止まらない日本の主食”コメ”の価格高騰。
23日から政府備蓄米の3回目の入札が始まったのですが、流通の拡大を狙い卸売業者の間で取引ができるようになりました。
これに対し卸売業者や米販売店はどう思うのか?
そして、価格はどうなるのでしょうか。
■コメの価格高騰で苗をめぐっても「予約していた分だけしかない」
大阪府泉佐野市にある農園。ここでは令和7年産のコメづくりが始まり、24日朝、苗を育てる作業が行われました。
【射手矢農園】「これでもめっちゃ出ている(Qこれが苗になる?)そうなんです。根の出始め」
この苗をめぐってもコメの価格高騰で、ある異変が。
【射手矢農園 射手矢康之社長】「苗のもとになる種はJAから買うんですけど、ことしは予約していた分だけしかないということで。おそらく今米不足なのでちょっとでも多く植えようと思っている方がたくさんいるのかな」
■備蓄米はお買い得になるも「継続的に入ってくるのかどうかも未定」
米の平均店頭価格は5キロ4217円と15週連続値上がりに。1年前と比べると2倍以上となっています。米の価格高騰が止まらない中、大阪市内のスーパーを覗くと…
【記者リポート】「こちらのスーパーですがようやく備蓄米が店頭に並んでいます」
買い物客が手にしたのは、政府が放出した「備蓄米」です。この店に並ぶ他の米は5キロでなんと税別5000円以上…。
それに比べ備蓄米は3580円とお買い得になっています。
【備蓄米購入した人】「消費が多いので少しでも安いほうがいいのでたまたま見つけて買わせていただきました」
しかし、こんな懸念も…
【フレッシュスーパーマーケットアオイ 内田寿仁社長】「入荷ありましたけど、次いつ来るのかという情報はありませんし、継続的に入ってくるのかどうかもまだ未定でございます」
■3回目の備蓄米入札で流通拡大を狙い備蓄米の流通ルートが変更
農林水産省によると、先月中旬に放出を始めた備蓄米およそ14万トンのうち、先月30日までに集荷業者が引き取ったのは、全体の3%にも満たない4071トン。
その中で小売業者などに届いたのはわずか461トンで全体の0.3%ほどなのです。
そんな中、きのう24日から始まった3回目の備蓄米入札。およそ10万トンが対象になりますが、流通の拡大を狙いルールの変更が…
【江藤農水大臣】「本来であれば卸と卸の取引は原則禁止としていましたが、今回に限っては認める。枝葉広く流通させることは可能になるのではと思っています」
変わったのは、備蓄米の流通ルートです。これまでのルートでは、備蓄米を落札した集荷業者と取引のある卸売業者が、小売業者に販売していました。それが今回から、卸売業者間の売買が認められたのです。
■備蓄米取引のルール変更で流通が拡大されるのか
これによって、備蓄米を扱うことができる卸売業者が増え、おのずと多くの小売店に流通することが期待されます。
新たなルール変更について専門家は…
【流通経済研究所 折笠俊輔主席研究員】「より広く備蓄米を提供していく手段としては1つの方策としてよいのかなというふうには思う。ただそもそも米が不足してる状況の中でっていうと本当に卸し間での転売が積極的に行われていくかどうかっていうのはまだ未知数なのかな」
備蓄米取引のルール変更で、本当に流通が拡大されるのでしょうか?
