■最新の手術ロボットその名も「ダヴィンチＳＰ」
高齢患者の増加や医師不足などさまざまな問題を抱える医療現場。先週、大阪で初めて最新のロボットを使った手術が行われました。
いま急速に進化を遂げる「手術ロボット」が作る医療の未来の最前線を取材しました。
先月、大阪市立総合医療センターに到着した大きな機械。運ばれた先は、手術室です。
これは、最新の手術ロボット、その名も「ダヴィンチSP（エスピー）」です。
【大阪市立総合医療センター婦人科・徳山治医師】「興奮していますし、うれしい気持ちでいっぱいです」
この病院にはもともと、従来型のダヴィンチが2台あり、がんの手術などで活用されてきました。
しかし年々、ロボット手術の数が増えてきているため、３台目に最新型が導入されたのです。
【大阪市立総合医療センター・西口幸雄病院長】「どんどん需要が増えて、一時は癌であるのに３カ月待ちという状況も出てきましたので、進行していってしまいますので。患者の精神的な負担もあるので早くしてあげたいということで」
■「腹腔鏡手術」を体験「素人ではムリ」
【吉原キャスター】「この奥にダヴィンチがあるので行ってみましょう」
そもそも、ロボットによる手術とはどのようなものなのでしょうか。従来型のダヴィンチを体験させてもらいます。
【吉原キャスター】「え、何個アームあるんですか？」
【徳山治医師】「4つあって、手の代わりになります」
徳山医師がこれまでに行ったロボット手術は700回以上、関西で初めて、婦人科のロボット手術の指導医として認定された名医です。
【徳山治医師】「（アームの）１つがカメラ、それ以外にアームが（患者の腹部に）3本入って、一人の医師がすべてを操って動かして手術をしていく」
患者の腹部に小さな穴を複数開けて4つのアームを挿入。医師はロボット本体から離れたところにある作業台に座り、アームの先についた物をつかんだり切ったりできる器具を動かして手術を行います。
まずは以前からある手術方法、腹部に開けた穴から細長い器具を入れて行う「腹腔鏡手術」の体験です。針を持ち上げて、ゴムに糸を通すという一見、簡単そうな作業ですが…
【徳山治医師】「実際、ここはお腹の中ですので、見えませんので、必ず画面を見ながら」
【吉原キャスター】「あれ…あれ…」
針をつかむのすら一苦労。
【吉原キャスター】「遠近感がまるでわからないですね」
なんとか針をつかむことができましたが、思うように動かすことができません。
体験開始から5分経過しましたが…
【吉原キャスター】「あぁダメだ、今これ血管傷つけましたよね。ギブアップしていいですか。難しすぎる…手だけではなくって肩くらいまで筋肉痛になりそう」
■ダビンチを使うと…「素人でも手術糸を結べた！」
そこで次は、ロボットを使って同じ作業に挑戦します。
【吉原キャスター】「あっすごい、3Dで立体的ですから、すぐ目の前にあるように感じますね」
作業台のモニターには、手術をする範囲が3Dで映し出されていて、直感的な操作が可能です。
【吉原キャスター】「すぐ持てた!」
先ほどはあきらめてしまった糸を通すことに成功しました！ さらに糸を結ぶことにも挑戦。
【徳山治医師】「そうです、そうです」
【吉原キャスター】「できました…ありがとうございます！」
直線的な動きしかできなかった腹腔鏡と違い、アームの先が360度自由自在に動き精密な操作が可能に。素人でも簡単な操作であれば短時間でできるようになりました。
ロボット手術によって、手術時間は短く、傷口は小さくすみます。
医師にとっても座って手術ができて、体への負担が減らせます。
【徳山治医師】「麻酔をかけている時間が少なければ少ないほど患者さんにとってメリットが大きいですから、そういう意味でも医師だけでなく患者さんにとってもメリットが大きい手術だと思っています」
■さらに進化した「ダンチSP」が登場！
そして先月末、新たに導入したのが、最新型の手術ロボット「ダヴィンチＳＰ」です。
この最新型、1台なんとおよそ3億円！従来型とどう違うのかというと…
これまでは、患者の腹部に複数の穴を開ける必要がありましたが、これは1つのアームに4つの器具が付いているため、傷口は1か所だけ。
これまでよりもさらに患者の体への負担が少ないということです。
【小児科の医師】「小さい傷でも体が大きくなるとともに傷も大きくなるので、傷が小さくて痛みが少くくて結果が一緒ならその方がいい。かなり大きな武器になるかなと思いますね」
最新ロボットの導入が決まってから、手術のスケジュールは次々と埋まっていて、徳山医師が担当する70代の女性患者の手術で初めて使用されます。
女性は子宮に腫瘍があり子宮全摘出が必要でしたが、術後の体への負担を心配していました。
【女性患者】「私の場合は100歳の母の介護を担っている、家族でやってるのでなるべく早く回復しないといけない」
大阪で初めてとなった最新ロボットを使った今回の手術。無事に成功し、女性は手術から5日で退院することができました。
【徳山医師】「ひとつの傷で手術できたので良かったです。手術をひとつの傷でやるってなった時、手をたたきました」
実は女性の夫も約5年前に従来型のダヴィンチで癌の手術を受けました。
今でも、お腹に残った複数の傷のケアが必要で、女性は、少しでも早く回復したいと、ひとつの傷で手術ができる「ダヴィンチSP」での手術を待ち望んでいたのです。
【女性患者】「（手術の傷は）こんなんですよ。おへその横が5センチくらい」
【患者の夫】「術後の回復が早いのがびっくりですね」
【女性患者】「本当に痛くないのよ」
■1カ所の切開で広範囲の手術が可能に
最新の手術ロボット「ダヴィンチSP」の最大の特徴は、患者の体に開ける切開部分が1カ所で済むことです。これにより、患者の身体的負担が大幅に軽減されるとともに、手術可能な範囲も拡大すると従来の手術方法を一新する可能性を秘めています。
ジャーナリストの岸田雪子氏は「患者にとっても非常に有益性が高いものだと期待できます。私の父は80代でがんになり、従来の切開手術を受けました。術後の入院が長引き、結果的に認知症も進行してしまいました。QOL（生活の質）にも影響が出てしまったという後悔があります」と自身の体験も交え期待を寄せます。
一方で高額な導入コストが普及の壁にもなっています。
大阪市立総合医療センターの西口院長によると、本体価格は約3億円にも上り、さらに年間の維持費も数千万円かかるといいます。
加えて、ほとんどの手術で診療報酬の加算がないため、病院の経済的負担が大きいことも普及を妨げる要因となっています。
関西テレビの加藤さゆり報道デスクは「ダヴィンチはアメリカ製で、現在ほぼ独占状態にあります。そのため、価格競争が起きにくい状況にある」とその背景を説明します。
医師の負担軽減と技術革新への期待。
従来の腹腔鏡手術では、医師は重い器具を長時間操作する必要があり、肉体的・精神的負担が大きく、医師の負担軽減にも大きな効果が期待されます。
高額な導入コストという課題に対し、日本発の技術が解決の糸口となる可能性があります。
日本にも『hinotori』という手術支援ロボットがあり、これは非常に低コストで開発されているのです。
日本製の参入により、価格競争が促進され、結果的に導入コストの低下につながれば患者にとっても選択肢が増えることになります。
(関西テレビ「newsランナー」2025年1月15日）
