「主人の名誉を回復することは、いつかきっと、できると信じています」あまりにも非情な、容赦なく、次から次へと繰り返される誹謗中傷 自死した元県議の妻が問う「人を貶めることの責任」 2025年11月17日
政治団体「NHKから国民を守る党」党首・立花孝志容疑者(58)が逮捕された。 逮捕容疑は名誉毀損。
兵庫県・斎藤元彦知事の疑惑を追及していた、元県議の竹内英明さん(当時50歳)について、「逮捕される予定だった」などと街頭演説やSNS発信を重ねた疑いだ。
竹内さんは、相次ぐ誹謗中傷を苦に、2025年1月に自ら命を絶つ。
それでもなお、遺族への心ない罵詈雑言は続いた。 立花容疑者の逮捕に今、何を思うのか。12日、竹内さんの妻がインタビューに応じ、その胸の内を明かしてくれた。
(取材:関西テレビ 鈴木祐輔)
【鈴木】 立花容疑者が逮捕されました。どうお感じになりましたか?
【竹内さん】 「大変驚きましたけれども、すごくほっとしました。最近はどうなっているのかな、なかなか難しいのかなと、すごく気がかりに思っていました。大きく動いたというのは、主人にも報告ができるので安心しました。信じられないような思いで、『夢じゃないよな』って反すうしながら、仏前に伝えました」
【鈴木】 逮捕容疑には亡くなった後の名誉毀損についても含まれています。
【竹内さん】 「『死者の名誉毀損』ということが、過去に判例もなくて非常にハードルが高いことは、私も色んな方にお聞きして躊躇するところもありました。 ただ、これまでなら考えられなかったような、故人に対して尊厳を踏みにじるようなことが繰り返されて、永遠に続いていく。 亡くなった人間が反論できるわけもないですから、名誉毀損されてそのまま放置されている。それがまた非常に勢いを持って広まっていく。
本人はもうおりませんけど、私たちにとっては耐え難いことですし、本当に許されない行為だと思いました。
死者の名誉を毀損したということは、立証は非常に難しいのかもしれないけれど、やはりここできちんと、どう責任が伴うかというのはきちんと考えられるべきだし、それを許さない世の中であってほしいというふうに思いましたので。 主人の名誉を回復することは、いつかきっと、できると信じています」
■「いつまで耐えたら」希望も力もなくなって
【鈴木】 ご主人が亡くなって混乱があった中で、普通は混乱から離れ「何もしたくない」という方がほとんどだと思います。
【竹内さん】 「もちろん初めは、突然家族を失うということが、本当にショックが大きくて…。私がそれを受け入れるのは、やっぱり難しくて、『亡くなった』とか、『死』とか、そういった言葉が口に出せなかったんです。
それでもまずは夫を見送って、『私たちは私たちで生活しなければいけない』という時に、まだ色んなことが言われて。なぜそんな目に遭わなければいけないんだろう…。
家族を失ったことを受け入れるだけでも難しくて、打ちひしがれているところに、さらにあまりにも非情な、容赦なく、次から次へと繰り返される誹謗中傷というのは、やっぱり耐え難いものでした。
抵抗していいのか、反応していいのか、身を守ればいいのか。 主人もいなくなって何の力もない私たちが、できることもなくて。本当にただそれをじっと耐えるしかなくて。もう少し時間が経って、そのまま落ち着いていけばと願っていました。
ただ主人に対してもそうでしたし、死者への誹謗中傷がずっと繰り返されていたので、やっぱり声を上げなければいけないのかなと。 声を上げなければ、いつまでもその先が見えないことも、また苦しいんですよね。『いつまで耐えたらいいんだろう』って、不安をかき立てますし、希望を持てなくなっていく。力もなくなって…」
■「夫の死を無駄にしない」告訴を決意
【鈴木】 一方で、一緒に歩いてくれた人たちがいた。会見で、その人たちへの感謝の言葉を綴られていました。
【竹内さん】 「打ちひしがれていた時に、色んな方が主人のことを偲んでくださって、私たちのことも心配してくださって。
告訴に向けては、代理人を郷原先生(郷原信郎弁護士)、石森先生(石森雄一郎弁護士)にお願いしたんですけれども。 そういった先生につないでくださったのは、主人の先輩にあたる石川さん(石川知裕元衆院議員=2025年9月直腸がんのため死去)という方です。
本当に夫のことを信じて、『彼がそんなことをするはずがない』とか、主人のやってきたことをきちんと理解して、私たちに励ましの言葉をかけていただきました。
本当に温かく助けてくださった方々があって、ようやく初めて、行動を起こすことができた。
何も持たない私は、声を上げることも本当ならできませんし、今でもこうしてお話しすることも、非常に恐怖を感じるところもあったり。怖い目にもう遭いたくないとか。 できることなら、離れられたらどんなに楽かって思うんですけど、でも向き合わざるを得ない。
夫の死が無駄にならずに、社会が変わるきっかけとなってくれたら、ようやくそこから…
もちろん納得はいかないんですけど、ようやく受け止められるのかな、というふうに思っています」
■「仕事しかやってこなかった」元県議の素顔
【鈴木】 色々な誹謗中傷がありました。でもそうではなく、ご主人は本当はこういう人だと、一番知ってほしいことは何ですか?
