中居正広氏と女性とのトラブルをめぐる一連の報道などに関して、フジテレビは27日、2度目の記者会見を開きました。10時間を超える大変長い会見となりました。
28日放送の関西テレビ「旬感LIVE とれたてっ!」では、芸能界のトラブルやメディア対応に詳しい弁護士の河西邦剛さんが、一言で言うなら「成功とは言えなかった」とフジテレビの記者会見を厳しく評価しました。
■「経営陣の一掃は避けて通れないと思う」と岩田明子さん
会見を受けて、ジャーナリストの岩田明子さんは、「経営陣の一掃は避けて通れないと思う」と話しました。
【ジャーナリスト 岩田明子さん】「女性と中居さんとの事案については、非常にセンシティブなところで、第三者委員会に事実認定をしてもらわなきゃいけない部分もあるので、なかなか核心に迫ることが難しかった側面もあると思います」
【ジャーナリスト 岩田明子さん】「注目していたのは、信頼回復のためには経営陣の一掃というところは企業統治的に避けて通れないところだと思っていました。日枝取締役相談役も含めて。人事権に大きな影響を持っていたとなると、会社法上の解任はできない立場だったとしても、そこも含めてと第三者は見ています。
ただ一方で遠藤副会長が『第三者委員会の結論が出たところで、経営陣全員の責任が及ぶ可能性もある』という趣旨の発言をされたと記憶しています。その対象がどこまでいくのかというところは、ものすごく見られていると思いました」
会見の内容とは別に、岩田さんは記者の“腕”について注文を付け、「10時間半もかからず、もっと深掘りできたかも」と話しました。
【ジャーナリスト 岩田明子さん】「最近の傾向なんですが、記者会見での質問が“演説”になってしまったりする。1人でも多くの人が質問をできる環境にするのも記者の役割というか、お互いにできるだけ多くの答弁を引き出すのが記者の仕事だと思う。もうちょっと質問を収れんさせて追い詰めていく。短い質問でどんどん収れんさせていく腕をもう少し磨くべきだと感じました」
■河西弁護士「スポンサー企業が疑念を持っているのは“フジテレビの対応”」
「成功とは言えない」と話した河西弁護士は、改めて「個人の利益・権利よりも、会社の都合を優先したんじゃないか、というのが根本的な問題として問われている」と会見の感想を話しました。
【河西邦剛弁護士】「今スポンサー企業がどんどん離れていて、フジテレビや系列局ではCMがACに差し替わっている。なぜかというと、大企業がフジテレビにCMを出すことがリスクになっているというところがあります。会見は2カ月後の第三者委員会の調査結果が出るまでにCMを回復する最後のチャンスでもあったと思います。最後のチャンスであった昨日の記者会見において、社長・会長の退任という人事の刷新はありましたが、今回CMを回復させることはできなかったと思います」
【河西邦剛弁護士】「各企業がどこに対して疑念を持っているかというと、中居さんのトラブルとかではないと思います。どんな会社においても従業員や所属する人たちがトラブルを起こすことは日常的に起きています。それで今回のように大きく会社が傾くような事態に発展していかない」
【河西邦剛弁護士】「何が問題だったかというと“フジテレビの対応”です。火事の消し方というか、対応に非常に問題があったというところかと思います。中居さんの番組を継続したことであったり、特番を新たに中居さんで行ったことだったりとか、いわゆるフジテレビの都合を相手方女性の権利よりも優先したんじゃないか。つまり個人の利益・権利よりも、会社の都合を優先したんじゃないか、そう対応したんじゃないかというのが根本的な問題として問われているのだと思います」
■河西弁護士が気になった3つのポイント 1つ目「会社の勝手な判断で女性を保護」
河西弁護士は気になった3つのポイントがあるといいます。
1つ目のポイントとして、「会社の勝手な判断で女性の保護をしていないか?」
【河西邦剛弁護士】「港社長がしきりに『女性のプライバシーの保護』と言っていました。だからなるべく知っている人間を少なくしたかったと言っているんです。この言葉だけ聞いて違和感を持つ方は少ないんじゃないかと思います」
【河西邦剛弁護士】「ですが社長の判断としては間違っている可能性が非常に高いです。なぜかというと、大企業において、しかもフジテレビというテレビ局が、ルールを守る、コンプライアンスを守るということが非常に重要になってくるんです」
【河西邦剛弁護士】「例えば港社長は、コンプライアンス室に中居さんトラブルの件を報告していなかった。あと直属の上役である遠藤副会長に報告していなかった。中居さんのトラブルが当時編成担当専務であった大多さんから上がってきた時に、港さんが止めてしまっているんです。だから中居さんに対して、事情を知らない部署の方が特番をオファーしてしまったりしている。根本的にはひとつ、港社長のコンプライアンス軽視というのが見えてきたと思います」
会見場で取材したディレクターが質問しても、港社長は『女性の保護』としか答えなかったといいます。
【諸岡陽太ディレクター】「逆に言うと『女性の保護』という言葉以外の理由というのは聞かれなかったように思います。私自身も気になっていましたし、視聴者の皆さんも気になっていると思って、事案が発覚した後になぜ中居氏の番組が継続されてしまったのか質問したんですけれども、『女性の保護』という理由しか出てきませんでした。
さらに女性以外で何か理由があれば答えて欲しいと言ったんですけれども、『女性の保護』だと。確かに大切なことだと思いますけれども、その答えだけでは多くの人は納得できなかったのではないかという印象です」
■2つ目のポイント「“社員の関与”についての表現」
