パレスチナ自治区ガザを実効支配しているイスラム組織「ハマス」とイスラエル軍の戦闘が始まってから、11月7日で1カ月となります。人道危機が深刻化する中、どうすれば戦闘を止めることができるのか、イスラエル軍の幹部が単独インタビューに応じました。
戦闘開始から1カ月。ハマスが運営する保健当局は、ガザでの死者が1万22人に上ったと発表。双方の死者は1万1400人を超えました。 “地上作戦”を強めるイスラエル軍は、「ガザを南北に分断した」と表明しました。
■音楽フェスをハマスが襲撃 九死に一生を得た女性が恐怖を語る
10月7日の朝。ガザとの境界付近で開かれていた音楽フェスティバルをハマスの戦闘員が襲撃。参加者を次々に殺したり人質として連れ去ったりしました。 その音楽フェスにローラさん(35)は参加していました。
【ローラさん】
「私は…、私はもう何年もハマスとの和平を願っていましたが、今はハマスがテロ集団だと理解しています」
朝8時ごろ、ハマスによる襲撃が始まり、キャンピングカーの中に夫や友人とともに身を潜めました。
【ローラさん】
「私はここにいて、4人がこちら側に、それから夫がドアを押さえていて、他にも人がいてこの小さなスペースに7人がいました」
ハマスの戦闘員は車を2度銃撃し、ドアをたたいて開けようとしたと言います。
【ローラさん】
「ハマスがドアを開けようとした時、怖くてお互いに顔を見合わせました。何をされるのか考えたくありませんでした。死ぬことよりもレイプされることの方が怖かった。その場で死ぬ方が良かった」
イスラエル軍が到着して難を逃れましたが、身を隠してから6時間後、やっとキャンピングカーから出て目にしたのは、多くの遺体でした。少なくとも270人の人が殺されていました。
ローラさんは九死に一生を得た体験から1カ月がたち、今思うことは…
【ローラさん】
「パレスチナの人たちとの和平を望みます。幸せな和平ではないかもしれない、親友にはなれないかもしれない、それでも和平や共存は実現できると思います。でも今は友達の帰りを待っています。友達はフェスから生きたままガザに連れて行かれて、もう1カ月です」
これまでに4人は解放されましたが、今もガザに残る人質は241人。イスラエルでは家族や友人などが解放を求めています。 ハマスによる攻撃を受け、イスラエルはこの1カ月、ハマスが実効支配するガザ地区への空爆など攻撃を強めています。
パレスチナ保健当局によると、ガザ地区の死者の4割以上は子供で、「10分に1人の子供が死亡している」ということです。 この状況を受け、国連のグテーレス事務総長は即時停戦を呼び掛けました。
【国連 アントニオ・グテーレス事務総長】
「ガザは子供たちの墓場となりつつある」
■日本の各地でも停戦を求めるデモ
そんな中、ガザ地区の人道危機の悪化を受け、関西各地でも停戦を求めるデモが行われています。
【記者リポート】
「京都の街では『パレスチナに自由を』と叫びながら多くの人が行進しています」
【デモの掛け声】
「Free Free Palestine(パレスチナに自由を)」
【パキスタン出身の小学5年生】
「このデモで世界に大きな変化は起こらないかもしれないけど、ちょっとだけでも他の人がパレスチナを大事にしないとあかんな、パレスチナ人の人権を守らなあかんなという気持ちが出てくると思うので、(デモは)やっぱり大事だと思います」
大阪でも、デモが行われています。
【デモの掛け声】
「虐殺やめろ!虐殺やめろ!」
デモに参加したバーレーン出身の留学生の女性は、ガザにいる知り合いと連絡が途絶えたと話しました。
【バーレーン出身の大学生】
「友達から『家族を亡くした』『父親と連絡が取れない』『母親は行方不明』と聞くと、とても悲しい。私たちにできることは自分たちの声やSNSを使って意見を言うこと。『パレスチナと共にある』と声をあげること以外にできることはない」
■イスラエル軍幹部は「全てハマスの責任だ」
衝突から1カ月。世界各地でイスラエルに対する非難の声も強まる中、イスラエル軍の広報官がFNNの単独インタビューに応えました。多くの民間人が犠牲になっていることについて質問すると、イスラエル軍の広報官は…
【イスラエル軍広報担当 ピーター・ラーナー中佐】
「この紛争で失われるいかなる人命も悲劇である。最小限に抑えようと努力している。民間人の死は全てイスラエルと戦争をするというハマスの決断、戦略的決断によるもの。これらの死は全てハマスの責任だ」
また、軍がガザ地区で展開する軍事戦略は“計画通り”だということです。
【ピーター・ラーナー中佐】
「最終的な目的は、ハマスの崩壊と解体であり、彼らが二度とイスラエルを脅かすことができないようにすること」
Q.作戦の終了はいつなのか?
【ピーター・ラーナー中佐】
「ハマスがいなくなれば終わるだろう」
こうした中、アメリカのバイデン大統領は11月6日、イスラエルのネタニヤフ首相と電話会談し、ハマスとの「戦術的な戦闘の一時停止」の可能性について協議しましたが、大きな進展はなかったとみられます。
■「短期間の停戦を繰り返し、最終的に長期的な停戦になるか」と専門家
今後、この衝突はどうなるのか、専門家は…
【東京大学中東地域研究センター 鈴木啓之特任准教授】
「イスラエル軍の地上部隊の展開は、あと1~2カ月ほどガザ地区内で行われることになります。地上部隊が展開している限り、(ハマスなどの)武装勢力からのロケット弾発射がイスラエルの都市部や重要な拠点施設に対して行われていくことは確実です。イスラエル国内の死者に、イスラエル世論が戦争に対しての嫌悪感が出てくる。これがイスラエル政府に戦争を終結させる判断に大きく作用していく。一方でこの変化が起きてくるまでの間は、それなりに時間かかる」
停戦はいつになるのか、東京大学の鈴木特任准教授によると、
・イスラエル軍は多くは予備役の兵士。職業軍人ではなく経済活動をしているような人たちです。経済の打撃を考えると3カ月が現実的なのではないか
・1~3カ月ほど集中的に軍事作戦を展開して、その後短期間の停戦を徐々に繰り返しながら、最終的に長期的な停戦になるのではないか
という見方をしています。
双方の死者は合わせて1万人を超え、民間人の犠牲が増える中、人道支援を訴える国際社会の声は果たして現地に届くのでしょうか。
(関西テレビ「newsランナー」 2023年11月7日放送)