実:そうはっきりと言われたんですか?理由は?
崔:理由は…男性が海外赴任していくなら女性が会社を辞めてついていくっていうのはアリだけど、女性が海外赴任で男性が一時的に仕事辞めるなんてありえないから、そんなことはちょっと常識として違うんじゃないか…ということでした。
新実:ご結婚もされていて?ご主人が「ついて行っても」と言っていても?
崔:その当時もう結婚していた時だったので、主人からもいいよって言われて応募してたものの、(会社から)そんなことは認められないと言われてしまった。「何が男女平等やねん」と思いましたね。
■無意識の偏見ランキング 上位5位は
以下は、内閣府が調査した、男女別で見る無意識の偏見ランキング。
全国の20代~60代、合わせて約1万人に、「男らしさ」や「女らしさ」について調査したものです。
▼2位は男女とも「男性は仕事をして家計を支えるべき」
▼「女性は感情的になりやすい」が男性の4位、女性の3位にランクイン。
▼男性の5位は「育児期間の女性は重要な仕事を担当すべきではない」で、これは女性の4位にもランクイン。
36項目中4項目が、男女ともに同じ項目で上位にランクインしています。
そして男女ともに1位だったのが「女性には、女性らしい感性があるもの」という回答でした。
崔:人それぞれですよね。ただもちろん平均的には女性と男性の違いとか、例えば投資だったら男性はリスクをとるけど、女性は長期投資とかね。全体の傾向としては出るんですよ。でもそれは平均的な傾向であって、それを全ての人に当てはめようっていうのは傷つく人も出てくるんじゃないかなと思うので、私も気を付けようと思いますね。
新実:全体の傾向が科学的にあるという話と、個人がそうかというのは別の話ですね。
■面接で「女性の細やかさ生かして」言われて嫌だったこと
また、内閣府の資料にあった、「こんなこと言われて嫌だった」という次のような実例も発表されています。
【女性の声】「管理職の面接で女性の細やかさを生かして頑張ってほしいと言われた」
【男性の声】「上司から男なら女より数字を取れ。負けて恥ずかしくないのかと叱責された」
新実:全体的に見ると女性のほうが細やかな気配りができるというデータがある可能性があるけど、この人が果たしてそうかはわからないし、「あなた」ならわかるけど、なんで「女性」の?というところはありますよね。
崔:私は全然細やかじゃないので、困っちゃうなと思いますよね。
新実:神崎デスクは、上司の立場としてどうですか?
神崎:私、偏見が強いとされる50代男性なんですけど、私の頭の中で色んなことを思うことはある。それだけのバイアスの中で生きてきたので。ただ性別に紐づいたことは口に出して言わないようにというのは心掛けているんですね。頭の中で思うのはしかたないとしても、相手がどう思うかわからないので、性別に紐づいたことに関してはなるべく言わないようにしようとは心掛けてます。
新実:まさに専門家が指摘されるのはそういうところなんですね。
「アンコンシャスバイアスは誰にでもあり、そのものが悪ということではない。しかしそこから生まれる言葉が周囲や相手を傷つけたりチャンスを奪っていることがある。まず自身で”気づくこと”が大切です」(一般社団法人アンコンシャスバイアス研究所の守屋智敬代表理事)
新実:思うのは仕方ないけど、思ってることを自覚して言わないようにする、傷つけている可能性を想像すると。崔さん、いかがですか?
崔:バイアスって私も多分、意識してないだけでたくさん持ってると思うんですよ。対話を重ねることも大事だし、自分も気付こうという姿勢、私もしなきゃいけないなと思いましたね。
(カンテレ「報道ランナー」10月5日放送)
内閣府 性別による無意識の思い込み(アンコンシャス・バイアス)に関する調査研究
https://www.gender.go.jp/research/kenkyu/seibetsu_r03.html