「いたと思ったらダッと来たんです。猛スピードですよ」新聞配達中に襲われた男性語る“クマの脅威”「仕事はすぐ辞めた」 強いられる「クマを恐れる生活」の実態 2025年11月18日
【クマに襲われた人】「いたと思ったらダッと来たんです。もう猛スピードですよ。鼻息が聞こえるんですよ。『あ、いるな』と思ってました」
秋田県では連日、クマ被害が続いています。 特に10月24日には東成瀬村で1人が死亡、3人が重傷を負うという痛ましい事故も発生しました。
関西テレビ「旬感LIVEとれたてっ!」では、番組の青木源太キャスターが現地に赴き、その実態を取材しました。
■新聞配達中にクマに襲われた男性 「クマを認識したと同時に襲われた」
11月4日には、秋田市内で新聞配達をしていた男性がクマに襲われました。
男性が襲われた場所は、耕作放棄地や河川敷の緑があるエリアでありながら、住宅街も近くにあり、人間が住んでいる場所と自然が隣り合わせになっているような地域です。
クマに襲われた新聞配達員が当時の状況を語りました。
【クマに襲われた人】「車に乗って、1軒、1軒配達。玄関前のところで止まって、ドアを開けて、ポストの位置まで15メートルぐらいある。ちょっと上り坂みたいになっていて、敷地内。家のすぐ後ろが藪なもんですから、藪からバッと来た」
「クマを認識したと同時に襲われた」と言います。
【クマに襲われた人】「いたと思ったらダッと来たんです。猛スピードですよ。だから、最初は『何だ!?』って感じ。そして(襲って)きたから、ブロック、また来たから、また防ぐ。相撲のぶつかり合いみたいな感じ」
立ちながら、クマともみ合いになったというのです。
■失明は免れるも肋骨は折れ…「軽くてよかったですね」と医師 仕事はすぐに退職「外に出たくない」
クマの大きさは「たぶん1メートルないくらい、ほぼ1メートルくらい。そんなにでかくもないし、小さくもない。中くらいかなと思う」ということですが…。
【クマに襲われた人】「1回来て、もう1回きて、3回くらいやって、そのうちに引っかかれたりする。3回くらいあったら、ひと呼吸あって、『まずいな』と思って、防御の姿勢とりました」
クマから身を守る際に有効とされる「防御姿勢」。うずくまって、頭を隠すこの動作が生死を分けました。
男性は防御の姿勢を取りますが…。
【クマに襲われた人】「(近くに)いる。鼻息が聞こえる。鼻息が聞こえるから『ああ、いるな』と思っていた。1分か、2分くらいしたら、鼻息が聞こえなくなった。それで『ああ、行ったな』と思った。
そろそろいいかなと思って、少しずつ起き上がった。ここ(頭をさげていた近く)に新聞がある。血がべっとりついている」
現場から自力で逃げ出しましたが、頭の傷に加え、手首も負傷。肋骨は折れていました。
かろうじて失明こそ免れましたが、目は真っ赤に充血していました。
(Q.看護師・医師は傷を見て何か言った?)
