2024年度、過去最高を記録した大学への進学率。
学校関係者にとっては追い風と思いきや、18歳人口の減少により、2026年度を境に進学者数が減少に転じる大学の「2026年問題」が迫っています。
存続をかけて先細る受験生を取り合う大学の最前線を取材しました。
■2024年度の進学率は統計史上最高となる62.3%を記録
まもなく迎える本格的な大学の受験シーズン。ある塾では来年1月に行われる大学入学共通テストなどに向けて多くの受験生が勉強に励んでいます。
【高校3年生】「将来学校の先生になりたいっていう夢があって、それを実現するために大学に進学しようって思っています」
【高校3年生】「京都府立大学を第一志望にしています。今までの成果が出せるように、頑張ります!」
【高校3年生】「絶対受かるぞ!最後まであきらめずに頑張ります!」
こうした大学への進学希望者は年々増加傾向にあります。必勝ハチマキを巻いて勉強していた昭和60年以降、大学への進学率は伸び続けてきました。
文部科学省によると、2024年度の進学率は統計史上最高の62.3%を記録。今年度以降もこの上昇傾向は続くということです。
■「大学2026年問題」で大学の「戦国時代」に
進学ブームに塾もさぞ景気が良いはずと思いきや、塾の関係者は「どんどん大学が閉校に進んでるっていうのを目の当たりにすると、本当に子供たちがしっかりとした選択をしないといけない時代になったと痛感しています」と不安を抱いていました。
悩みの種となっていたのは、「大学2026年問題」です。
これまで、受験生となる18歳の人口は減少傾向でしたが、大学への進学率が伸びていたため「進学者数」は増加を維持できていました。
しかし、いまのままでは2026年度を境に人口減の割り合いが進学率の伸びを上回ることで進学者数が減少に転じます。
その結果、存続をかけて先細る受験生を取り合う大学の「戦国時代」が幕を開けるのです。
■関西で相次ぐ募集停止「明日は我が身」
関西ではすでに、その兆候が現れています。
【京都華頂・華頂短期大学 中野正明学長】「今後の持続的な運営を見通すことが困難であることから令和9年・2027年度より学生募集を停止せざる得ない」
京都華頂大学と華頂短期大学が今月20日、2027年度から学生の募集を停止すると発表さらに、ことし4月京都ノートルダム女子大学も、深刻な定員割れなどで来年度以降の募集を停止すると発表しています。
“受験生の減少”という現実に直面する日本の大学。生き残りをかけた対策を急いでいます。
学生およそ2000人が在籍し、東播磨エリア唯一の大学、兵庫県加古川市の「兵庫大学」も学生集めには苦労しているようです。
【兵庫大学経営企画部 瀬川明部長】「あすは我が身じゃないですけどしっかりと大学の教育をみつめなおして兵庫大学らしい生き残り方を至急、模索してるところです」
「地域に根差す大学」としてほかとの差別化を図りたいとしていますが経営状況を示す指標のひとつとなる「定員充足率」は、86%に留まっています。
【兵庫大学経営企画部 瀬川明部長】「足らずのところをどう補うのかが課題になってくると思うので、18歳人口だけでなくて社会人であったり地域の外国人労働者に対する日本語教育をどうできるか地域のニーズも把握しながら別収入もしっかり考えていきたいと思っています」
■厳しい時代を迎える中、異彩を放つ大学も
厳しい時代を迎える中、異彩を放つ大学もあります。
大阪府吹田市にある大和大学。
2014年に開学し、現在六学部を備える大学が掲げるスローガンは「東の早慶、西の大和を目指す」。この大きな目標に向けて、その進化は止まりません。
「東の早慶、西の大和」というスローガンをCMなどで打ち出し、またたく間にその知名度を上げました。大和大学によると、今年度の志願者数は開学時の10倍を超えるおよそ2万2500人。定員充足率も開学以来平均100%を超えているということです。
新しい学部を次々と創設するなど、まさに快進撃の大和大学。なぜ好調なのでしょうか。
「時代にあったそういった政策を導入してきているところ、常に動いている。そこに魅力を感じていただいているのかなというふうに」と大学総長は語ります。
さらに大学の環境づくりにも注力していて、取材班には総長自らがキャンパスを案内してくれました。見えてきたのは一際目を引く「大和アリーナ」。およそ4800人を収容できる施設です。
【大和大学 田野瀬良太郎総長】「建物の設備備品の質ではどこにも負けない。そういう充実したものにしていきたいという思いは確かにあります。常に早慶を意識しながらやっていきたいと」
■意識の先にはやはり“東の早慶”が…
意識の先にはやはり東の早慶があるようです。
取材班がCMについて質問を投げかけると、「当初はネットで皆さんからお叱りを受けましたね」と田野瀬総長。
「本当に実現するぞということですよね?」という問いには「はい。必ず達成させます。真剣に本気で取り組んでいきたいと思っています」と自信を見せます。
学生からは「たまに恥ずかしいなと思った時もあるんですけど、やっぱり大学の説明が結構しやすいので、僕は結構好きです」という声も。
「東の早慶、西の大和」の達成時期について学生に聞くと「50年いかないぐらいですかね」と回答がありました。
「2026年問題」について、田野瀬総長は「本当に朝から晩までもうそのことばっかり考えてます。どうしたら受験生の皆さんが求めている大学になるかと」と熱意を語り、早慶には「10%くらい」近づいていると話しました。
■「大学が淘汰されるのは仕方ない。職業訓練校を充実させるというのも1つの道では」
大学経営に詳しい専門家は、「多くの大学が淘汰される」と指摘します。
【大学ジャーナリスト石渡嶺司さん】「2026年問題によって、今まで安泰だった大学も安泰ではなくなります。大学にとっての戦国時代に突入していく。4年制大学については、私は今後10年で少なくとも50校、多くて100校は減っていく可能性がある」
変化する社会の中で大学のあり方が今問われています。
【ジャーナリスト浜田敬子さん】「それによって大学が淘汰されていくだろうというのは、私はある程度仕方ないのかなと思っていて、本当に求められる、ここで勉強したいという特色があったりとか、そういう大学じゃないと選ばれなくなるだろうなとは思います」
現在、地域の私立大学の公立化も進んでいます。その背景には「地域から若者が流出するのを防ぎたい」という目的があるものの、「半分の学生さんが奨学金を抱えている」という現状もあり、「学費を無償にするとか、低く抑えることも大学の使命だ」と浜田さんは指摘します。
【ジャーナリスト浜田敬子さん】「AIによってホワイトカラーの仕事がどんどん減っています。アメリカでは今大学を出た後に職業訓練校に通う人が増えていて、むしろ水道配管工の仕事とか電気工事の仕事の方がホワイトカラーの仕事よりも給料が高くなっているんです」と指摘します。
【ジャーナリスト浜田敬子さん】「日本も圧倒的に現場の人材が乏しくなっています。なので本当に大学に行く必要があるのか、むしろスキルをつけて早くから稼ぎたいと思ってもいいわけです。現場の仕事というのは非常に貴重で、稼げるのであれば、職業訓練校を充実させるというのも1つの道です」
(関西テレビ「newsランナー」 2025年11月25日放送)