阪神・大震災をきっかけに生まれた歌「しあわせ運べるように」。
30年経った今も被災者に寄り添い、歌い続けられています。
「地震にも負けない 強い心を持って 亡くなった方々のぶんも 毎日を 大切に 生きてゆこう」
この歌いだしで始まる、『しあわせ運べるように』。
阪神・淡路大震災の犠牲者への祈り、そして復興への願いを込めた歌です。 作詞・作曲したのは、臼井真(うすい・まこと)さん。
震災当時は小学校の音楽教師でした。
神戸市東灘区にあった臼井さんの自宅は全壊。
■衝動的に書き記した言葉が歌に 震災1カ月後に避難所で初めて歌われる
目の当たりにした神戸の姿から衝動的に書き記した言葉が「しあわせ運べるように」となり、震災から1カ月後、避難所で初めて歌われました。
【臼井真さん】「弱い心になっている自分に、亡くなった方の分もどんなことがあっても、前を向いて生きていかなければという誓いでもあり、これを歌う子供たちにもそう思ってほしいし、聞いた方々にこどもが持つ小さな幸せも届いて欲しいと作った瞬間に思っていたことなんですね」
■さまざまな被災地で歌い継がれる
災害が起きた全国の被災地で、歌詞を変えながら歌い継がれてきました。
東日本大震災の被災地・宮城県では。
「津波にも負けない」
豪雨に見舞われた、熊本県では。
「豪雨にも負けない つよい絆を作り」
いまも神戸では様々な場所で。
「しあわせ運べるように」 30年、歌い継がれてきました。
■「聞きながら 生きていてよかったなと」遺族に寄り添った歌
歌は大切な家族を失った遺族にも寄り添いました。
阪神・淡路大震災で息子を失った、高井千珠さん。
今は大学で教師を目指す学生を教える臼井さんのゼミに招かれ、自身の経験を話しました。
【高井千珠さん】「大切な1歳半の息子をを守ることができず。なのに自分がケガを1つせず生き残ってしまったことは、母親としてこれほど苦しいことはなかった」
この日、臼井さんの教え子たちが「しあわせ運べるように」を高井さんに披露しました。
【高井千珠さん】「聞きながら、生きていてよかったなと心から思いました。臼井先生に出会って。30年の中にたくさんの方に出会って皆さんに支えられて生きてきました」
■「歌を通じて震災を伝える」ということ
臼井さんは、学生たちが歌を通して被災地と交流を続け、震災をどう伝えるのか見つめるきっかけになればと考えています。
この日は東日本大震災の後、福島県で「しあわせ運べるように」を歌い継いでいる「福島しあわせ運べるように合唱団」もゼミに参加していました。
【福島しあわせ運べるように合唱団のメンバー】「学んだりとか、何かを思って声に出す歌は、人を変える力があるんだなって」
【臼井さんのゼミの学生】「保育士を目指しているので、自分の言葉で証言者として伝えていければいいのかな」
「届けたいわたしたちの歌 しあわせ運べるように」
あの日に想いを寄せて。歌がつないでいきます。
■「地名を変えれば被災地の思いは同じ」と被災者「それがすごく幸せ」
「しあわせ運べるように」を作詞・作曲した臼井さんは17日、追悼のつどいが行われている神戸市の東遊園地から、各地で歌い継がれていることについて思いを語りました。
【「しあわせ運べるように」作者 臼井真さん】「作るつもりのなかった歌が、こうして30年も生き続けてきて。多くの人の心の中に届いたっていうことが、とてもうれしいなと思っています」
【newsランナー 吉原キャスター】「『震災に負けない、強い心を持つんだ』という、ご自身に言った言葉、その言葉がどんどんどんどん広がっていきましたね」
【「しあわせ運べるように」作者 臼井真さん】「本当に、負けそうだった自分を、『亡くなった方の分も生きなければいけない』っていう言葉で、奮い立たせたっていうような感じでした」
【newsランナー 吉原キャスター】「この歌が神戸からさまざまな被災地に届いて勇気を与える曲として広がっています。改めてどう感じますか?」
【「しあわせ運べるように」作者 臼井真さん】「30年間、いろんな被災地も行かせていただいたんですけども、被災地の思いは同じで。(歌詞の)『神戸』の地名をその被災地に変えると、あとはそのまま思いが同じだということを、各地の被災者の方に言っていただいたので、それがすごく幸せなことだったなと思います」
■「歌はいつまでも色あせず 何年経っても心の中に生き続ける」
臼井さんが指導する大学のゼミの学生たちは、震災の後に生まれた、震災を知らない世代として歌を通じて震災に向き合っています。
【臼井さんが指導するゼミの学生】「歌は人の心に深く訴えかける力があると思っていて。私は実際に震災を経験したわけではないんですが、この歌を歌うということで当時の復興への願いを次世代につないでいくことができるのではないかなと思っています」
改めて歌の持つ力どういうふうにお感じになっていますか。
【「しあわせ運べるように」作者 臼井真さん】「歌はいつまでも色あせず、ずっと何年経っても人の心の中に生き続ける。本当に不思議な力を持っているのだなと改めて思います」
(関西テレビ「newsランナー」2025年1月17日放送より)