神戸の街並み、高層マンションがあちらこちらに立っています。
神戸市でタワーマンションの空き部屋の所有者に対して、全国で初めて税負担を検討することが明らかになりました。
■神戸で建設中のタワマン「一番高い部屋は3億1099万円」
神戸市垂水区に建設中の地上32階建てのタワーマンション。
【野村不動産 西日本支社 菊池丈夫さん】「販売価格3億から3億1千万円のお部屋になります」
担当者はさらりと言いましたが、明石海峡大橋が見える、価格の一番高い部屋は、なんと3億円超え。間取りは1LDKから4LDKまであり、4000万円台から販売しています。
取材した記者も思わず、ラグジュアリーな気分になれたようで…。
【記者リポート】「このぜいたくな空間、さらに海を見渡せる景色がすばらしいです」
去年12月に1回目の販売を行いましたが、128部屋の募集に対し、300件以上の申し込みがあったそうです。
【野村不動産 西日本支社 菊池丈夫さん】「一番高い部屋が3億1099万円という金額帯ですが、そこも最終倍率8倍でした。子育てをこれからされる夫婦や、50代、60代、70代とかなり幅広い層の方にお申し込みいただいた」
■“タワマン乱立”に神戸市長が物申す
不動産専門のデータ会社「カンテイ」の調査によると、全国のタワーマンションの数は30年前と比べて約13倍に。
タワーマンションが乱立する状況に、1月10日、神戸市長が物申したのです。
【神戸市 久元喜造市長】「目先の人口増だけを考えてタワーマンションの新築競争するのはばかげています。法定外の税の創設を(有識者会議に)提言していただいた」
神戸市は、新たに空き部屋の所有者への課税、いわゆる『空室税』の導入について検討を始めると明らかにしたのです。
この課税についてタワーマンションの住人は…
【タワーマンションの住人】「結構痛手な気がします。うちも夫の転勤とかでマンションを貸すということになるかもしれないけど、(借り手がいなかったら)どうしようかな」
【タワーマンションの住人】「ここ意外に皆さん住んでいるので。賃貸も多いし。そんなにもうからないんじゃないですか、空室税」
しかし神戸市によると、住民登録がされていない「空き部屋」の割合が、40階以上では30パーセントを超えていて、高層階ほど居住実態のない部屋が増えています。
■「最悪、廃虚化につながる恐れ」
神戸・三宮にあるタワーマンションを所有していて、現在は空き部屋にしているという男性は…。
【空き部屋を所有 谷俊二さん】「私がいま海外で勤務していることが多いですから、日本の自宅が空いている。私も日本帰ったときに、できたら三宮の駅の近くに住むってことは非常に便利ですから、そういう面でも空けてもいいかな」
【谷俊二さん】「本当は貸す方が、家賃が入ってきていいんですけども、なかなか『退去してください』ってことは言えませんので、しばらく空き家の状態で置いておこうかなっていうのが本音です」
谷さんのような仕事の都合だけでなく、投資やセカンドハウスの目的で購入し、空き部屋になっている場合も多く、こうした空き部屋の増加で神戸市が懸念しているのが、“タワーマンションの廃虚化”です。
専門家たちで作る神戸市の有識者会議がまとめた報告書では、こう指摘されています。
【報告書より】「空き部屋増加の結果、修繕や解体の際の合意形成が困難になるおそれ」
「最悪の場合、廃虚化につながるおそれがある」
管理費や修繕費の回収に困り、将来、廃虚化する恐れがあるというのです。
■大規模修繕で積立金が約1億円足りなかったケースもあるという
本当にこうしたことは起きうるのか。
管理組合の運営やサポートを行う「マンション管理士」を取材すると…。
【マンション管理士 山崎一成さん】「日本人だけじゃなくて、海外の方が買ってるケースもあって、直接海外の方と連絡ってなかなか取れなくて。海外の方が住んでる割合が増えると、なかなか合意形成取りづらいんですよね、日本語通じない方がおられたり」
また、持ち主が高齢者で施設に入ったまま戻らず、連絡が取れなくなることも。