■米の卸売業者 去年の秋以降に入荷したコメを先月すべて売り切る
取材班が向かったのは和歌山市にある米の卸売業者です。
【記者リポート】「こちらの卸売業者の倉庫にはご覧のようにコメはもうありません。そしてこちら、使われなくなったパレットが山積みとなっています」
この卸売業者では、去年の秋以降に入荷したコメを先月、すべて売り切りました。
【朝日食糧 川端隆男社長】「これだけパレットが空くのはないわな。それなりに(備蓄米)ほしいですよやっぱり」
しかし卸売業者の間で取引が可能になっても、そもそもコメの全体量が少ない中で、卸売業者が簡単には売ってくれないだろうと懐疑的に見ています。
【朝日食糧 川端隆男社長】「一般の卸間売買はかまわへんとなっているが、その卸間売買もどこまで出してくれるのか。今回の入札は不調ちがいますかね。古米(令和)5年産ということもあるし」
■米を確保できるまでの間 閉店すると決めた創業90年のコメ店
一方、京都府舞鶴市のあの店は…
【まつもと米穀】「米屋ですが、コメありません」
先月、米を確保できるまでの間、閉店すると決めた創業90年のコメ店。きのう23日訪れるとまだ閉店したまま。 備蓄米を入手しようと思うか聞いてみました。
【まつもと米穀・三代目松本泰社長】「思いません。やはり本来の私どもが扱ってきたお米とは異なるものでありますので。(備蓄米が)ご満足いただけるには至らない。また数量も確保できないと感じていますので、今の時点では選択できないなと思っています」
高騰がつづく日本の主食、コメ。その価格はいつ安定を取り戻すのでしょうか。
■備蓄米の取り引きルール変更 米価格が少し落ち着くと専門家は予想
備蓄米の取り引きルールが変わり、米の価格はいつ安くなるのでしょうか。
流通経済研究所の折笠俊輔主席研究員によると、「価格が下がるにはもう少し時間がかかる。5月の中旬~下旬には、米全体の相場が5キロ4000円を切るぐらいにはなるか」と予想されるということです。
今後、少し価格が落ち着くことになると専門家は見ています。
【大東駿介さん】「ちょっと分からないですよね。備蓄米を放出することで、僕たちの手元に安くなった米が手に入ることにつながっているのかどうか、だんだん分からなくなってきている」
【大東駿介さん】「それと、そもそも米が今まで安すぎたんじゃないかということもある。僕らとしては毎日食べるものなので、安く手に入ればありがたいですけれど、農家のことを考えると、そこのバランスを考えるべき時なのかなという感じです」
適正価格は考えていかなければならない問題です。
現在、政府内ではトランプ政権との関税交渉をめぐって、アメリカ産の米の輸入の拡大を検討しているということです。トランプ政権は米の市場解放を要求している状況です。
これについて、ある兵庫県の米農家は、「日本の米農家が持続可能なものにならない」と言っています。
流通経済研究所の折笠俊輔主席研究員は、「現在関税がかかっても『輸入した米の方が安い』からある程度入ってくるのは仕方ない。ただ、『さらに安い輸入米』が入ってくることには注意が必要」だと言っています。
安く米が手に入ることは消費者にとってうれしいことですが、日本の米農家にとっては将来的に選ばれなくなる不安があります。
■トランプ政権との関税交渉「米の輸入拡大」政府はどう判断するのか
【菊地幸夫弁護士】「なかなか難しいです。あまりに保護すると、日本の米の発展につながらない」
【菊地幸夫弁護士】「我々が買おうと思ってもお店に米がない状態で、主食がそれでいいのか。昔の食糧管理法があった時代に戻るというわけじゃないですけれども、ある程度、公的な規制を加える必要を再検討されてもいいのかという気はします」
【関西テレビ 神崎報道デスク】「トランプさんが名指しで『米と自動車』を批判しているわけです。日本としては自動車産業というのは、裾野が広いので守りたい」
【関西テレビ 神崎報道デスク】「いま日本国内で米不足もあるので、このタイミングで『米』というカードを、トランプ政権との関税交渉の中で、日本政府としては切れるカードの一つなのか。ある程度、米の輸入拡大というのは、日本政府として仕方がないと思っているかもしれないですね」
米の価格高騰や品薄も続いている中で、政府がどう判断するのか注目されます。
(関西テレビ「newsランナー」 2025年4月24日放送)