「正直、全部に腹が立つ」「早く事件が終わって、治療をして回復して欲しい」女性検事の夫が初めて取材に応える 元大阪地検トップからの性被害を訴える女性検事 孤立させられPTSDに…検察組織の責任を問い国を提訴【独自】 2026年02月17日
大阪地検のトップだった北川被告からの性被害を訴える女性検事が、国に検察組織の責任を問う裁判を起こしました。
女性検事と夫の想いに独自取材で迫ります。
■「検察にどれだけ訴えても、何の対応もしてくれなかった」
大阪地検の検事、ひかりさん(仮名)。準強制性交等罪に問われている元大阪地検トップ・北川健太郎被告(66)や、国などを相手取り、二次被害を防げなかったとして、検察組織の責任を問うために賠償を求める裁判を起こしました。
「検察にどれだけ書面を書いて訴えても、何の対応もしてくれなかった。自分の苦しみを訴状に打ち込んで…もう、もう解放されたい」とひかりさんは語ります。
事件から7年あまり、妻の苦しみを一番近くで見てきた夫が初めてメディアに思いを語りました。
【ひかりさんの夫】「まあ正直全部に腹が立つということですね。検察の対応も変な対応ばっかり、おかしな対応ばかりする」
■「あの醜い裸体がずっとここに張り付いてる」
大阪地検のトップだった北川健太郎被告(66)からの性被害を訴える、現職の女性検事、ひかりさん(仮名)。
2月16日、北川被告と二次被害を防げなかった検察組織の責任を問うため、国などを相手取り、損害賠償を求める裁判を起こしました。
女性は、PTSDと診断され、現在も職場に復帰できていません。
「あの醜い裸体が、ずっとここに張り付いてるんですよ。目を開けても閉じても。物理的に自分がやることをいっぱいやっていかないと、これ(フラッシュバック)をどこかにやれないですよね。すごいショックやったから、現実として受け止めたくないし」と苦しい胸の内を明かしました。
■事件の経緯と「同意があったと思っていた」北川被告の突然の否認
2018年に大阪地検の検事正に就任した北川健太郎被告。 就任時には「検察の活動が、国民の信頼という基盤に支えられているということを肝に銘じ、国民の負託にこたえる検察を目指したい」と語っていました。
北川被告は、2024年10月の初公判で起訴内容を認めて、謝罪の言葉を口にしました。
しかし、その1カ月半後、「同意があったと思っていた」などと、無罪を主張。突如、否認に転じたことで、非公開の審理準備が続き、1年以上たつ今も、次の公判は開かれていません。
■「そんな検察庁で検事正からレイプされたなんて言えなかった」
ひかりさん(仮名)は、事件当初、逃げるように仕事に没頭。被害を夫にも打ち明けることができませんでした。
「(夫は)ずっと応援してくれていた。私をサポートしてくれていたから、そんな検察庁で検事正からレイプされたなんて言えなかった。かわいそうすぎて、夫も惨めで、どっちも惨めで。だから1年間言えなかったんですけど」
夫も初めてメディアの取材に応じ、「正直、全部に腹が立つ。(当時、妻は)薬を飲んだりして、安定させないといけなくて、夜寝られてない状態とか」と当時の妻の状況を振り返りました。
なんとか仕事を続けてきましたが、事件から5年後、心的外傷後ストレス障害=PTSDと診断され、今も症状は続いています。
検事として性暴力事件と向き合うためにも、勇気を出して、職場の上司に被害を申告し、休職しました。
■二次被害と検察組織の対応
しかしその後、職場に復帰しようとした際、女性は思わぬ事態に直面します。
「誹謗中傷は大阪地検だけではなく、最高検・東京地検・法務省にまで広まっており、起訴前の時点で被害者が私であることや、夫の個人情報まで広まっていたことも最近知りました。私は孤立させられ、職場が安全でなくなり、病気に追い込まれました」
事件当日の懇親会にも同席していた副検事が、被害者の名前を検察庁内で言いふらしていたことが判明。
副検事と違う勤務場所になるよう希望しましたが、すぐには聞き入れられませんでした。副検事は注意を受けるだけの最も軽い「戒告」処分を受けるにとどまりました。
■大阪高検幹部からのメール
メディアに検察庁への不信感を訴える女性のもとに、代理人宛てで送られてきたのは、大阪高検幹部からのメールでした。
「厳しいことばかりを言いたくはないが、やっていいこと、やってはいけないことを区別してもらわないと、通常であれば可能な説明を行うこともできなくなりかねません」という内容でした。
その後、被害者参加制度を利用している彼女のもとに、北川被告の裁判に関する情報は、検察からほとんど伝えらなかったといいます。
「お願いしてる補充捜査も、やったともやってないとも、やる予定があるとも何も答えない。争点も教えないし、立証する予定も何も教えないで、この状態で法廷で、万が一失敗したらどうするんだろうと思います」と彼女の弁護団の田中嘉寿子弁護士は語ります。
■「異質」な検察の対応
本来、ともに戦うはずだった検察庁が、いつの間にか自身を苦しめる存在に変わり、女性は孤立していきました。
弁護団の一人で、数々の刑事事件の被害者代理人として裁判に携わってきた中隆志弁護士は、被害者に対する検察庁の対応の異様さについてこう語ります。
「異質ですね。被害者と共に寄り添うという姿勢が他の事件ではありましたけど、なかなか寄り添ってもらえているという雰囲気がない。現場の検事は、決裁の権限とかきっとないので、上層部から『彼女に対する対応は、こういう対応でいい』というような、指示がされているのではないかと推測はしますけれど」
1月、検察庁から追加の説明がありましたが、それでも「十分ではない」と指摘します。
女性は、第三者委員会の設置による再発防止策を求めていますが、検察庁は、「ハラスメントの対応窓口があり、必要な措置はとっている」としています。
「検察庁の庁舎は怖くて、近寄るのも怖い。汚された、害された勤務環境を安全にしてほしいということだけを言い続けてるんです」と訴えます。
■検察組織への国家賠償訴訟
事態が一向に進展しない中、ひかりさん(仮名)は、自らが身を置く検察組織の責任を追及するため、国や北川被告、検察幹部らを相手取り、合わせておよそ8300万円の損害賠償を求めて提訴しました。
国に対しては、副検事が被害者の名前を言いふらしているのを知りながら、直接止めず拡散につながったことや、女性が復帰を目指す職場から、副検事を異動させなかったことなどが、安全配慮義務違反に当たるなどと訴えています。
法務省と大阪高検、大阪地検は、訴状が届いてないことを理由にコメントを差し控えています。
■「子どもが”ママかっこいい”と言ってた」
「自分は検事の仕事がすごい好きだから、子供にも検事の自分の裁判で戦ってる姿を見せたりしてたんですよ。子供が『ママかっこいいやん』って言って、『(自分も)検事になりたい』て言ってたんですよ。
でも、こんなことになってしまって、自分も検事を勧められないし、子供もこんな目に遭うんじゃないかと思ってしまうし。検察許されへんと思ってるんだと思います。もう検事の話しなくなったから」とひかりさん(仮名)は子どもへの影響も語りました。
夫も「早く事件が終わって、治療をして回復してほしいんですよ。検察のその対応も変な対応ばっかり、おかしな対応ばかりする。またその傷をどんどんえぐって、えぐって。対応しなあかんようになると、こっちは思うので、だからそういうことやめてと」と訴えます。
苦しみつづけて7年あまり。北川被告のみならず、検察組織との戦いも始まろうとしています。
(関西テレビ「newsランナー」2026年2月16日放送)