【河西邦剛弁護士】「フジテレビは社員Aというのは、中居さんと女性とのトラブルがあった2023年6月の食事会には関与していないと以前から言っていて、その主張を維持した。女性が会社に相談したということは、会社も認めているわけです。同時に中居さんと女性とのトラブルは性的なものという疑惑があるんですね」
【河西邦剛弁護士】「根本的な問題は何かというと、女性がなぜ会社に相談したか考えた時に、例えば男性とプライベートな関係でトラブルがあった時に通常会社に報告するか?会社に報告しようと思うということは、仕事そのものではないかもしれないけれども、仕事の現場であったりとか業務の延長であったりとか、そういう領域で起こったんじゃないのかという認識がある可能性がある。
ここについてフジテレビの方は、当該社員A氏は食事会には関与しないというかもしれないけれど、この辺りの前後についてどう関わってきたのか。これが今後の第三者委員会の調査対象になってくるかと思います」
【ジャーナリスト 岩田明子さん】「最初はフジテレビ側は完全否定でしたけれども、今回の会見で『延長線上のものである』とちょっと変化してきたわけです。記事を書いた文春側も、当初は『事案発生の食事会』と書いていましたけれど、修正を加えてきた。ここの部分の経緯をもう少しはっきりと、第三者委員会でどこまで詰められるのか、注視しないといけませんし、分かった時点で公表してほしいと思いますね」
【河西邦剛弁護士】「ひとつ言えることは、先月27日のフジテレビの一番初めの広報が、あまりよくなかったのかなと思います。それが昨日分かりました。なぜかというと先月27日においては、『当該社員は会の設定を含め一切関与していないことをお伝えします』というふうに、断定的に答えていたんです。その際に例えば女性側に対して確認したのかというと、A氏には確認しているけれども、両方の当事者に確認しないと分からないですよね」
【河西邦剛弁護士】「女性の方に確認しないまま『一切関与がない』と断定的な広報をしてしまっている。フジテレビとしては『A氏の方に確認したところ、関与はないとのことでした』というふうに止めないと、後々週刊誌報道でめくられてしまうリスクが常に続いてると感じます」
■最後3つ目のポイント「日枝取締役相談役の出席なし」
【河西邦剛弁護士】「昨日の記者会見において、『なぜ日枝取締役相談役が出席しないのか』ということについて、かなり質問が集中しましたが、出席者は当然予測できたんだと思います。ですが出席した役員4人は、日枝氏に対して出席することについて説得できなかったといえるかと思います」
【河西邦剛弁護士】「労働組合の方からも昨日の記者会見に出席して欲しいと、要望書の一番上に書いてあったんです。それでも日枝氏が出席しないとなれば当然批判は4人の役員の方に来る。それでも説得できなかった。そしてフジメディアHDの金光社長が、『影響力はある』という趣旨のことを言っていました」
【河西邦剛弁護士】「これはコーポレートガバナンス、会社経営との間では非常に問題になりうる可能性があります。会社経営というのは、人権侵害が起きないようにルールや法律に則って行う。その時にトップである会長や社長に影響力がある人がいるという状態になっている。これがフジメディアホールディングスなんだというところがあって、このコーポレートガバナンスに対して、世の中や各スポンサー企業が『十分な企業統治、会社経営ができているのかな』という疑問があるからこそ、日枝氏の出席が関心事項になっていたのだと思います」
代表権がないとか、業務の執行をしているわけではないという理由が話されていましたけれども、出席したほうが良かったということなのでしょうか?
【河西邦剛弁護士】「法律的にいうと、会社の方の説明は若干違和感があります。確かに業務を執行する取締役と業務を執行しない取締役というのがあります。ただ会社法上では、業務を執行しない取締役だとしても、他の取締役を監督しなければならない義務があります」
【河西邦剛弁護士】「ですので港社長が記者会見でカメラを入れないことを監督したのか?あと中居氏の番組の継続や打ち切りについての業務執行について監督したのか?港社長を監督したのかということです。
会社法上も監督責任が生じるので、会社側が言っていることは、会社側の主張・理論であって、それには違和感があります。スポンサー企業の考え、一般社会の考えとフジメディアホールディングスなりフジテレビとの間で若干溝があって、かいりがあると示していたかなと思います」
実際に会見場で取材した「とれたてっ!」ディレクターも「日枝さんに対する質問は一番場が荒れたテーマ」だったと話します。
【諸岡陽太ディレクター】「日枝さんに対する質問は一番場が荒れたテーマの一つだったと感じています。時には『日枝さん聞いてるんでしょう。答えてくださいよ』と記者が声を上げる場面があったりもしました。この点についてあるフジテレビ社員の受け止めは厳しく、『企業風土の根幹を築いた責任はあると思うので、他の経営陣とともにしかるべきタイミングで退くということは表明して欲しかった』と答えました。今後も日枝氏に対する目は厳しいものがあるのだと思います」
【河西邦剛弁護士】「なぜ労働組合が日枝氏に記者会見への出席を求めたのかといったら、多分役員の方も出席を説得できなかったように、誰も日枝氏に対して物申せない企業風土があることを、フジテレビの労働組合の方が一番近くで感じているんだと思うんです。その“誰もいない”中で記者会見に出てきてもらって、自分たちや経営陣の代わりに、記者に質問してもらいたいといった気持ちがあったんじゃないのかなと思います」
(関西テレビ「旬感LIVE とれたてっ!」2025年1月28日放送)