「プレサンス冤罪事件」巡り 取り調べで「机を叩いて『検察なめんな』と大声交えて叱責・罵倒し続けるなどして苦痛を与えた」罪に問われた当時・大阪地検特捜部の検察官の男が「無罪」を主張 「逮捕・起訴の根拠の柱となった」嘘の供述をさせる 2026年07月13日
不動産取引をめぐる21億円の横領事件で罪に問われた、不動産会社「プレサンスコーポレーション」の元社長・山岸忍さんが後の裁判で無罪となった冤罪事件。
この事件で、当時大阪地検特捜部に所属していた検察官・田渕大輔被告は、山岸さんの元部下の取り調べで、机を叩いた上、大声で「検察なめんなよ」と罵倒し続けたほか、「大罪人」などと脅迫して苦痛を与えた「特別公務員暴行陵虐」の罪に問われています。
こうした取り調べを受けた元部下が、山岸さんが関与していたと嘘のを供述したことが、山岸さんが逮捕・起訴される柱となっていました。
そしてきょう(7月10日)始まった刑事裁判で、田渕被告は無罪を主張しました。
【田渕被告(罪状認否より)】「今回、私が裁判を受けることになった言動に間違いありません。陵辱、加虐に当たる行為ではなかった。検察官としての行為で、陵辱、加虐ふる意図はなかった」
■田渕被告 取り調べで机を叩いたり「検察なめんなよ!」と発言も
山岸さんは、田渕被告の威圧的な取り調べを受けた元部下の嘘の供述が証拠の柱となって、逮捕・起訴されていました。
無罪が確定して山岸さんが国に対して賠償を求めて起こした国家賠償請求訴訟で、その取り調べの実態が明らかになります。
(以下、取り調べを記録した録画・録音より)
<田渕被告:自分の顔のあたりまで振り上げ、振り下ろし手の平で机を1回たたく>
【田渕被告】「嘘だろ!今のが嘘じゃなかったらいったい何が嘘なんですか!」
【田渕被告】「命かけてるんだよ!検察なめんなよ!命かけてるんだよ、私は!」
また別の日には次のような発言がありました。
【田渕被告】「なんで、そんなことしたの。それ何か理由があります?それはもう自分の手柄が欲しいあまりですか。そうだとしたらあなたは、プレサンスの評判を貶めた大罪人ですよ」
【田渕被告】「会社が非常な営業損害を受けたとか、株価が下がったとかいうことを受けたとしたら、あなたはその損害を賠償できます?10億、20億じゃすまないですよね。それを背負う覚悟で今、話をしていますか」
■取り調べが「特別公務員暴行陵虐罪」に当たる…山岸さんは「付審判請求」
山岸さんはこうした取り調べが「特別公務員暴行陵虐罪」に当たるとして、田渕被告を刑事告発しましたが、大阪地検は不起訴処分としていました。
そこで山岸さんは裁判所に対して、“起訴”を求める「付審判請求」を行いました。
大阪地裁は陵虐行為があったといえるが起訴するまでのことではない、として請求を認めませんでしたが、山岸さんの不服申し立てを受けた大阪高裁は、地裁の決定を取り消し、請求を認めました。
それによって田渕被告が“起訴”され、今回の刑事裁判が開かれることが決まっていました。
■大阪高裁は「検察組織の問題点」を指摘
この時の決定で大阪高裁第4刑事部(村越一浩裁判長)は、田渕被告1人でなく、検察組織の問題点を指摘していました。
(決定文「補論」より)
「捜査官による取調べは真実追及の場面であり、厳しく被疑者に迫るのは当然のことであるとの考えが、捜査の一翼を担い、被疑者取調べを担当する検察官に根強く残っており」
「 今回の事案が、(中略)録音録画下で起きたものであることを考えると、本件は個人の資質や能力にのみ起因するものと捉えるべきではない。あらためて今、検察における捜査・取調べの運用の在り方について、組織として真剣に検討されるべきである」
裁判所が取調べ検事を”起訴“する判断をしたのは、これが初めてでした。
しかし2026年6月、東京地検特捜部が捜査した事件の取り調べで、「黙秘を人のせいにするな」などと怒声をあげ侮辱したとされ、東京地裁が担当検事を刑事裁判にかける決定をしています。
「最強の捜査機関」の異名で知られる特捜部の検察官が相次いで、“違法な取り調べ”によって刑事裁判にかけられる事態。裁判で田渕被告の取り調べは罪に当たると判断されるのか、注目されます。
■「付審判請求」とは
「付審判請求」(ふしんぱんせいきゅう)は、公務員が職権を濫用する犯罪等に限っては裁判所に“起訴”するよう求めることができるという手続きです。
刑事事件で起訴するかしないかを決める権限を持っているのは、原則として検察だけとなっていますが、いくつか例外がある中の1つです。
検察官役は、裁判所が指定する弁護士が担います。
■指定弁護士が冒頭陳述で指摘 ほかの日にも大声で取り調べ「録音・録画の音が“われる”ほど」
この“異例の裁判で”検察官役を務める指定弁護士は初公判の冒頭陳述で、田渕被告が、罪に問われている日以外にも取り調べで大声を出すことがあり、その音声は「録画・録音の音がわれるほどの音量だった」などと指摘しました。
また取り調べの録画・録音について、「上から厳しく言われる。監視ですよ」と山岸さんの元部下に対して説明しつつ、「ひとつも気にしていないもん。言っていることが間違っているとは思わない」と話したと指摘しました。
そして、特捜部で捜査を監督する総括審査検察官や特捜部の副部長は、取り調べの録画・録音を見ていたが問題視せず、上司に報告するメモには、「取り調べ官が机をたたき、声を出したが、これは明らかな虚偽を述べたことに対してのものであり、机をたたくなどの言動は、自白の信用性を損なうものではない」と記載。
さらに地検トップの検事正や次席検事に報告した際にも、録画を確認しようという提案はなく、確認がないまま山岸さんが起訴されたと述べました。
また山岸さんが刑事告発しても、当時、田渕被告が所属していた東京地方検察庁が口頭注意という最も軽い処分としたことなどを説明しました。