新型コロナウイルスの無料検査事業で検査数を水増しし、大阪府から補助金およそ5億4000万円をだまし取った罪に問われている歯科医師の男らに対し、大阪地裁は実刑判決を言い渡しました。
被告の1人は判決前、関西テレビの取材に対し、「ほかの被告らは嘘の証言をしている。本当のことを話してほしかった」と訴えました。
■逮捕前には関与否定の2人も裁判で起訴内容認める
歯科医師の貝田勝之被告(64)と無職の竹本智一被告(48)、無職の中野友和被告(47)は2022年、大阪府が実施した新型コロナの無料検査事業で、検査数を水増しした虚偽の申請をして、大阪府から補助金5億4000万円あまりをだまし取った罪に問われています。
関西テレビは、逮捕前の被告3人を取材。
中野被告は関与をおおむね認めていましたが、貝田被告と竹本被告は否定していました。
去年7月から始まった裁判で、3人は起訴内容を認めましたが、貝田被告は「共犯者に事業を任せていたので不正がここまで大きくなっているとは思わなかった」と述べ、竹本被告側は「検査数の水増しは中野被告が独断でしたこと」などと主張していました。
検察側は先月、「だまし取られた金銭は国民が納めた税金であり、公金をだまし取ること自体言語道断であるが、その被害金額はきわめて高額で被害結果は重大」などと指摘し、貝田被告と竹本被告に対しては懲役6年、中野被告には懲役5年を求刑し、結審しました。
■中野被告 判決前の取材に「貝田先生と竹本には本当のことを話して欲しかった」
判決を前にした18日、関西テレビは大阪拘置所にいる中野被告を取材しました。
記者に対して、「貝田先生と竹本には本当のことを話して欲しかった」と訴えました。
(Q.求刑を聞いた時、率直にどう思いましたか?)
【中野友和被告】「求刑を聞いたときは、2人とそこまで大差が無かったんで信じられないと思った。求刑は、僕と(被告)2人とでは倍くらいの開きがあるんやろうなと思っていたので。1年しか差がなかったのでなんでやろうと」
(Q.いま、貝田被告と竹本被告に何を思いますか?)
【中野友和被告】「貝田先生は5割が嘘、竹本に関しては9割が嘘。水増しの指示は竹本で、『僕(中野被告)がやった』とか、『貝田が言った』とかはすべて嘘。 貝田先生も水増し分の金額も知っているはずで、知らんふりをしている。ちゃんと正しいことは話して欲しかった。判決を聞いて、2人と大差がなければ控訴しようと思っている」
【中野友和被告】「いま思えば、2人ははじめから僕に全部の罪をなすりつけようとしていたのかなと思う。2人には一生会わない」
(Q.犯行当時を振り返って何を思いますか?)
【中野友和被告】「悪いことやということで手を引ければよかったが、当時は離婚などマイナスなことが多く、つい手を出してしまった。その点は反省している」
■貝田・竹本両被告に「懲役5年」中野被告に「懲役3年6カ月」いずれも実刑判決
迎えた19日、判決公判で大阪地裁(山田裕文裁判官)は、貝田被告と竹本被告に懲役5年、中野被告に懲役3年6カ月の実刑判決を言い渡し、量刑の理由については以下のように述べました。
▼貝田被告(懲役5年) 「歯科医師の資格を有する貝田被告の参加がなければ本件詐欺は成り立ち得なかったもので、犯行を持ちかけた竹本被告とともに主犯といってよい立場にある」。
一方で、「不正な水増しの割合や規模については、事業運営を竹本被告らに丸投げしており、十分には認識していなかった」
▼竹本被告(懲役5年) 「本件詐欺の犯行を貝田被告に持ち掛け、事業から得られる利益は貝田被告と折半する計画であったことなどから、まさに主犯と評価されるべき」。
さらに、「水増し件数の増加は、中野被告の独断であるかのように弁解するが、中野被告は、竹本被告の指示で日々の検査数を明示された水増し分を踏まえて報告していたので、竹本被告が承知しないまま中野被告が勝手に水増し件数を増やすことは考えられない」
▼中野被告(懲役3年6カ月) 「不正な補助金申請の正確な件数にまで明確な認識をもって、各詐欺の犯行を実行したもので、犯行実現にとって不可欠だが、犯行への関与は従属的だった」などと述べました。
3人が大阪府からだまし取ったとされる金はおよそ5億4000万円。
判決文によると、3人が大阪府に被害弁償した額はあわせておよそおよそ8300万円です。