パワハラ疑惑などが指摘された、兵庫県の斎藤元彦知事。
議会の不信任を経て再選を果たしてから、まもなく1年。
■111万票あまりを獲得しての圧勝
去年11月の神戸・三宮。兵庫県知事選の最終日は、熱気に包まれていました。
「さいとう!さいとう!」支援者の声が響く中、斎藤元彦知事は「すごく厳しい厳しい、約9カ月間だったのですが、感無量なところがあります」と当選の喜びを語りました。
111万票あまりを獲得しての圧勝でした。
■「2馬力選挙」を展開した立花容疑者は1年後…元県議への名誉棄損の疑いで逮捕
その裏では、NHKから国民を守る党・立花孝志党首が出馬。自身ではなく、斎藤知事の当選を目指し、「2馬力選挙」を展開。
あれから1年。今月9日、名誉毀損の疑いで立花容疑者は逮捕されました。全面否認していますが、ターゲットにしていたのは、当時、兵庫県議会議員だった竹内英明さんでした。竹内さんは、斎藤知事のパワハラなどの疑惑を追及した、百条委員会のメンバーでした。
【立花容疑者のYouTubeより】「生前、竹内中傷していましたよ。だってあいつ、悪いことしてるじゃん」(2025年3月)
立花容疑者に、斎藤知事を陥れた「黒幕」だと名指しされると、竹内さんの自宅には、嫌がらせの電話やFAXが相次ぎました。うつ状態になった竹内さんは、ことし1月、自ら命を絶ちました。
竹内さんの妻が、胸の内を明かします。
【竹内元県議の妻】「亡くなった人間が反論できるわけもないですから、名誉毀損されてそのまま放置されている。それがまた、非常に勢いをもって広まっていく。私たちにとって耐え難いことですし、それを許さない世の中であってほしいというふうに思いました」
■「コメントは差し控える」を連発する斎藤知事 問われる説明責任
立花氏の逮捕を受けた斎藤知事の定例会見。多くの報道陣が集まる中、知事は次のように答えました。
【斎藤知事】「報道では承知をさせていただいておりますけれども、個別の事案である本件については、捜査中であることからコメントは差し控えさせていただいているというところです」(2025年11月)
「コメントは差し控える」のフレーズを連発。
記者からの「斎藤知事は1年前の知事選で、知事が望むか望まないかにかかわらず、立花容疑者の様々な街頭演説での主張によって、ある種メリットがあった」という指摘に対しても、「昨年の知事選挙に対する質問については、これまで回答させていただいた通りですね」と切り返します。
「『斎藤知事は悪くない』であるとか、『斎藤知事は既得権益と戦うヒーロー』であるとか、非常に斎藤知事を支持する方が増えたという事実がある」という質問に対しても、「先ほど答えた通りですね。当事者としてできることを精一杯させていただいて、自分が有権者の皆様に政策や訴えをさせていただいたということです」と応じるのみでした。
【関西テレビ・鈴木祐輔記者】「『先ほどお話しした通り』というふうに、やっぱりおっしゃいましたけれども、質問自体が違うんです。立花容疑者のことを聞いているのではなくて、それによって広がった言説についてのことを聞いているんです」
【斎藤知事】「答えは一緒です。昨年度の知事選挙に関することについては今申し上げた通りですね」(2025年11月)
質問が違うことを指摘されても「答えは一緒です」と、あの「斎藤旋風」は立花容疑者の主張のおかげなのか、肯定も否定もしないままやり過ごします。
最近では、阪神タイガースの優勝パレード見送りや、知事が推し進めた電子マネー事業の情報漏洩問題などでも、聞かれたことに答えない姿勢は、一貫しています。
■知事定例会見のたびに兵庫県庁の外ではデモが…
斎藤知事が定例会見を開くたびに、兵庫県庁の外ではデモが行われています。
【デモの参加者】「知事失職しかない。これ以上人が死んだり、行政が混乱するのはごめんです。斎藤さん、ちゃんと仕事できるような人じゃないから」
■混乱の始まりは「公益通報の扱い」
この混乱の始まりは「公益通報の扱い」にありました。
【斎藤知事】「事実無根の内容が含まれている。業務時間中なのに嘘八百含めて文書を作って流す行為は、公務員としては失格ですので」(2024年3月)