実際、大規模な修繕の際に積立金が約1億円足りなかったケースもあったといい、そこにはタワーマンションならではの理由があるといいます。
【マンション管理士 山崎さん】「エントランスからしてすごく豪華ですよね、それだけ使っている材料や資材がかかり、それが壊れれば修繕費用もかかります。
築12年ぐらいたってくると、大規模修繕工事を検討するんですけど、全てやると数億円かかる。2回目以降の大規模修繕となった時に、本当にそれを乗り切れるのか。そう思うと廃虚化に対する懸念というのは理解できる」
廃虚化を防ごうと提言されたいわゆる『空室税』ですが、所有者からは「地域によってはさらに空き部屋が増えるのでは」との指摘もあります。
【空き部屋を所有 谷俊二さん】「(空室税が導入されると)より便利なところだけを維持しておこうということになれば、セカンドハウス的に持ってらっしゃる方は、郊外の物件はいらないと。中心地が離れたところに空室が増えると思いますね」
批判の声もあがる『空室税』。神戸市は来年度から具体的な条例案などについて市議会で議論を進める予定です。
■「空室税で裁判起こされたら勝てるのか?」と菊地弁護士の指摘
タワーマンションの空き部屋への課税を神戸市が検討を始めるということです。
徴収した税収はマンション管理や防災・防犯に掛かる経費として使っていくということが提言されています。
“空室税”導入に向けた動きに対し、番組コメンテーターの菊地幸夫弁護士はこのように話します。
【菊地幸夫弁護士】「色んな問題があって、今は不動産買えばその固定資産税という形で税金を払います。投資用で買うのも自由。買ったマンションを空室にしとこうか、自分が住もうが、誰かに貸そうが、本来自由なわけです。
そこに税金をかけるのは、確かに『修繕費をどうするんだ』という問題がありますけど、ただタワーマンションじゃなくても、そんなに階数がなくても、大規模なマンションであれば、みんなの合意形成が難しいというのはいくらでもあります。なんでタワマンを狙い撃ちしてっていうのが。
例えば税金かけられた人が、『いや私払わない。裁判で争う。これは憲法違反の税金だ』なんて言った場合に、裁判で勝てるのか?」
■廃虚化のリスクは一般的なマンションにも
“空室税”導入は廃虚化のリスクを避けるための対策ということですが、リスクについては、一般的なマンションにもあるということです。
国交省によると、築40年以上のマンションは大幅に増加していて、2013年の41.5万戸、2023年には136.9万戸、20年後の2043年には463.8万戸となると予想されています。
こうした状況に対し、不動産コンサルティング業を行うさくら事務所の長嶋会長は「築年数がたった高齢者の多い都市郊外のマンションの方が、将来の修繕・管理の懸念が大きい。その対策の方が喫緊の課題では」ないかと指摘しています。
■修繕積立金36.6パーセントは不足…廃虚化の恐れも
一般のマンションの高齢化、老朽化といった問題について、関西テレビの神崎博報道デスクは「人口減少を考慮した計画を」と話します。
【関西テレビ 神崎博報道デスク】「日本全体としては、ものすごく少子化が進んでいる中で今、マンションは『建てたら売れる』と、ぽんぽん新しいものが建っていく。でも将来人口は減っていくので、その残ったマンションはどのようになるのかというと。
マンションに修繕積立金という形で、ずっと積立であると思いますが、これは将来、修理する時に必要なお金ですけど、実は現状でもすでに36.6パーセントは修理する代金に足りない、不足してる状態があります。
将来的に考えると、修繕積立金で賄えないのだったら修理できなくなる恐れもあります。そうすると、利便性が悪くなっていって、最悪の場合廃虚化する恐れもあります。“マンションが多すぎる中で、人口減っていく”。これをどう考えるのかというところも大事だと思います」
みなさんのお住まいのマンションでも積立金など十分に備えられているか、いま一度ご確認ください。
(関西テレビ「newsランナー」2025年1月16日放送)