立花容疑者は「嘘の情報発信の問題性がむしろ問われている」紀藤弁護士が“死者の名誉毀損”巡って解説 NHK党党首・立花孝志容疑者 元兵庫県議の名誉を毀損した疑いで逮捕 2025年11月11日
NHK 党の党首・立花孝志容疑者が9日、死亡した元兵庫県議の名誉を毀損した疑いで逮捕されました。
元県議の妻が刑事告訴した6月から5カ月がたった今、なぜこのタイミングで逮捕に踏み切ったのか。
そして別の罪で執行猶予中だった立花容疑者、実刑の可能性はあるのか。
関西テレビ「旬感LIVE とれたてっ!」では、NHK党の問題について、たびたび発信し、公職選挙法や“政治とカネ”にも詳しい紀藤正樹弁護士が解説しました。
■政局に影響を与えないタイミングを見計らっての逮捕
まずはタイミングについてです。
亡くなった竹内元県議の妻は、ことし6月に告訴していますが、およそ5カ月たった今になっての逮捕となりました。
【紀藤正樹弁護士】「これは、ことし選挙が続いたんですよね。参議院選挙の後に、衆議院選挙ということで、続いていたということもあって、なかなか政局に影響を与えない逮捕が難しかったということだと思います。
高市政権が政権的に安定して、また今日(10日)、来月実施の(静岡県)伊東市長選挙出馬に向けた記者会見を予定してということもあって。
この時期、きのう(9日)の時期が、一番タイミング的に政局に影響を与えない逮捕ということで、兵庫県警も、きのうが最後のラストチャンスだと思って逮捕に及んだんだと思います」
【青木源太キャスター】「ということは、兵庫県警はこのタイミングを計っていたということですか」
【紀藤正樹弁護士】「名誉毀損は、実は受理する段階で一定程度、『起訴するものなのか、起訴しないものなのか』というのは、警察はある程度把握しているのです。
その上で、証拠を睨んで受理を6月にしたということになりますから、逆に言うとそこから、数えて逮捕というのは、どこかの段階では当然ありえますし、場合によっては逮捕せずに立件もあり得るんですけども」
■逮捕の裏側には さらなる誹謗中傷・名誉毀損を考慮か
兵庫県警が「逮捕」という手段を取ったことについて、紀藤弁護士は「名誉棄損の疑いで逮捕される事案と言うのは、それほど珍しくない」と指摘します。
【紀藤正樹弁護士】「これも色々言われる方がいますけども、名誉毀損も逮捕する案件というのは、それほど珍しくはありません。
当然、逮捕をしないといけない事件もあって、実際、いくつも報道もされてますけども、今回の場合は逮捕する要件には、基本的に“逃亡の恐れ”と“証拠隠滅の恐れ”という2つあるわけです。
“証拠隠滅の恐れ”という観点から見ると、ポイントは2つあって、1つは今回の名誉毀損発言というのは、『誰かから聞いた話』なんです。そうすると、『誰から聞いたか』という議論になって、いわば取材元と関係してくる。
そうすると、まだそれが明らかになってませんから、そこに証拠隠滅の恐れがある。
それから、また誹謗中傷する可能性がありますから。在宅で捜査すると、逆に被害者を誹謗中傷する、あるいは別件の名誉毀損事件などを捜査中の場合、そういった方々を誹謗中傷する恐れがあって、証拠隠滅の恐れがあるということをかなり強く考えたんだろうと思います」
■「死者の名誉毀損」要件は“虚偽か・虚偽じゃないか”「嘘の発信の問題性問われている」
さらに紀藤弁護士は、立花容疑者が死者に対する名誉毀損の疑いも持たれていることについて、次のように指摘します。
【紀藤正樹弁護士】「今回、死者の名誉毀損という、これは立件が非常に珍しいです。死者の名誉毀損のときは、“虚偽か虚偽じゃないか”だけが要件になってるんですね。
今回は、『嘘』ということで逮捕していますので、基本的には名誉毀損の場合は虚偽でなくても、取材したり調査したりするのが、確実な証拠に基づいて発言したことについては、処罰されないことになってるんですけども。
今回の案件は死者の名誉毀損も逮捕要件になっていますから、嘘の情報を発信することの問題性が、むしろ問われていると考えていただいた方がいいと思います」
■執行猶予が取り消される可能性も 捜査の進展の広がりが焦点に
逮捕された立花容疑者は、NHKの契約者の個人情報を不正に入手し、インターネットに投稿したなどとして、2023年3月、懲役2年6カ月、執行猶予4年の有罪判決が確定をしています。
執行猶予中にさらに逮捕されたことで、どのような影響があるのでしょうか。
紀藤弁護士は、今後「他の容疑で逮捕が続く可能性もゼロとは言えない」と述べた上で、「執行猶予が取り消される可能性」について言及しました。
【紀藤正樹弁護士】「もし仮に有罪で、実刑判決が出るということになれば、当然、前の判決は執行猶予は取り消されて、加算されて実刑になるということになります。
新しい事件で執行猶予がつくことは否定はできませんけども、その場合でも当然、前の裁判については執行猶予が取り消される可能性もある。
いずれにせよ判決の結果がどうなるか、あるいは今後の捜査の進展がどこまで広がっていくのかが焦点になろうかと思います」
【関西テレビ 江口茂解説デスク】「今回は竹内元県議の名誉毀損でしたけれども、これと別に、百条委員会の委員長だった奥谷議員が刑事告訴をしていまして、こちらは警察が今、検察に書類送検をした状態です。これは検察がこれから捜査を進めるということになると思います」
■「悪質性が“証拠隠滅の恐れ”につながるのと判断されたのでは」
執行猶予中ということは立花容疑者も理解していたはずですが、別の事件で立件されるとは考えていなかったのでしょうか。
【紀藤正樹弁護士】「彼がYouTube上で何回も発信してますけども、自分が執行猶予中であることは分かっているんです。
今回(の逮捕)は虚偽の容疑(死者に対する名誉棄損)なんですけども、いわゆる虚偽の情報を流すようなことを繰り返していました。
警察としては悪質性というのは、これは逮捕要件にはならないんですけども、その悪質性が“証拠隠滅の恐れ”につながるんじゃないかということを、関係者に対する口裏合わせなど、そういうこともあり得るんじゃないかということで、逮捕に及ばざるをえなかったというのが多分本当のところだと思います」
(関西テレビ「旬感LIVEとれたてっ!」2025年11月10日放送)