「いつでもミサイル打てる状況だった」元自衛官・佐藤正久が語る中国戦闘機レーダー照射の恐怖 一番の問題は「トランプ大統領がだんまり」ヒゲの隊長が提言する「総理が今すべきこと」 2025年12月11日
中国戦闘機による日本の自衛隊機へのレーダー照射問題で、中国側が新たに「事前通告」の音声データを公開し、問題が複雑化しています。
この問題の背景と今後の展開について、前参議院議員で元自衛官の「ヒゲの隊長」こと佐藤正久さんと橋下徹さんが「旬感LIVEとれたてっ!」で徹底解説しました。
■音声データは本物か?日中の主張の食い違い
9日、中国側は訓練実施を海上自衛隊の艦船に事前に通告したとする音声データを公開。
その内容は「こちらは中国海軍101艦、当編隊は計画通り、艦載機の飛行訓練を実施する」という中国側の通告と、それに対する「中国海軍101艦、こちらは日本の116艦、受信しました」という日本側の応答でした。
この音声について、佐藤正久さんは「多分ほぼ本物だと思います。中国側を正当化するための情報戦の一環だと思います」としながら、「普通に考えて、『これから訓練をやります』ということを、現場の艦艇から日本側の護衛艦に言ったからといって、”事前通告になるか”と言えば、絶対なりません」と指摘しました。
佐藤さんによれば、事前通告には「航空警報」などが必要で、「日本の排他的経済水域で、空母打撃群で、何隻もが展開して離発着訓練をやれば、日本の漁業にも影響します」と説明。正式な事前通告には至っていないとの見解を示しました。
■橋下徹さん「国際政治上では日本が不利」
一方、橋下徹さんは日本政府の対応に疑問を呈しました。
「これは国際政治上では日本の方が完全に不利ですね」と切り出し、「日本側は最初に『(中国側から)何も連絡ない』って言ったんです。その後、中国側が国際社会に向けて『これ連絡してるだろう』と音声データを公開した。国際社会としては『え?やってるやんか中国』ってなるじゃないですか」と指摘。
橋下さんは「その後、日本は『その通告が不十分だ』と言い出した。不十分なんだったら、受信したんだったら確認しないと」と日本側の対応の問題点を指摘しました。
■今回のレーダー照射が危険な理由
ちなみに佐藤さんは2013年に中国の戦艦からレーダー照射を受けたときに、防衛大臣政務官として政府内にいました。その時よりも今回のケースはより深刻だと指摘します。
その理由は艦船ではなく戦闘機からのレーダー照射であったこと。
「2013年の時は照射されたレーダーと火砲が実際にずれていた。大砲は向いていなかった」のに対し、「今回の戦闘機の場合は、レーダーとミサイルは同じ方向を向いています」と解説。
特に「火器管制レーダー」が発射されると「いつでもミサイル打てるという状況」になり、現場の日本の自衛隊の戦闘機のパイロットの危機感は「相当強かった」と現場の緊張感を伝えました。
佐藤さんはさらに、「一緒に飛んでいる僚機があります。最低でも2機で飛びますから、その僚機の方はレーダー照射を受けているのを分かってます。(それを見て)どういうふうに対応したらいいかと」と現場の判断の難しさを説明。
「レーダー照射が当たっているものを、救えるかというと救えませんし、かといって当てている中国の戦闘機を落とせるかというと、総理の指示がなければ落とせません」と述べ、「非常につらい状況のままでスクランブルやっていて、現場の隊員たちのストレスは相当あった」と現場の苦悩を語りました。
■ホットラインは機能しているのか
偶発的なトラブル防止のためのホットラインについても議論されました。
橋下さんは「小泉防衛相と先週の金曜日、フジテレビの番組で対談させてもらったんですが、『対話のメカニズム機能してますか』と聞くと、小泉さんは『しっかりできてる』と、中国の国防部長、いわゆる大臣クラスとは『しっかり話ができてる』と言ってるんですけども、重要なのは現場レベルなんですよ」と指摘。
「もう報道で出てますけども、ホットライン全く機能してないんです」と、現場レベルでの機能不全を明らかにしました。
■習近平国家主席の「焦り」とは
前回よりも深刻な理由として、佐藤さんは習近平国家主席の立場にも言及します。
「習近平国家主席が焦っている」として、「彼は今3期目の主席なんです。通常は中国では主席の権限が強いので、2期10年と決まっていた。しかし台湾統一という悲願のために、憲法改正して何期でもできる」と説明しました。
そして「2027年10月の党大会では、4期目の演説をしないといけない。この3期目で台湾について何か成果があったかというとまだない。なので、これから2027年までの間に、台湾問題については相当レベルを上げてくる」と今後の展開を予測しました。
■日本の防衛体制の課題「日本の弱点はグレーゾーン」
日本の防衛体制の課題も指摘されました。
佐藤さんは「日本の弱点は、グレーゾーン。防衛事態になれば何でもできるんですよ。要はフルスペックで。防衛事態の前のグレーゾーンという部分が非常に弱い」と説明。
「中国にとってはつけ込む隙がいっぱいある」とし、「平和安全法制を議論した時に、1つ抜けたのが航空警備行動だった」と指摘。「当時の航空幕僚長もそこを詰めないと平和安全法制も完結しない(と指摘していた)。まさにそこが穴なんです」と日本の法整備の不備を語りました。
橋下さんも「日本政府というよりも日本国民もそうですし、日本の今の高市政権も維新もそうなんだけれども、もう力のない中で勇ましいこと言うのやめてくださいと。戦略もあって力もあって、本当に対抗できるんだったら僕はガンガン行けばいいと思うんですよ」と日本の現状に警鐘を鳴らしました。
■問題解決への道筋
最後に佐藤さんは「私が一番問題だと思ってるのは、同盟国のトランプ大統領がだんまりを決め込んでるということ」と指摘。「トランプさんが反応しなければ、習近平からするとレーダー照射は『まだレッドラインに届いていない』と思っても当然。だからどんどんまたやってくる可能性あります」と警告。
「今はやっぱり高市総理が電話会談でもトランプさんとやって、トランプさんと2人で共同メッセージで『こんな危険なレーダー照射は駄目だ』というメッセージを出すのが一番大事」と対策を提案しました。
中国との関係悪化が懸念される中、専門家の分析からは習近平政権の「焦り」と日本の防衛体制の脆弱性が浮き彫りになりました。
今後の日本政府の対応と国際社会の反応に注目が集まります。
(関西テレビ「旬感LIVE とれたてっ!」2025年12月10日放送)