大阪地裁が「横領の見立て自体は正しい。逮捕・拘留についても合理性を欠く事実はない」などとして訴え退ける 「検察なめんなよ」異例・特捜部の取り調べ映像が公開された「プレサンス元社長が冤罪で国に賠償求めた裁判」 2025年03月24日
大阪地検に逮捕・起訴され、その後の裁判で無罪になった大手不動産会社の社長が国に対して、損害賠償を求めた裁判で、国に賠償責任があるかどうかを裁判所が判断する「中間判決」で、大阪地方裁判所は訴えを棄却しました。 判決では、「横領の見立て自体は正しい。証拠についてより慎重に検討すべきものだったが、逮捕・拘留についても、合理性を欠く事実はなく、国賠法により違法とは言えない」と指摘していて、国に「賠償の責任はない」という判断をしています。
この裁判では、大阪地検特捜部の検事が「机を叩く」「大声で怒鳴る」という取り調べを記録した映像が法廷で流されるという異例の事態となっていました。
■「訴えを棄却」 判決言い渡し時の様子は
言い渡しの際、裁判長は、淡々と小さな声で早口で判決を読み上げました。
この裁判の原告で、「プレサンスコーポレーション」の元社長で、冤罪被害者の山岸忍さんは、いぶかしむような表示で裁判長を見ていました。また、山岸さんの弁護団は一瞬、呆然とした表情を見せましたが、裁判長の発言をメモに取っていました。
一方、国側は裁判が始まる前は厳しい表情でしてたが、判決が言い渡されると少し表情が緩み、法廷を出た通路では笑顔も見られました。
■ことの発端は…不動産会社「プレサンスコーポレーション」巡る横領事件
不動産会社プレサンスコーポレーションの社長だった山岸忍さんは2019年、学校法人との土地取引を巡って、21億円を横領したとして、大阪地検特捜部に逮捕・起訴されました。
山岸さんは、マンション用地として魅力的だった学校法人の土地を取得するため、学校が移転するための費用として必要だった18億円を法人に貸したつもりでしたが、特捜部の見立ては違いました。
山岸さんを学校法人の理事長や元部下らと共に横領事件を企てた共犯者と考えていたのです。
【山岸忍さん】「普通、横領されるってわかってて、(金を)貸す人いないですよね。例えばお金に困ってて、何かに困ってて、というのなら分かりますけど。私、当時会社の業績もうなぎ上りですし」
■刑事裁判の結論は「無罪」 山岸さんは「冤罪を生んだ捜査の実態」明かすため国家賠償請求訴訟を起こす
逮捕された山岸さんは一貫して関与を否定し続け、大阪地裁で下された判決は「無罪」。 検察はその後、控訴を断念し判決は確定します。
無罪判決の後、山岸さんは『冤罪を生んだ捜査の実態』を明らかにするため、国に対し、損害賠償を求める裁判を起こします。
この裁判の中で、冤罪を生んだ検察の実態が明らかになっていきました。
■「机を叩く」「大声で怒鳴る」取り調べをした検察官が法廷で追及される
今回の冤罪事件において最も大きな問題とされたのが、山岸さんの元部下に対して、検察官が「机を叩く」、「大声で怒鳴る」などした取り調べです。
その検察官らが証人尋問で法廷に呼ばれ、自身の取調べについて追及を受けました。
【山岸さんの代理人 秋田真志弁護士】「K氏(山岸さんの元部下)が真摯に向き合っていないから、そういう取り調べ(机をたたく、大声で怒鳴る)をしたんですか?」
【田渕大輔検事】「言葉だけでは進まないと思い、挙動も混ぜたほうが誠実に向き合っていることが伝わると思ったので」
また尋問を行った弁護士に対し、検事はこんな発言もしていました。
【田渕検事】「そんな怖い顔で聞かれても…」
【山岸さんの代理人 秋田真志弁護士】「怖い顔してないし、私とは距離もあるし、机もたたきませんよ」
■検察の取り調べ映像が法廷で流れる 異例の事態
特捜部は客観証拠が少ない事件の中で、山岸さんの元部下から何としても「山岸さんは横領に関わっていた」という供述を取調べで引き出す必要がありました。
検察の特捜部が独自に手掛ける事件は取調べが録音録画されています。
これまで決して公開されることはありませんでしたが、最高裁判所は去年10月、史上初めて映像の開示を命じたのです。
以下はその内容で、「冤罪を生んだ取り調べの実態」です。
<法廷で流された取り調べの録音録画より>
【田渕検事】「なんで嘘ついたの」
【K さん(山岸さんの元部下)】「嘘っていうか同僚…」
【田渕検事】「嘘だろ」「嘘をついて、まだ言い訳するなんて!ひどいだろ!」
【田渕検事】「どんな功績があるんだよ。どこにあるんですか」
【K さん】「ちょっと今、勘違いしました」
【田渕検事】「なめんじゃないよ!」(机を叩く)「いい加減なこと言っちゃダメだろ!なんでそんないい加減な説明するんですか!」
【Kさん】「そこは勘違いしてました」
【田渕検事】「勘違い?違うでしょ、場当たり的な弁解をしているだけじゃないか!」
検察官は山岸さんの元部下に対し机を叩き、怒鳴り続け、このような取り調べの結果、Kさんは検察側の見立てに沿った山岸さんの関与を認める供述をしました。
■なぜ「山岸さん逮捕」にこだわったのか 「最高検察庁から『この事件で一番得をしているのは山岸だ。山岸まで行くべきだ』と話が合った」と捜査に関わった検察関係者
一体なぜ、検察官はなぜここまで強引な取調べを行ってまで山岸さん逮捕にこだわったのか。
「プレサンス事件」の捜査にかかわっていた検察関係者が関西テレビの独自取材に明かしたのは、衝撃的なものでした。
【プレサンス事件の捜査にかかわった検察関係者】「主犯格の女性らを逮捕する段階では、大阪地検特捜部としては『山岸の逮捕は無理』、という判断だった」 「しかし、最高検察庁から『この事件で一番得をしているのは山岸だ。山岸まで行くべきだ』と話があり、特捜部で再検討した。方針は変わり、山岸逮捕までたどり着くべく、その材料を得るために元部下らから改めて話を聞くようになった」
明らかになったのは検察組織のトップ、最高検からの指示。
その末に起きたのが、山岸さんの関与をKさんに認めさせようとする、あの取り調べだったのです。
<法廷で流された取り調べの録音録画より>
【田渕検事】「失敗したら腹切らなきゃいけないんだよ」
【田渕検事】「命かけてるんだよ。検察なめんなよ」
これまで、異例づくめの展開となっていました。