【竹内さん】 「百条委員会で厳しく質問をしていたことをとらえて、『あんなことができる人間だから、そんなに弱いはずがない』とか、『そんな弱い人間は政治家なんかやるな』とか。立花さんもそう発言しているのを目にしました。
確かに、弱かったのはその通りかもしれないですけど、ただ本当に全てを懸けて、仕事しかやってこなかった、そんな人生だったと思います。
ずっと政治家の仕事を、誇りを持ってやってきた。 県のために皆さんのためにと仕事ができる。私はそれをずっと横で見てきて。趣味らしい趣味もなくて、休みらしい休みもない。
人のために働いて仕事をするということに生き甲斐を持ってやってきましたから。
間違ったことは見過ごすことができない性格もあって、厳しく、色んな問題を追及して、ただ本人の中の信念、信条でやってきました。 問題が起きて百条委員会の委員になって、議員として追及すべきはきちんとしなければいけないという使命感もあったと思いますし、だから本人はすごく熱心に調べて、百条委員会とか、普段の議員としての活動の中でやっていました。
熱心にやってきたことが突然、『黒幕だ』ってされてしまって。 皮肉というか、一生懸命やってきたことで、最後に仕事を辞めなければいけなくなってしまった。 その時は本当に、ただ仕事を辞めただけではなくて、大きなショックというか、傷というか、ものすごいストレスを抱えていたように思います」
■「家族を巻き込んでしまった」辞職で心に穴
【鈴木】 他党の議員も竹内さんは「大きくて強い人」という印象を持っていたそうです。誹謗中傷の嵐というのは、「そういう人でさえ」追い込まれるものなのでしょうか?
【竹内さん】 「主人が言ってたのは、これは私たちの話なのかもしれないですけど、『家族を巻き込んでしまった』ということを非常に悔いていたというか。『家族を巻き込んでこんなことになって、もうこの仕事を続けていくことはできない』と。
主人なりに考えて仕事を辞めたんですけれど、やっぱりそれで、ぽっかり穴が開いたのか、ものすごい喪失感なのか、大きな挫折ではあって。 これまでやってきた自分の役割というか、職を辞めなければならなくなった。そこから回復する気力がなかなか持てなかったというか。
そこにまた世の中が、突然辞めたことで『何か悪いことがあったのではないか』というような憶測を生んで、それが立花氏の発信みたいなものにつながって…」
■「今までにないことが起きている」抱く危機感
【鈴木】 知事選から1年が経っても続く混乱を、ご主人が見たらどう思うでしょうか?
【竹内さん】 「混乱をそのままにできないようなところがあって、だからこそ逝ってしまったようにも思います。 もうすぐ亡くなってから10ヵ月経つんですけども、まだ本当に、『悪い夢を見てるんじゃないかな』って、一日に何回か思うぐらい、私はまだ今までに起きたことも受け止めきれてなくて。
それはやっぱり、未だに混乱が続いている。これまでなかったようなことが、色んなところで起こりつつある世の中というのを、すごく危機感というか、危うい状態にあるんじゃないかなっていうのは、おそらく主人も… 主人がいたらそういう話ができたんだろうなっていうのは、今も時々考えるんですけど…」
■取材を終えて…「追及への報復」の不条理
立花容疑者はその後、示談を申し入れてきたが、竹内さんは拒否した。
疑惑を「追及」すると、誰かが「報復」をしてくる。 これまでめったに起こらなかったことが、今は日常風景のように起きている。
先日、斎藤知事の再選から1年がたっても、混乱が収まる気配が見えない兵庫県政と斎藤知事の姿勢を特集で放送した後も、インターネット上には、亡くなった人たちへの誹謗中傷が起きていた。
こうした「言葉の暴力」の連鎖を断ち切るために、竹内さんは立ち上がった。
打ちのめされた遺族が立ち上がらなければ動かない不条理に、怒りを禁じ得ない。
(関西テレビ報道センター神戸支局長 鈴木祐輔)