いま、京都市内の由緒ある神社をめぐり、SNS上で「炎上」騒動が起き、「呪う」「叩き殺す」などというメールまで送られる事態となっています。
騒動のきっかけとなったのは1枚のイラスト。
一体何が起きているのか、取材しました。
■芸能の神様を祀った車折神社で炎上騒動が
京都市右京区にある車折神社。 芸能の神様、「アメノウズメノミコト」を祀った「芸能神社」があることから、多くの俳優やアーティストたちが訪れていて奉納された「玉垣」は4000を超えています。
この由緒ある神社をめぐっていま、ある炎上騒動が起きています。
【SNSへの投稿】「神職以前に社会人として最低。信じて祈った人たちに対する裏切りが過ぎるでしょ。お守りが家にあるのが恥ずかしくなってきた」
SNSに数多く並ぶ、批判のコメント。神社側に取材を申し込むと…
【車折神社 前田清和宮司室長】「電話を受けているそばから、切ったらまたお電話が鳴るというような状況で」
■巫女のイラストをSNSのアイコンに 炎上につながったのはイラストの「作り方」
神社には多い日で1日、50件もの電話が。さらに「呪われろ」という言葉がいくつも書かれたメールまで届いているといいます。
【車折神社 前田清和宮司室長】「こういった内容がずーっと続くような」
炎上騒動のきっかけ、それは1枚のイラストでした。
【車折神社 前田清和宮司室長】「こちらですね」
【車折神社 公式Xの投稿】「本日、車折神社公式Xのアイコン画像をリニューアル致しました!」(アカウントはすでに削除)
済桜の花びらが舞う中、神社の「社印」と共に描かれた、巫女のイラスト。神社側は先月18日に、このイラストをSNSのアイコンにしました。
それがなぜ「炎上」につながったのか。理由はイラストの「作り方」にありました。
■生成AIで作られたイラストに批判的な意見が向けられることも
【車折神社 前田清和宮司室長】「これは生成AIで作られたやつです」
急速に進化を続ける、「生成AI」。今では手軽に様々なイラスト制作を楽しめるようにもなっています。
一方で、生成AIに詳しい弁護士によると、批判的な意見が向けられることも多いそうで…。
【生成AIに詳しい増田雅史弁護士】「生成AIというのはそもそも過去に存在した創作物をベースにしてそれを学習して成り立っているところがある。過去の努力にただ乗りする形で新しいものが創作される。
イラストレーターの仕事を奪うのではないかと危機感に似た批判が多くみられるところではあります」
■チャットGPTを活用し写真をスタジオジブリの作風に変換 「ジブリへの冒涜」という声も
先月には、対話型AI「チャットGPT」を活用し、写真を「スタジオジブリ」の作風に変換してSNSに投稿する動きが話題に。
まるでプロのアニメーターが描いたかのような仕上がりに注目が集まった一方で、「ジブリへの冒涜だ」という声も寄せられ、おととい、ついに国会でも議題となりました。
【立憲民主党 今井雅人議員】「いわゆるジブリフィケーション、ジブリ風にするのが流行っているそう。著作権(法違反)にあたるのではないかという議論がありますけれども」
■大きく賛否が分かれる生成AI 「芸能神社として配慮が足りなかった」と車折神社
利用のあり方を巡って、大きく賛否が分かれる生成AI。
車折神社では、クリエイターとの縁が深いからこそ、「どうしてAIを支持するのか」という批判の声が多くあがったようで、芸能神社として「配慮が足りなかった」と話します。
【車折神社 前田清和宮司室長】「ここまで(事態が)大きくなるとは計り知れませんでした。勉強不足だった部分によって非常に多数の方にご不快な思いをさせてしまった。誠に申し訳ないと思っている」
神社から依頼を受けたAIイラスト作家からは、困惑の声が。
【神社から依頼を受けたAIイラスト作家】「車折神社さんがSNSのアカウントを消してしまうという騒動になってしまったので、そのあたりは申し訳なく感じている。100人が100個作っても違うものができる。『AIだけが問題視されるのか』とは思う」
■「叩き殺してやる」などのメールも 生成AIの急成長と同時に炎上騒動も増加
一方で、「批判の声」の範ちゅうを超えた内容も。
特定の人物からは、「炎で地獄に送ってやる」「叩き殺してやる」などと放火や殺人を示唆するメールが。
【車折神社 前田清和宮司室長】「ガソリンの絵を使って燃やしてやるぞとか、道具を使って殺してやる具体的になってきたかな。このような内容でメールが何十通もきている状況ですね」
警察が現在捜査を進めていますが、SNSの担当職員はこの騒動を受けて入院することになったということです。
【車折神社 前田清和宮司室長】「当社の職員たちに危害が及ばないかというところの心配、不安というのは非常に大きいです」
生成AIの急成長と同時に、こうした炎上騒動も増加してしまっているようです。
【生成AIに詳しい増田雅史弁護士】「(炎上は)非常に増えていると思います。生成AIを使うこと自体が悪だと考えている人からすると、創作の支援ツールを使っている人自体が、必ずしも何かの権利を侵害しているわけでもないのに攻撃される、といったことも起きている」
過熱する議論の裏で冷静な対応が今、求められています。
■「権利の保護と表現物の公正な利用のバランスが重要」と専門家
急成長している生成AIをめぐる問題について、この問題に詳しい増田雅史弁護士は、次のように指摘します。
・「〇〇風」ということだけでは著作権の侵害には当たらないと考える
・一方で精度設計は不十分で、「権利の保護」と、「表現物の公正な利用」のバランスをどう取るかが重要
■生成AIの進歩に規制が追いついていない現状
生成AIの技術の進歩に、規制が追いついていない現状があります。
【関西テレビ 神崎報道デスク】「国も何とか規制しなければいけないだろうということで、今動き出しているんです。ですが、権利を守るということで、ガチガチに規制をかけると、今度は使いにくいものになってしまうかもしれない。使いやすさと権利を守る、ちょうど良いバランスで規制しないといけないので、国も今そこで頭を悩ませているところです」
これからも幅広い議論が求められる問題だといえるのではないでしょうか。
(関西テレビ「newsランナー」 2025年4月18日放送)