【元検事が解説】「選挙運動に対して対価が払われたかどうか」がポイント 斎藤知事ら不起訴処分に 知事選でのSNS運用を巡り公選法違反の疑いで告発 2025年11月17日
兵庫県知事選挙でのSNS運用を巡り、斎藤知事とPR会社の社長が去年、公職選挙法違反の疑いで刑事告発されましたが、神戸地検は12日、不起訴処分としました。
なぜ、不起訴処分になったのか、元大阪地検検事の亀井正貴弁護士の解説です。
■「選挙運動に対して対価が払われたかどうか」がポイント
亀井弁護士によると、「起訴するためには物的証拠が必要で、選挙運動に対して対価が払われたかどうか」がポイントだと解説します。
【亀井正貴弁護士】「起訴するためには物的証拠が必要です。つまり選挙運動であるということだけではダメで、対価が払われたかどうか。
自白ではダメで、物的証拠が必要だと思います。しかも、初期の頃に作られた物的証拠、例えばやりとりに関するメール、陣営との見積書、選挙運動の計画書とか、物的証拠として、選挙運動が対価であるということを示すようなものが必要。
場合によっては、選挙運動ではない=ボランティアだという(ことを示す)物的証拠が被疑者側(斎藤知事ら)にあったかもしれないので、おそらく、その物証の勝負の帰趨を決めたんだと思いますよ」
【吉原キャスター】「その証拠がなかなか出てこなかったということになるんですか?」
【亀井正貴弁護士】「そう思います。例えば、最初に見積もりを出すときに、『SNSの戦略』などが入っていれば、『入っていた』と言えますよね。
逆に(見積もりに)入っていなくて、『ボランティアでやりましょう』というようなメールやLINE、双方のやりとりとか、内部のやりとりがあれば、逆に『対価性がない』という証拠になります。
だからおそらく物的証拠は押さえられなかったのだろうと思います」
■PR会社の主張は
PR会社の主張です。
PR会社は「広報全般を任せていただいた。運用戦略の立案やアカウントの立ち上げを責任を持って行った」と主張しています。
総務省は、一般論として、「業者に選挙運動用のウェブサイトを主体的に企画作成させる場合、選挙運動の主体であると解されることから、報酬の支払いは買収となる恐れが高い」としています。
■「対価を払ったということが大事」「対価性が認められなかった」のでは
【吉原キャスター】「主体的に行ったのかがポイントになると思うんですけれども、この総務省の見解を見ると、PR会社の主張というのは法律に違反しているようにも感じるが?」
【亀井正貴弁護士】「(業者が)主体的に行った選挙運動かどうかについては、本来認定されて当たり前の話なので、そこは問題じゃないです。
それは当然の前提で、その上で、これに対価を払ったということが大事なんです。(選挙)運動に対して対価を払って買収したということが大事なので、その対価性が認められなかったということが嫌疑不十分の理由だと思います」
【亀井正貴弁護士】「おそらくポスター貼りとか、普通の選挙活動に関する選挙準備に関する費用が71.5万円だった。この中にはSNS戦略が入ってなかったんですよ。おそらくSNS戦略の選挙運動は、ボランティアでやったという形で、選挙運動をタダでやってるわけだから。買収には当たらないということですね」
■「20~30年前なら違う展開に」亀井弁護士
また、亀井弁護士は今回の「不起訴処分」に対して、「20~30年前なら違う展開に」なっていた可能性があると説明しました。
【亀井正貴弁護士】「おそらくこれが20~30年前であったら違う展開がありえたかもしれないです。当時は物的証拠をしてないし、おそらく本気でやる場合には、(逮捕し、)身柄取りますから。そこで自白を迫っていきます。
それは、今の時代はできない。物的な証拠、LINEとメール、それから紙ベースの見積もり計画書、そういったものの中で、71.5万円の見積もりの内容の中にSNS戦略というのが入っているか。おそらく入ってないんですよね」
【吉原キャスター】「選挙を巡る問題に関しての起訴のハードルが高いということですか?」
【亀井正貴弁護士】「高い。これが前提になると、いわゆるSN戦略も分全部ボランティアでやるということにしてしまえば、もう運動買収として立たなくなるという問題なんですよね」
公職選挙法では、候補者の関係者が買収などした場合、たとえ候補者が買収していなくても当選が無効になる『連座制』が適用されます。
【吉原キャスター】「影響が非常に大きいだけに検察は慎重な判断をしたっていうところもあるんですか?」
【亀井正貴弁護士】「ありますね。やはり現役(の知事)ですからね。首長に関する事案ですから、よほど慎重に捜査すると思います。警察庁案件の所轄案件になりますし、当然最高検とか高検ぐらいも判断しますから、非常に慎重になります」
■そのほかの容疑についても不起訴に
また、そのほかの容疑についても、不起訴になっています。
・2023年の阪神・オリックスの優勝パレードで、税金を投入し県に損害を与えたという斎藤知事らの背任容疑
・県に贈られたワインを斎藤知事が持ち帰ったことによる背任容疑
・稲村和美氏に支持を表明していた兵庫県内の22市長の公職選挙法違反容疑
・稲村和美氏の後援団体のアカウント凍結。偽計業務妨害容疑
・稲村和美氏を当選させないため、被告発人A・Bがそれぞれが事実をゆがめ、SNSに投稿したという公選法違反容疑
【亀井正貴弁護士】「例えばSNS戦略にしても、脱法的に行われるのではなく、一定程度許して、もともとあんまりお金をかけないようにするために(法律で)止めているわけですけども、一定程度はもう何らかの形で許してしまって、例えば定額にするとか、ある程度そういう形にしないと。
『全部ボランティアでやります』と言われたら、それで話は全部おしまいということになってしまうから、そこはそういう観点での(法の)改正は考えてもいいかなと思いますね」
(関西テレビ「newsランナー」 2025年11月11日放送)