中国軍の戦闘機が日本の自衛隊機に対してレーダー照射を行うという事案が発生し、日中間で反論の応酬が続いています。
問題が発生したのは先週土曜日のこと。中国軍の戦闘機が日本の自衛隊機に対し、2回にわたってレーダー照射を行いました。
今回のレーダー照射は一般的な「捜索用レーダー」ではなく、「火器管制用レーダー」と呼ばれるものでした。捜索用レーダーは相手の飛行機の位置や高度を確認するためのものですが、火器管制用レーダーは攻撃する際にミサイルを発射するための目標を定める、いわゆる「ロックオン」状態にするためのものです。
ジャーナリストの岩田明子氏は「これは完全に威嚇に当たります」と指摘します。
【岩田明子さん】「日本は『抑止』と『発動』の2段階ですが、中国の場合は『抑止』、『威嚇』、『攻撃』という3段階があって、この『威嚇』も『抑止』の一環という要素があるため、非常に厄介なのです」
■「危険度のレベルが全然違う」
実は過去にも類似の事案がありました。2013年には東シナ海で中国海軍が海上自衛隊の艦船にレーダー照射を行ったことがあります。岩田氏は当時の状況と今回の違いを説明します。
【岩田明子さん】「当時は官邸記者クラブにいたのでよく覚えています。大変なことが起きたと思いましたが、当時は船同士のケースでした。今回は戦闘機ですので危険度のレベルが全然違います」
さらに当時と異なるのは公表のタイミングです。
【岩田明子さん】「当時はこれからの日中関係がどうなるのか、国際社会が注目していた中でした。中国も日本がどうするのだろうという期待が半分あった状況だったので、エスカレートさせないために事後的に公表したという経緯がありましたが、今回は即時公表しています」
■中国の軍事力、対アメリカとの関係性をアピール
では、中国はなぜこのタイミングで威嚇行為に出たのでしょうか。
岩田氏は複数の狙いがあると分析します。
【岩田明子さん】「『中国はこれだけ軍事力がついているんだぞ』というアピールでもありますし、来年4月に米中首脳会談が予定されていることから、『日本はしゃしゃり出てくるな、こっちはアメリカを向いているんだぞ』ということを見せるために、あえて強い行動をとっている側面もある」
また、青木源太キャスターは、「西側諸国では火器管制用レーダーを当てること自体が攻撃のきっかけになるほどの行為。中国は米軍機に対してはこういった行為をしない。ある意味、日本を『なめている』面もあるのではないか」と指摘します。
■アメリカの対応は…米中主脳会議を控え「様子見」
アメリカの反応も注目されます。
アメリカ国務省報道官は「中国の行動は地域の平和と安定に資するものではない」と中国の対応を批判。「同盟国である日本へのアメリカの関与に揺るぎはなく、中国軍機によるレーダー照射を含む様々な課題について緊密に連携している」と述べています。
しかし岩田氏は「国務省と在日米国大使は日米の揺るぎない結束を発信していますが、ホワイトハウスや国防総省からの発信はありません」と指摘。
「できれば大統領からの発信がほしいところですが、米中首脳会談を控えているため、様子見の部分もある。もう少しフェーズを上げて発信してほしいというのが本音」と語ります。
■止まらない中国の威嚇「世界は中国に時間を与えすぎた」
岩田氏は今回の事態を受け、「世界は中国に時間を与えすぎた」とし、日本に対する中国の威嚇は今後も止められないと話します。
【岩田明子さん】「世界は中国の軍事力強化に時間を与えすぎた面があります。国際社会のルールに乗ってもらおうという動きをもう少し強く働きかけていれば、少し違っていたかもしれません」
さらに、今後も中国が力による現状変更という姿勢を続け、強めていく可能性についても言及しました。
「中国、北朝鮮、ロシアの軍事的結束が強まっている中で、基本的価値を共有した有志国の結束がますます重要になってきます」と強調します。
日本の外交力が問われるなか、元外交官の議員からは「いまは国際的な情報戦、宣伝戦になってきている。いかに日本のやっていることが“正当”で、中国のやっていることが“やり過ぎだ”と国際的に認めてもらい、中国包囲網を作ることが、日本の外交努力にかかっている」との声も上がっているといいます。
NATOやヨーロッパの同盟国に対しても働きかけて説明する姿勢が改めて重要となっています。
(関西テレビ「旬感LIVE とれたてっ!」2025年12月11日放送)