【クマに襲われた人】「看護師さんたちは『頑張ってね』と励ましてくれた。先生の反応としては、『よかったですね』という感じで。『軽くてよかったですね』って」
一命はとりとめたものの、新聞配達の仕事はすぐに辞めたといいます。
【クマに襲われた人】「これは辞めた方がいいなと思って、(勤務先に)言ったんです。いま現在は、家の前暗いとちょっと怖いなと思いますね。(外に)出たくないというか、そんな気持ち。前はそんな気持ちになったことない。しかしこうなるとね…命とられたら終わりだから」
■「クマを恐れる生活」を強いられる地域住民
ことしのクマによる被害は過去最悪の状況です。
日本全国で死亡者は13人、負傷者は200人以上に上っています。特に秋田県では目撃件数が過去最多の1万2000件を超え、市街地での出没も相次いでいます。
青木キャスターが取材した秋田市内の千秋公園は、JR秋田駅から直線距離でわずか500メートルの市街地にあります。
11月初めにこの公園内で体長1メートルを超える成獣のクマ2頭が捕獲されましたが、その後も目撃情報があり閉鎖されていました。
さらに取材の6日後には、2キロ離れた秋田市役所前でも、歩行者のすぐ近くを歩くクマの姿が確認されています。
市民の生活も一変しています。
取材に応じた住民の方は「この市街地でクマを見るのはもう驚かなくなっています」と話し、「子どもだけで外出させることを控えている」といいます。
県外からの来た人も「レンタカーを借りる予定でしたが、クマが出没したら怖いのでタクシーで移動しました」と不安を漏らします。
■「クマのフン、ここにも」現場を守るベテランハンターの苦悩
【東成瀬村猟友会ハンター(70代)】「私はね、もう76歳になりました。そろそろ(引退)だと思う…。うちの猟友会は、いま18人しかいない。私が入った当時は50年前、80人以上いた。どんどん少なくなって18人体制になった。私と同じ(年齢)は、猟友会では4、5人かな」
東成瀬村の猟友会に所属する76歳のハンターは、早朝からクマがいないかパトロールを続けています。
柿の木が折られた跡や、クマのフンを発見しながら、青木キャスターに現状を説明してくれました。
しかし、猟友会のメンバーの高齢化と人員不足は深刻です。
「我々が退けばどうなるか…心配はある」と語る猟友会のメンバー。彼らはクマ駆除のために日々活動していますが、全員が本職を持つ「兼業ハンター」であり、その活動は”ほぼボランティア”です。
取材中に見せてもらった箱わなは、100キロ以上のクマでも入る大きさで、運ぶには4〜5人の人手が必要とのこと。
実際に捕獲されたクマの動画を見せてくれました。 捕獲されたクマはおりに噛みつき、歯がボロボロになることから、「放獣したとしてもそのクマは生きていけない」という厳しい現実がありました。
■「見つけてから発砲許可まで30〜40分」制度の壁
猟友会の活動には様々な課題があります。
まず、人手の確保です。
「日中に緊急出動要請があっても、メンバーが仕事中のため人数を集めるのが大変だ」と40代のハンターは言います。有害駆除を行うには5人以上集める必要がある一方、本業の仕事を持つ、東成瀬村の猟友会メンバーにとって、それは容易ではありません。
また、発砲許可の問題も深刻です。
「見つけてから発砲の許可が出るまで30〜40分(たっていた)」と猟友会のメンバーは語ります。
今回のクマによる死傷事故でも、「たまたまクマが移動しないで、あそこで居座ったから、何とかなった」と状況を説明しています。
■警察官がライフルを使って駆除 ハンターは「いいこと」と賛同
こうした課題があるからこそ、猟友会のメンバーたちは、規則改正によって警察官がライフルを使って、クマを駆除できるようになることに期待を寄せています。
「すごいいいことだよな。やれるんだったらやった方がいいと思う」と賛同の意を示しました。
また専門的な訓練を受けた警察官のスナイパー能力にも期待しています。
「動いているものに関しては、猟友会のいつものメンバーの考えが必要だけど、止まっているものに関しては、訓練されたスナイパーの方が、上手いかもしれない」と現実的な見方をしています。
■「異常な状態」専門家が警鐘を鳴らす
なぜ今年はこれほどまでに人の多い市街地にまでクマが出没しているのでしょうか。岩手大学の山内貴義准教授は「山にクマのエサになるような、ドングリやブナの実がほとんどなっていない状況で、クマが非常にお腹を空かせている」と説明します。
山内准教授は「人を恐れない個体が多くなっている」と指摘し、「今の状況自体は、かなり異常な状態」と警鐘を鳴らしています。
「“クマの凶暴化”が深刻な被害につながっている」というのです。
地域住民の生活は一変し、農作業も子どもの登下校も恐怖を伴うものになっています。
クマとの共存を模索する中で、高齢化する猟友会の未来や、法整備の在り方など、多くの課題が浮き彫りになりました。私たちはこの問題にどう向き合っていけばよいのでしょうか。
(関西テレビ「旬感LIVEとれたてっ!」2025年11月17日放送)