『マイナ保険証』問題 期限切れ保険証も使える“暫定措置終了”で 患者から「何をもっていけばいいの?」問い合わせ急増 “保険証代わり”「資格確認書」は家族でも「届く・届かない」で大混乱に 2026年08月29日
保険証をめぐる新たな問題が起きているという。
去年12月、すべての「従来の保険証」の有効期限が切れた。
その後、暫定措置として「期限切れの保険証」や「資格情報のお知らせのみ」での受診も可能となったが、それも7月で終了。8月から、医療機関の受診は『マイナ保険証』か『資格確認書』のいずれかが必須となっている。
「8月に入り、医療機関には『保険証として病院に何を持っていけばいいのか分からない』という問い合わせや、『間違って「資格情報のお知らせ」だけで受診しようとする人』が増えています」
と話すのは、全国保険医団体連合会(保団連)の上所聡子さん。
詳しく聞いた。
■“暫定措置終了”で混乱発生
【全国保険医団体連合会 上所聡子さん】
マイナ保険証が始まって以降の「顔認証や暗証番号受付がスムーズにできない」や「資格情報が無効とでる」などのトラブルは現在も続いています。
そこへ新たに、後期高齢者を中心に「保険証の代わりに何を持っていけばよいのか分からず、間違った書類で受診する」といった問題がでてきました。
その大きな要因となっているのが、マイナ保険証を利用していない人が、従来の保険証代わりに使う『資格確認書』を巡る動きです。
■「どの人に何を送るのか」煩雑すぎる状況に
後期高齢者の従来の保険証の期限が切れた去年7月、保険証代わりとなる『資格確認書』が、後期高齢者全員に「職権交付」されました。
※職権交付:申請がなくても行政機関等が書類や証明書などを交付すること
その有効期限が7月で切れたのですが、8月以降の『資格確認書』の交付について、厚労省は自治体に下記の通達を出したのです。
「(後期高齢者のうち85歳以上は「職権交付」を継続するが)84歳以下の後期高齢者(75~84歳)は、マイナ保険証の利用実績を踏まえたきめ細かい対応を行う観点から、直近1年間にマイナ保険証の利用が6回以上あり、かつ概ね直近3か月以内に利用実績がある場合は職権交付しない」
つまり、年齢や利用実績によって、『資格確認書』が届く人と、別の書類(『資格情報のお知らせ』)が届く人がいることになります。
これに困ったのは自治体です。
去年は全員に「資格確認書」、それ以前は「保険証」を送付するという、シンプルな作業でした。
それが、個々に対し、年齢に加えマイナ保険証の“利用状況”によって送付するものが分かれるという、非常に煩雑な作業になるのです。
※後期高齢者の『資格確認書』などの発行業務は、各都道府県の後期高齢者医療広域連合が担っている
・「75歳~84歳でマイナ保険証を持っていて、利用実績のある人」→『資格情報のお知らせ』
・「75歳~84歳でマイナ保険証を持っているけど利用していない人」→『資格確認書』」
・「75歳~84歳でマイナ保険証を持っていない人」→『資格確認書』
・85歳以上はマイナ保険証の利用にかかわらず『資格確認書』
■14都道府県が“送り分け”断念
この状況に対し、大阪府はいち早く対応。
大阪府後期高齢者医療広域連合は「夫婦間で資格確認書の発行に差が出るなど混乱が強く懸念される」「問い合わせ対応など自治体への負担も大きくなると予想される」などの理由から、個々の利用状況に関係なく、後期高齢者全員に『資格確認書』を交付することを決定しました。
他の自治体もこの動きに続いてほしいと思っていたのですが、ふたを開けてみると「マイナ保険証を持っている人には、利用実績を考慮せず、『資格確認書』を職権交付しない」という自治体が14都道府県もあったのです。(※保団連調べ)
この対応自体は、厚労省も例外的対応として認めているものではあります。
しかし、高齢者の中には「マイナ保険証を持っているけど使ったことがない人」は大勢います。
それどころか「マイナ保険証を持っているかどうか(保険証と紐づけたかどうか)忘れてしまった」人も少なくありません。
■『資格確認書』を利用しているのに新しいのが届かない…
この14都道府県では、「マイナ保険証を持っているが利用せず、これまで『資格確認書』で受診していた84歳以下の後期高齢者」には、新しい『資格確認書』は自動的に交付されません。
形式が似ている、同様の情報が記載された『資格情報のお知らせ』が送られています。
その結果、『資格情報のお知らせ』を『資格確認書』と勘違いし、それで受診するといったケースが複数発生しているのです。
しかし『資格情報のお知らせ』は、マイナ保険証が不具合などで利用できない時に使う書類で、単体での受診はできません。
厚労省によると、『資格情報のお知らせ』だけで受診しようとした場合は「保険証を忘れた」時と同じ扱いになり、場合によっては預り金の形でいったん10割を支払うことになります。
かかりつけ医などでは柔軟な対応がされているようですが、大学病院などではそうもいきません。今後、注意が必要です。
そして、既に14都道府県に該当する地域の医療機関から、「『資格確認書が届かない』など資格確認に関する問い合わせが多く、グチャグチャだ」という悲鳴が上がっています。
■紙の「資格確認書」の重要性を理解して!
高齢になると、どうしても体調など状態が変わりやすくなります。
今、マイナ保険証を使えている方でも、暗証番号や顔認証の機械操作などに苦労されている方も多くいますし、1年後、2年後の自分の状況に不安を感じている方もいらっしゃいます。
いざという時のために、紙の「資格確認書」というのはとても大切です。
厚労省も、「一般的に高齢者は、新たな機器の取扱いに不慣れな方が多いと考えられること、また、認知症の進行など状態像が変わりやすいという特性がある」として、「きめ細かい配慮が必要」と説明しています。
そういった事情を加味して、後期高齢者などは申請により『マイナ保険証』と『資格確認書』の両方を持つことができるようになっているのです。
今、マイナ保険証を使っていて新しい『資格確認書』が届いていない方でも、少しでも不安がある方はぜひ申請をして『資格確認書』を交付してもらってください。
一度、申請をして交付されれば、翌年からは自動的に送られてきます。
最初に一度だけ、申請手続きを行えばよいのです。
そして厚労省には「きめ細かい配慮が必要」としているのですから、『資格確認書』の交付について、ぜひ現状をしっかり把握し、後期高齢者への資格確認書の職権交付を再開するなど、利用者が混乱しない制度設計にして頂きたいと強く願います。
(全国保険医団体連合会 上所聡子さん)