「公務員失格」と切り捨てた相手は、元西播磨県民局長。斎藤知事のパワハラ疑惑などを告発する文書を、県議会議員や報道機関に送っていました。
県の内部調査で、告発者だと特定された元県民局長は、去年7月に死亡。自殺とみられています。
「公益通報」の告発者探しや不利益な扱いは禁止されています。県が設置した「第三者委員会」からは、公益通報者保護法に違反していると認定されましたが―。
【斎藤知事】「誹謗中傷性の高い文書であるという認識に変わりはございません。当時の判断としてはやむをえない、適切な対応だったというふうに考えています」(2025年3月)
「公益通報」とは認めずに、県の対応が「適切だった」と今も繰り返す斎藤知事。
■知事を追及すると『報復』が…自宅に「排泄物」まかれた県議
それを追及すると誰かに報復される、という状況もまた、何ら変わっていません。
【ひょうご県民連合・上野県議】「直接私なんかやったら、メールに書き込んできて、『お前死ね』とか、『お前が死んだらええんや』とかね」
さらに生活への影響も出ています。
【ひょうご県民連合・上野県議】「家の庭に嫌がらせ2回ほどやられて、警察に相談をして。排泄物を撒いてるんですよ。7月か8月くらいですよ」
百条委員会の委員長を務めた自民党の奥谷県議は、斎藤知事の政策には期待を持ちつつも、譲れない条件があると話します。
「若い人たちが兵庫県で活躍してもらったり、また若い人たちにはこの兵庫に定着してもらえるようなこと、そういう施策の方向性については私は賛成してまして」と前置きしつつ、「第三者委員会、我々百条委員会も、文書問題の対応、手続きの中で、公益通報者保護法違反があったということ。これについて、まずはしっかりと受け入れていただくということが、私は大前提だと思っています」と強調しました。
■支持する県議会議員も 分断深まる県政
県議会では四面楚歌の斎藤知事ですが、支持する県議会議員もいます。躍動の会・増山県議は、立花容疑者に、百条委員会の非公開部分の音声データを漏らしたことがあります。
【鈴木記者】「増山さんは県警の方から何かお話を聞かれたりとかっていうのはあったんですか?」
【増山県議】「ありましたよ。参考人として多分、色々呼ばれている中の一人だと思いますけど。警察、ちょっと怖いというか。『言わないでくれ』と言われてることは言っちゃまずいと思うので難しいですけど…」
増山県議は、斎藤知事が「説明不足」と指摘されている問題については、こう推測します。
【増山県議】「先に攻撃してきたのはマスコミですからね。私から言わせれば。まず攻撃をされ、それに対して防衛して。マスコミの皆さんに話すと切り取られるっていう。そうなったときに『切り取られないための防衛策』としては、理解はできるかなって感じがしますけどね。ただ、自分だったらもうちょっと突っ込んで行くかなっていう気もしますけど。そこはそれぞれの判断だと思うんで」
■斎藤知事はどう思っているのか
斎藤知事はどう思っているのでしょうか。
【鈴木記者】「我々の報道が偏向報道であるというふうにお感じになっているから、その攻撃から身を守るために、そういうような答弁をされているのか。それから我々の報道って偏向報道なのか」
【斎藤知事】「メディアの皆さんも取材をされたり、質問などを通じて、様々な取材活動をされる中で、それぞれの立場で報道されているというふうには思っています。私自身は先ほどお答えさせていただいたとおり、自らへの質問については、自分が答えられることをしっかり答えさせていただいておりますので、それを踏まえて、様々な報道があるということだというふうには思います」(2025年11月)
そう話し、明快な答えを示しませんでした。
■「いまだに混乱が続いている」この状況を深く心配する竹内県議の妻
竹内元県議の妻は、この状況を深く心配しています。
【竹内元県議の妻】「いまだに混乱が続いている。これまでなかったことが、いろんなところで起こりつつある世の中っていうのを、すごく危機感というか、危うい状態にあるんじゃないかというのは、主人がいたらそういう話ができたんだろうなっていうのは…今も時々考えるんですけど…」
兵庫県政が正常化する日は、来るのでしょうか。
(関西テレビ「newsランナー」 2025年11月13日放送)