今、世界を揺るがすトランプ政権による関税措置。
すべての貿易相手国や地域を対象に一律で10%の関税を課した上で、貿易赤字が大きい国や地域にはさらに税率を上乗せ。日本には24%の関税が課されるという異常事態となっていて、今はアメリカ側に交渉を要請したことで90日間、措置が停止されている状況。
ほかにも、自動車や鉄鋼、アルミニウムにも25%の関税をすでに課している。
■「国に限らず一律10%、物によって25%はかなり異例」と専門家
私たちの暮らしにどう関わってくるのでしょうか。
21日放送の関西テレビ「旬感LIVEとれたてっ!」 に出演し、日本経済や地域経済が専門の日本総研関西研究センター所長、藤山光雄さんは、トランプ大統領の関税措置の日本経済への影響について、「賃上げができなくなったり、倒産が増える懸念がある」と指摘しました。
【日本総研 関西研究センター所長 藤山光雄さん】「やはり異例なことだと思います。これまで世界経済の中では、グローバル化が進む中で各国が得意なものを作って、それを輸出をして世界経済がうまく回るように進められていたので、できるだけ関税は低くするというのが世界のそれぞれの国にとって一番いいだろうと思われていました。
関税が必要な物でも、だいたい数パーセントぐらいかなと思いますので、まさに国に限らず一律10%、物によって25%というのはかなり異例なことだと思います」
【関西テレビ 加藤さゆり報道デスク】「実は、昨日までカナダで別の取材をしていたんですが、もうカナダではかなり皆さん怒っています。関税率はカナダでは全部25%かかっています。スーパーで写真を撮ってきたんですが、ワインが売られている場所で、ワインの下にカナダの国旗マークが描かれているのがありました。カナダのものだけを売っているというアピールをしていて、カナダの国内ではかなりトランプさんに対しての怒りが広がっていると」
■「アメリカから日本に入ってくるものの値段が上がることはないと見ている」
アメリカ側からすると、輸入するものに関税かけるという話であり、日本の物価に関わる話ではないということでしょうか。
【日本総研 関西研究センター所長 藤山光雄さん】「今のところ、日本はアメリカに対して報復関税をかけることは予定はしていませんので、アメリカから日本に入ってくるものの値段が上がることはないと見ています。
物は世界経済を行ったり来たりしているので、いろんなところで関税がかかってくると、世界を動き回るものの値段が移動するたびに関税がかかる。それで周り回って日本のものの値段が上がる可能性もあるかもしれないですね」
■「アメリカで物が売れなくなると日本企業の業績が悪化してしまうことが懸念」
家計を直撃するかもしれない最悪のシナリオというのは一体何なのでしょうか。 藤山さんはトランプ関税により、日本企業の賃金ダウンや倒産が相次ぐ恐れがあると指摘しました。
【日本総研 関西研究センター所長 藤山光雄さん】「一番懸念されるのは、ものの値段が上がるという以上に、企業の業績が悪化してしまうんじゃないかということです。アメリカと取引をしている企業はたくさんありますが、アメリカ向けの物の値段が上がってしまうと、アメリカで物が売れなくなるということになる。
すると、日本の企業の業績が悪化してしまうことが懸念されると。特に日本は自動車産業が非常に盛んです。今、自動車は関税が25%かかっていて、大手のメーカーだけではなく、企業に部品を収めている中小企業もたくさんあります。
直接アメリカにものを輸出していなくても、そうした中小企業にも影響が及んできて、企業の業績が悪化すると。まさに賃金が上がらなくなる。今、ちょうど日本経済は賃金を上げることが出来るか、それが定着するかどうかの瀬戸際にあります。
このところで賃金が上がらなくなる、あるいは業績が悪化して倒産が増えてしまう、そこが一番懸念されるところかなと思います」
■中国の景気悪化で中国と取引する日本企業への影響も
また、米中の報復合戦の様子はどうなのでしょうか。
【日本総研 関西研究センター所長 藤山光雄さん】「もう一つ懸念されるのが、中国の景気、経済です。まさに米中報復合戦で、関税率が100%を超える、ものの値段が2倍に異常になるということなので、そうすると中国の景気が悪化するんじゃないかと。
アメリカと取引をしている日本企業だけじゃなく、中国と取引をしている日本の企業にも影響が出てくる。中国の景気が悪化すると、日本の物が売れなくなるので、そういったところで企業業績の悪化は、中国と取引している企業にも出てくるんじゃないかと」
中国の場合は主要取引先をアメリカから変えて、違う経済圏を作るという動きが出てきています。
■「トランプにちょっとやられた、つまり威圧です」と鈴木哲夫氏
アメリカのこの政策に対して、日本は交渉のため、赤沢経済再生大臣がアメリカに渡りました。もともとは閣僚級の協議の予定でしたが、会談10時間前に急遽、トランプ大統領が突然出席を発表するサプライズな展開がありました。
会談は50分間行われ、その中でトランプ大統領は「日本との貿易赤字は1200億ドル、日本円にして17兆円もある。アメリカの車は日本で1台も走っていない。日本との貿易赤字をゼロにしたい」と述べています。
一方、赤沢経済再生担当大臣は、「自身は格下も格下なので、話をしてくれたことは本当に感謝している。一連の関税措置の見直しを強く申し入れた」と述べています。
この交渉について、ジャーナリストの鈴木哲夫さんは、日本とアメリカの関係を「対等ではない」と述べたうえで、トランプ大統領が出てきたことについて「威圧」してきたという見解を示しました。
【ジャーナリスト 鈴木哲夫さん】「僕はいろいろ取材をして、日本政府の感覚で言うと、対等ではないですね。アメリカにトランプにちょっとやられた。そもそもトランプが出てくるっていうことに石破総理もびっくりしちゃったって言っているんですよね。このトランプ大統領の出方には色々見方がありますが、まず一つはまさに”かましにきた”。『おいおい、お前、日本よ、俺が出てきたんだぞ、わかってるだろうな』という脅しですよね。そういう威圧という。
違う見方としては、実は日本との交渉をうまく落としどころでまとめたいと。だから自分が出てきたんだと。これどっちかっていうと、楽観的な感じがするんだけど。
それから3つ目は、これからアメリカがいろんな国と交渉していく中で、日本を一つのモデルケースにして、ほかの国にも適用していくために出てきた。 3つくらい見方があるんだけど、私の感覚では1番目。つまり威圧ですよね」
■「トランプが非常に威圧的に出てきた、象徴が帽子だと思う」
また、赤沢経済再生担当大臣は会談でトランプ大統領から「アメリカを再び偉大に」と描かれた帽子をサイン付きでプレゼントされていました。
帽子をプレゼントしたトランプ大統領のこの行動について、鈴木哲夫さんは、トランプ大統領が威圧的に出てきたことを圧倒的に象徴していると述べました。
【ジャーナリスト 鈴木哲夫さん】「赤沢経済再生担当大臣が(トランプ大統領からもらった)帽子をかぶっている写真がありましたね。これがもう圧倒的に象徴していると思うんですよ。
例えば青木さん、僕が会って帽子をプレゼントするじゃない。そしたら必ずかぶるでしょ?そして笑顔で写真を撮るでしょ。かぶった瞬間に、もうトランプの下にいるってことですよ。こういうことからしても、トランプが非常に威圧的に出てきた、象徴が帽子だと思う。これからの交渉はアメリカペースで進めていくために、僕はトランプが出てきたと思っている」
(関西テレビ「旬感LIVEとれたてっ!」2025年4月21日放送)