小泉進次郎氏が農水大臣に就任し一夜明けました。果たして米価格を下げることはできるのでしょうか。
■「コメ担当大臣」小泉進次郎氏、入札中止し随意契約へ転換
「コメは買ったことない」発言で事実上、更迭となった江藤前農林水産相の後任として、石破首相が白羽の矢を立てたのは、小泉進次郎元環境相44歳。
10年前の2015年、第二次安倍政権時代に自民党の農林部会長を勤めていました。
それから10年。3月に落札された備蓄米のうち小売業者に売り渡されたのは、わずか7%。米の価格も高止まりしたままで、去年の約2倍という異常事態に、どう向き合うのでしょうか。
21日夜に行われた就任会見では、自らを“コメ担当大臣”と称した小泉新農水相は、随意契約の詳細を詰めるため来週予定されていた4回目の備蓄前の入札を一旦中止すると明らかにしました。
これまでと何が変わるのか。
競争入札の場合は、業者同士が落札を争って価格を競り合い一番高い値段をつけた業者の手に渡ります。これに対し随意契約では、あらかじめ任意で業者を決定するため価格を吊り上げて争う必要がありません。
また米の流通をスムーズに行う方法について、「可能な限り早い段階で、全農の皆さんとお会いをしたい。そしてどのようにしたら、もっと流れていくのか、そういったことも含めて率直な意見交換をさせていただきたいというふうに思っています」と語りました。
■「結果が厳しく問われる」岩田明子氏が小泉新大臣に厳しい視線
元NHK政治部記者のジャーナリスト・岩田明子さんは、小泉氏の農林水産大臣就任について、「結果が厳しく問われる」と話します。
【岩田明子さん】「発信力もありますので、期待もできますけれども、結果が出なければもう即アウトということになりますので、非常に難しいところに立ったというふうに思います」
【青木源太キャスター】「その結果というのは1つ、石破首相も党首討論の中でありましたけど、やはりコメ価格ですか?」
【岩田明子さん】「そうですね、それに尽きますよね。これから随意契約になりますけれども、どうやって企業を選定するのか、公平性というところも問われてくると思いますし、それから最終末端価格まで決め切れるのかという問題も出てきます。どちらにしても私たちが手にすることができる価格というのは、(国民に)分かってしまうわけですから、これは厳しく結果が問われるところになります」
■コメを溜め込んでいる人の「高値維持の期待を打ち砕く」メッセージが重要
21日の就任会見での小泉氏の発言をふり返ります。
・石破首相から“随意契約”を活用した、備蓄米の売り渡しの検討を指示された(入札を一旦中止し随意契約へ)
・中長期的なコメ政策の在り方。輸出や米粉を含めて新たな需要の開拓、農林水産省全体として考えていきたい(減反から増産へ)
国有財産の処分は普通は入札をへて行われますが、随意契約になると、競争入札がありません。
(Q.業者選びはどのような視点で行う?)
【岩田明子さん】「まさに公平性、それからみんなが納得できる形での業者選びができるかどうかという所も問われると思いますね」
【青木源太キャスター】「これまでは価格が高いのが1つと、あと(流通が)目詰まりしていて結局、届いてないんじゃないかという問題がありました」
【岩田明子さん】「大切なポイントは、『まだ高値が維持できるだろう』と思って、溜め込んでいる人の思いを打ち砕くことが大切なんですよね。なので小泉さんが『需要があれば無制限に米を出す』という表現もされたかと思うんですけど、このメッセージがすごく大事で、(アベノ)マスクの時もそうだったんですけど、買い占めている人の思いを打ち砕くというメッセージがとても大事です。 『あ、もうたくさん出回るんだな』という認識が共有されれば、コメの価格は下がっていきますので、そのメッセージをちゃんと裏打ちを持って出せるかどうかが、ポイントになってくると思います」
■農協改革の”挫折”活かせるか 消費者と農家、双方を守る難しい舵取り
コメ価格が高騰していますが、農家さんの収入が増えたという話は耳にしないという話題になりました。
【青木源太キャスター】「農水相は消費者のことも考えないといけない。一方で農家のことも考えないですね?」
【岩田明子さん】「食の安全保障ということを考えたら農家を守らなければいけませんから、双方を守ることが小泉さんの役割になってきますよね」
【青木源太キャスター】「短期的な視点でコメ価格が下がるのかだけではなくて、中長期的なコメ政策をしっかり見ていかないといけません。ただ、そのコメ政策をやるにあたって、いわゆる既得権益との戦いもこれから待っていると思いますけれども」
【岩田明子さん】「安倍内閣の時に、“攻めの農業”ということで農協改革をやった時に、まさに農林部会長をやっていましたので、改革はその時やり切れはしなかったけれども、農協が何たるかということもよくご存知になったと思いますので、『全農の皆さんと真っ先に会いたい』と言ってましたから、どういう協議が行われるのか(注目です)。
それから農家について言えば、今、小さい面積の農家さんが増えていて、やっぱり効率化を考えると、この土地を集めてもう少し規模を大きくしていかなければいけないとか、こういった所も小泉さんにはしっかりやっていただきたいなと思います」
■「政府は実態把握できていない」 コメ価格高騰の原因究明が課題
さらに、岩田明子氏は今回のコメ不足の原因について、「政府は実態を把握して切れていないのでは?」と指摘します。
【岩田明子さん】「実は、石破さんも林官房長官も、それから森山幹事長もみんな農政通と言われてる人たちで、石破さん自身も本当に『農政に通じた内閣』だと自負しているんですよ。だけれども実際には、全く価格が下がらないわけですから、この実態の把握というのがどこまでできてるのかというのは、私たちからも疑問符をつけざるを得ません」
【青木源太キャスター】「辞任した江藤元大臣も、『マーケットとの戦いが非常に大変だった』と言っていましたし、どこで目詰まりしているか、まだ政府としても分かってないような感じですよね」
原因がはっきりしないと、また同じ事態になるのではという不安もあります。
■「これが正念場」 小泉氏の政治生命にも影響
【青木源太キャスター】「進次郎氏のこれまでのキャリアをもう一度振り返ります。自民党の農林部会長に就任した時、この時はまだ34歳だった。あれからキャリアも重ねて、総裁選に出馬するほどになりました。そして今回は世論の後押しというか、『コメ価格何とかして欲しい』という国民の期待も受けてるわけですよね。そういった意味では全農との相対し方も変わってくるんじゃないかと思いますけども」
【岩田明子さん】「本当に結果が白黒つきやすいですから、正念場だと思います。小泉さんもね」
【青木源太キャスター】「小泉農水相の政治生命にも、ある意味関わってくる?」
【岩田明子さん】「ある意味影響しますね。これで成功すればポスト石破の筆頭にもなり得るでしょうし、失敗すると『あ、やっぱり経験不足だ』ということにもなってしまいますので、本当に正念場だと思います。野党はここを攻めてくると思いますね」
(関西テレビ「旬感LIVEとれたてっ!」2025年5月22日放送)