和歌山県白浜町のアドベンチャーワールドでは、28日、中国に返還される4頭のパンダを見ようと、多くの人が集まりました。
人々を魅了したパンダ、その最後の1日を取材しました。
■パンダ最後の一般観覧の日 徹夜する人も
27日朝、和歌山県・白浜町のアドベンチャーワールドで、その姿を見せたのは、パンダ舎のノイズパンダの良浜(らうひん)です。
餌を食べたり、段差を上ったり、いつも通りに暮らしていますが・・・。
良浜を含めた4頭すべての中国への返還が迫る中、27日は、最後の一般観覧の日となりました。
最後にパンダを一目みようと、開園2時間前から、ゲート前はこの混雑。
(Q.どちらから?)
【開園前に並んだ人】「愛知県です」
(Q.徹夜ですか?)
【開園前に並んだ人】「まあそうですね、夜に出て。4頭の顔・表情・行動を忘れないように、しっかりと焼き付けておきたいですね」
(Q.今寝ている人は?)
【開園前に並んだ人】「パンダ好きです」
(Q.パンダを見るために?)
【開園前に並んだ人】「今寝てる(笑)」
■開園と同時にパンダのもとへ
【記者リポート】「今ゲートが開きました。来場者たちが一斉にパンダのもとへと向かっていきます」
通常より1時間早い9時に、オープン。すると、あっという間に…。
【堀田アナウンサー】「ジャイアントパンダが暮らすパンダラブという施設の前に来ています。きょうは最後のパンダの姿を見ようと、たくさんのお客さんが来ています。かなり長い列ができていますね」
パンダの展示エリアには、大行列が。
■来場者の黒い服…理由は溢れるパンダ「愛」
また、来場者をよく見ると、ある特徴が・・。
【堀田アナウンサー】「見ていると、全身黒い服装の方が多いですね」
話を聞いてみると、この現象も、来場者の溢れる「パンダ愛」が理由のようで…。
(Q.黒い服暑くないですか?)
【黒い服の来場者】「(服が)映り込んでしまうので、ガラスに。白い服が映ってしまうよりは、自分の黒で(隠して)、彩浜のお尻を見て『よしよし』って」
■「愛される家族をつくってくれてありがとう」と飼育担当者
そんなパンダと、アドベンチャーワールドの歴史が始まったのは、1994年。
ことし1月に死んだ「永明(えいめい)」がやってきて以来、17頭の赤ちゃんパンダが誕生。30年以上にわたって、多くの人々を魅了してきました。
パンダに魅了されたのは、スタッフも同じ。 吉田倫子さんはパンダの飼育担当を13年続けました。
【ジャイアントパンダ飼育担当 吉田倫子さん】「良浜の子どもたちの出産から携わっているので、親子で良浜と仲むつまじく過ごしている姿とか、とても印象に残っています。こんなに愛される家族をつくってくれて、『本当にありがとう』という気持ちです」
■パンダの経済効果 地元の旅館では女将が3時間睡眠で大忙し
一方、パンダは、「経済面」での影響力も絶大でした。
関西大学の宮本名誉教授によると、パンダがやってきてから31年間の経済効果は、なんと、およそ1257億円。
ことし4月に中国への返還が発表されて以降は、まさに「駆け込みパンダ需要」に湧いていました。 地元の旅館では、そんな駆け込み需要を象徴するように、大勢の宿泊客が。
【紀州・白浜温泉むさし 沼田弘美女将】「GWが明けてもGWのような状態」
(Q.去年の同時期と比べて?)
【紀州・白浜温泉むさし 沼田弘美女将】「ほぼ倍にに近いかなと」
この日も、ほぼ満室で大忙し!子供たちには一人一人に浴衣を用意しますが、浴衣よりもパンダのぬいぐるみに夢中…。
宿泊客が夕食の間には…、部屋の布団を急いで準備。 女将が一旦、仕事が終えるのは午後9時ごろですが…まだ夜が明ける前の午前3時…出勤する女将の姿が!人手が足りずわずか3時間ほどの睡眠で女将が朝食の準備も手伝っていました。
【紀州・白浜温泉むさし 沼田弘美女将】「もう“パンダ特需”です。本当に手伝わないと回っていかないような状況」
さらに朝食会場のヘルプにも入り、とにかく忙しい女将ですが…。
【紀州・白浜温泉むさし 沼田弘美女将】「赤ちゃんパンダのぬいぐるみです。この肉球もすごくって。ちゃんとしっぽも真っ白のなんともいえない。かわいい」
パンダを愛し、ともに歩んできた白浜の人々。激務の中でも、思わず「寂しさ」がこぼれます。
【紀州・白浜温泉むさし 沼田弘美女将】「全部帰ってしまうことについては、非常に寂しいしつらい。新しいパンダが来るというのを期待したいです」
■ありがとうパンダ 最後の時
町全体が別れを惜しむ、パンダ。少しずつ、「そのとき」は、近づきます。そして…。
【来園者】「じゃあね、またね!愛してるよ!」
ついに、「パンダ最後の1日」が終わりました。
【来園者】「まだ正直なところ実感が乏しいところもあり、まだいるんじゃないかと思ってしまっている。(最後に)生きてるんだぞってところを見せてくれて、ありがとうという気持ちで」
いつか、また会えることを信じて…。パンダさん、31年間、ありがとう!
(関西テレビ「newsランナー」2025年6月27日放送)