山上被告に「無期懲役」判決 「旧統一教会や関係団体に恨みを抱いても殺人行為で生命を奪う意思決定は大きな飛躍がある」など指摘 安倍元総理銃撃・殺害事件裁判 検察側求刑通り 2026年01月22日
2022年に安倍元総理を手製の銃で撃ち、殺害した罪などに問われている山上徹也被告(45)に対し、奈良地方裁判所(田中伸一裁判長)は、「無期懲役」の判決を言い渡しました。
山上被告は黒の長袖Tシャツで、髪の毛を後ろにくくったこれまでといつもと同じ姿で入廷。
判決前、弁護側の席についた際は、机の上で手を組み、目をつむりながら、じっとしていました。
そして判決の言い渡しで、証言台につくよう言われた際には、一礼して着席しました。
山上被告はうつむきながら判決の言い渡しを聞いていました。表情は傍聴席から見えませんでしたが、少し左右に首や頭を振ったり、口元かこわばるような様子が見られました。
裁判で山上被告は起訴内容について「全て事実です。間違いありません」と認め、弁護側は銃刀法違反などの一部の罪について成立を争っていました。
この点について判決では「起訴された内容をすべて認定」しています。
それとともに弁護側は、母親が高額な献金を繰り返すなどした旧統一教会への信仰が事件につながったとする「宗教被害」を訴え、刑を軽くするよう求めていました。
■「旧統一教会への感情が怒りに 理解不可能とは言えない」も「生命奪う意思決定は大きな飛躍」
奈良地裁は判決で、「旧統一教会への複雑な感情が怒りに転じたことも理解不可能とは言えない」としながらも、「旧統一教会や関係団体に恨みを抱いても殺人行為で生命を奪う意思決定は大きな飛躍がある」など指摘。
さらに「聴衆がいる中、被告が銃が発射したことについて被害者や関係者らに弾丸が当たる可能性は十分あった」などとして、「犯行の悪質性は明白」と述べました。
「さらに銃を1年半かけて作成したり、試射したりするなどしていて、被告は威力の大きさを認識。計画性は極めて高い」と指摘しました。
■昭恵夫人に言及「夫が生命を突然奪われるということは言うまでもなく重大」
そして被害者遺族である安倍元総理の妻・昭恵さんについては、次のように言及しました。
「昭恵夫人について、被害者の妻は、夫が生命を突然奪われるということは言うまでもなく重大」
■手製銃の威力は「危険性極めて高い」「高い殺傷能力認識」と認定
また判決では、山上被告の「手製銃」の威力について、「銃の威力は20ジュール/平方センチメートルが殺傷能力あると認められるが、それを大幅に超えて、十分な殺傷能力を有していた。弾丸の1つは、骨の中でも特に固い、右上腕骨にめりこみ、骨折させた」と指摘。
「手製銃の威力は、被告は『命中したとしても、死なないかもしれない』と供述していたが、客観的に見れば、工業製品と同程度で、危険性は極めて高い」と述べました。
さらに「至近距離から発射すれば、20ないし30枚の合板を貫通するという供述は、試射の動画などからして、被告が工業製品より、威力が不十分だと思っていたとしても、高い殺傷能力があるという事実は十分に認識していた」と述べ、山上被告自身がその威力について殺傷能力があるか認識していたと判断しました。
■母親の旧統一教会への信仰によってもたらされた「苦境」
裁判では山上被告の母親が自死した山上被告の父親の生命保険金などから、数年の間に1億円を旧統一教会へ献金していたことなどが指摘されました。
そして証人尋問で母親本人は現在も旧統一教会を信仰していることや、その信仰のために、中学生だった山上被告を含む兄弟3人を置いて韓国に渡っていたことなどを語りました。
また山上被告の妹は、献金などによって困窮した母親が金の無心のために、すがりついてくるのを引きずりながら歩いたことなど、苦しい生い立ちを涙ながらに語りました。
■自死した兄に母「献金で天国で幸せに」恨みを募らせていった山上被告
そして山上被告自身も母親の信仰に反発し、旧統一教会への恨みを募らせていったことを法廷で語っていました。
<被告人質問より>
【山上被告】母と話して統一教会と兄のことを突っ込んで話した。兄が亡くなったあと、母は『統一教会に献金をしたことで兄も天国で幸せに暮らすことになった』と。
それについて、母が献金をしていたおかげで、『兄の死についてはこれでいいんだ』と思っていると感じた。
自分は兄が死んだことに悔やんで、責任を感じていた。母は信仰で乗り越えた。自分とは全く違う方向にいる」
■「不遇な生い立ちがあったとしても、被害者とは無関係です」検察側は無期懲役を求刑
一方検察側は「被告の不遇な生い立ちが事実にあったことは否定しないが、被告は善悪の判断ができる40代の社会人です。不遇な生い立ちがあったとしても、被害者とは無関係です」
そして「宗教2世が凶悪な犯罪を起こす傾向もない。世の中には同等、またはそれ以上不遇でも犯罪に及ばず生きている人もいる。生い立ちはそれ自体を考慮すべきではない」と指摘し、無期懲役を求刑していました。
■安倍昭恵さん「被告人には自分のした罪を正面から受け止め、きちんと罪を償うよう求めます」
また安倍元総理の妻・昭恵さんの意見陳述が弁護士の代読によって実施されました。
【安倍昭恵さんの意見陳述(弁護士が代読)より】「私は前を向いて夫の志を紡いでいきます。被告人には自分のした罪を正面から受け止め、きちんと罪を償うよう求めます」
【安倍昭恵さんの意見陳述(弁護士が代読)より】「突然の夫の死は衝撃的で、目の前が真っ暗になり、かなり長い間夢の中にいるようでした。夫の母は、突然息子を失い、ふさぎ込むようになり、去年2月4日に他界しました。ついに私は1人残されました。
街を行き交う家族連れなどを見ると、自然と涙が止まらなくなります。どれだけ悲しくても負の感情が湧き出しそうになると、俯瞰してそうならないようにしてきました。
私は被害者参加制度で(裁判に)出席しました。夫の母のスカーフを首に巻き、ブルーリボンバッジをつけて出席しました。
夫は参院選の選挙中に銃撃されたので、集まった人などが危険に晒されたことが気になっていました。集まった皆さんが夫以外に弾丸に当たらなかったそうで、それは幸いでした。
被告人がどんな態度でどんな表情で夫を奪ったのか直接知りたく被害者参加制度を利用して出席しました。
私の目の前で謝罪はありませんでした。休憩中、涙があふれ出ました。私にとっては『政治家・安倍晋三』であるとともに、かけがえないたった1人の家族です。喪失感は一生消えることはありません」