2歳の娘に暴行して死亡させた罪に問われ、逆転無罪が言い渡された父親・今西貴大さん(37)の裁判で、最高裁判所第三小法廷はきのう=3日付で検察側の上告を棄却しました。
最高裁判所は、検察側が上告に当たって主張した内容について「上告理由に当たらない」と指摘。5人の裁判官の「全員一致」で棄却しています。
今西さんの無罪が確定することになります。
今西さんは「7年以上ものあいだ置かれていた被告人という立場から、ようやく解放されました。いまは、ほっとした気持ちで胸がいっぱいで、言葉も見つかりません。」と話しています。
■今西さん「人質司法や冤罪が、多くの人生を破壊」「弁護士になろうと決意を新たに」
今西さんが発表したコメント全文を以下に掲載します。
【今西さんのコメントより】
7年以上ものあいだ置かれていた被告人という立場から、ようやく解放されました。
いまは、ほっとした気持ちで胸がいっぱいで、言葉も見つかりません。
大阪高裁で無罪判決が言い渡された後も、検察官の上告により、被告人という立場に置かれ続けました。当事者として、制度がいかに残酷で非情であるかを実感しました。
5年半の勾留を経て控訴審の判決前にようやく保釈されましたが、いくつもの厳しい条件が付されました。無罪判決によってようやく保釈条件がなくなり、これまで多くの冤罪被害者やその家族の方々と接する機会がありました。
人質司法や冤罪が、多くの人生を破壊していることを強く感じています。
自分の事件が確定しても、これで終わりではありません。
当事者になったからこそ見えてきた、司法制度のひずみもありました。
明日からはまた、晴れやかな気持ちで法律家になるための勉強を続け、一人でも多くの人の支えになれる弁護士になろうと決意を新たにしています。
ここまで、多くの方が力になってくださいました。
弁護団の川崎拓也先生、秋田真志先生、西川満喜先生、湯浅彩香先生、川崎英明先生、イノセンス・プロジェクト・ジャパン、国民救援会、大谷財団、SBS検証プロジェクト、そして、これまで支援をしてくださったすべての皆様に、心より御礼申し上げます。
今西貴大
■「身体的虐待を加えていたことを示す事情は見出せない」と逆転無罪
今西さんは2歳の娘に対する傷害致死罪などに問われ、1審で懲役12年の実刑判決を受けましたが、おととし11月28日、大阪高裁は逆転無罪を言い渡しました。
高裁の判決は、「頭にけがを残すことなく、交通事故に匹敵するほどの外力を加えることができるかどうかは、常識に照らして相当、疑問がある」と指摘。
「被告人の供述や被害児の母親の証言を通じてみても、被告人が身体的虐待を加えていたことを示す事情は、見出せない」としていました。
今西さんは、おととし7月に保釈されるまでおよそ5年半、拘置所での勾留が続きました。
判決後、今西さんの弁護団は大阪高等検察庁に対し、上告をしないよう申し入れを行ったほか、7000筆を超える署名を送っていましたが、大阪高検は「上告審で適正な判決を求めるため」と上告していました。
■「6年も人の自由を奪っておいて、さらに自由を奪うのでしょうか」
上告を受け、今西さんは検察への強い怒りを訴えていました。
【今西貴大さん】「6年も人の自由を奪っておいて、さらに自由を奪うのでしょうか。(検察は)自分たちの失敗を覆い隠すためだけに上告をしていると思う。完全無罪が出た今、検察がするべきことは謝罪と検証です」
弁護団は「上告理由など全く見い出せない。許しがたい暴挙だ」と述べていました。
■主任弁護人「無罪確定に心から安堵」「検察の上告によって無罪確定引き延ばされ強い憤り」
主任弁護人の川崎拓也弁護士は、以下のようにコメントしています。
「昨日付で最高裁が検察官の上告を棄却し、今西さんの無罪が確定することになりました。まずは、無実の今西さんの無罪が確定することに心から安堵しています。
控訴審判決は証拠と医学的知見に照らして極めて妥当なものであり、その判断が維持されたのは当然だと思います。
本件は、十分な科学的根拠とは言えない医学的評価をもとに、一人の市民が重大犯罪の疑いをかけられ、長期間身体拘束まで受けた事件でした。
さらに、一審の不当な有罪判決を経て高裁で無罪が言い渡された後も、検察官の上告によって無罪確定が引き延ばされ、今西さんが被告人の立場に置かれ続けたことには強い憤りを感じています。
この事件が、科学的証拠の扱いや訴追のあり方、そして身体拘束の問題について改めて検証が進むきっかけになることを強く望みます」