13年前、京都府亀岡市で無免許だった元少年が運転する車に、命を奪われた当時7歳の女の子。
今月20歳の誕生日を迎えるはずでした。 女の子の親友が、13日に行われた成人の日の式典に「一緒に連れていきたい」と、晴れの舞台に臨みました。
■生きていれば晴れ着に身を包んでいた女の子
13日、京都府亀岡市で行われた「はたちの会」。
多くの若者が晴れ着に身を包んで参加する中、女性が持っているのは小さな女の子写真。
小谷真緒ちゃん(当時7)。
生きていれば式に出席するはずでした。
■無免許居眠り暴走事故 命奪われた7歳の女の子
2012年4月、亀岡市で小学生の集団登校の列に車が突っ込み、当時小学2年生の小谷真緒ちゃん、そして3年生だった女の子と、付き添いをしていた妊娠中の女性が死亡。
7人が重軽傷を負いました。 車を運転していた当時18歳の元少年は無免許のうえ、友人と一晩中遊んだ末の居眠り運転でした。
■「おねだりしてくれたんかな。寂しい」と父 届かない成人式の案内
真緒ちゃんが亡くなってから13年。 今月17日は20歳の誕生日でした。
【小谷真緒ちゃんの父・真樹さん】「明るい子やったので本当に。明るくて何でも意見をはっきり言う、真緒から20歳やし」
「『こんなんするわ』とか、『こんなの買って』とかみたいな感じで、おねだりみたいなのがあったんかなって思って。寂しいような気持ちではいます」
父・真樹さんはこれまで苦しい気持ちを抱えながら身勝手な運転による死亡事故を減らそうと小学校などで講演活動を実施。
しかし、この1年は特に複雑な心境だったといいます。
【小谷真緒ちゃんの父・真樹さん】「20歳を迎える会で、真緒が出席ができない以上どうしたもんかなというのが、ずっと自分の心の中であって」
「会場まで行って真緒が見るべきはずの景色を見ようかなぐらいに思ってたんやけど、やっぱり案内が来るわけでもないし」
■『友達やから当たり前じゃないですか』娘の親友の言葉
子供が成長していく過程で行われる入学式や卒業式。
事故のことや、娘の死に対する周囲の風化について真樹さんは葛藤を抱えていましたが去年、真緒ちゃんの友人から思いもしなかった連絡がありました。
【小谷真緒ちゃんの父・真樹さん】「親として何もやってあげられへんっていうところの悔しさ悲しみっていうのはずっと持ってたはずなのに『友達やから連れて行くの当たり前じゃないですか』って言ってくれた言葉で、真緒ももちろん喜んでいるんやろうけど、真緒以上に喜んでしまったなっていうぐらい、ありがたいなって」
■保育園、小学校 ずっと一緒だった親友
大石かやのさん。
真緒ちゃんと同じ保育園と小学校に通っていました。
かやのさんが大事に保管しているアルバムの写真に写る真緒ちゃん。
【真緒ちゃんの親友・大石かやのさん】「うわー懐かしい、これ(寄せ書き)真緒ちゃんのところに付箋ついている」
■「ずっと1人で泣いていた」突然奪われた親友の命
真緒ちゃんが亡くなった日、小学校から帰ると親から事故のことを伝えられました。
【真緒ちゃんの親友・大石かやのさん】「『大事な話があると、真緒ちゃんが』と言われて。学校にドクターヘリが来たりしたのは知っていたから、それが真緒ちゃんやったんやって知って、めっちゃ涙しか出なかった、ずっと1人で泣いてました」
■「会いたい」親友に語り掛けるように綴った「交換日記」
幼いながらに親友を亡くし苦しみ続けた思い。
真緒ちゃんが亡くなってから交換日記風のノートを書き始めました。
学校の時間割や運動会の様子など何気ない日常の出来事を真緒ちゃんに語りかけるように綴っていました。
【真緒ちゃんの親友・大石かやのさん】「会いたいのに会えないし、話したいのに話せないのをノートで話したいなって。忘れないように自分の中でも」
■親友と一緒に前撮り
かやのさんは成人の日を迎えるのを前に真緒ちゃんと一緒に写真を撮影。
そして「はたちの会」に一緒に参加することを決めました。
【真緒ちゃんの親友・大石かやのさん】「亀岡で生まれて亀岡で育った友達やし、式に出られない意味が分からない。みんな友達と一緒に出席するものやし。真緒ちゃんと一緒に『久しぶり!』みたいな感じで、みんなで集まりたい気持ちですね」
■一緒に「はたち」
真緒ちゃんの写真を手に、亡き親友と一緒に「はたちの会」へと向かった、かやのさん。
かやのさんは、ずっとずっと真緒ちゃんの写真を大事そうに抱えていました。
そして、真緒ちゃんと一緒に同級生とたくさん写真を撮りました。
■何気ない話 したかった親友
【真緒ちゃんの親友・大石かやのさん】「一緒に旅行に行ったりとか、プリクラ撮ったりとかも一緒にできたやろうし、『学校がきょう楽しくなかった』とか、『こっちの学校ではきょう体育祭やったで』とか、お互いに話せる関係やったんやろうなと思いながらノートを続けてましたね」
■親友の父に 届けたアルバム
かやのさんは、「はたちの会」で真緒ちゃんと友だちと一緒に撮ったたくさんの写真を貼ったアルバムを持って、真緒ちゃんの自宅を訪ねました。
【小谷真緒ちゃんの父・真樹さん】「あー!おめでとう、ありがとうわざわざ。ごめん忙しいのに」
■笑顔の同級生と一緒に映る娘
【真緒ちゃんの親友・大石かやのさん】「おめでとう、あとこれ(アルバム)」
【真緒ちゃんの父・真樹さん】「こないだの(写真)?」
【かやのさん】「と、きょうのもあるんで」
真緒ちゃんのお父さんに手渡したアルバム。
そこには、笑顔の同級生と一緒に映る真緒ちゃんの姿がありました。
■「ほんまにありがとう」父の目から溢れた涙
【真緒ちゃんの父・真樹さん】「きょうのも?。うそやん、うわっめっちゃいるやん、みんな」
【かやのさん】「みんなと撮ってきましたよ」
【真緒ちゃんの父・真樹さん】「ありがとう。いやー嬉しいわ、こんなことなると思ってなかったからさ」
真緒ちゃんのお父さん、真樹さん。
涙が溢れました。
【真緒ちゃんの父・真樹さん】「絶対真緒も喜んでるやん。こんな形で命奪われてるんやけど、真緒にとっては本当に幸せで楽しい人生やったんやなと、事件後初めて感じさせてくれて『ほんまにありがとう』って感謝の気持ちも思いっきりありますね」
「みんなの中に混ぜてもらって、体はないけど気持ちの面で心の中で一緒に20歳を迎えさせてくれたのは親として嬉しいなと思っています」
■「会いたい」願った13年
【かやのさん】「大事な友達と一緒に成人式に行くのは楽しかったし、みんなで集まる場所に一緒に行けたのはうれしいです」
【真緒ちゃんの父・真樹さん】「真緒もそんなん(振袖)着てたのかな」
【かやのさん】「いやーどうやろう何か…。ここ(襟元に)のフワフワつけてそう」
【真緒ちゃんの父・真樹さん】「つけてそうやな。それはつけてそうやな。ほんまにうれしいねん、ほんまにうれしいねん。たぶん合ってへんけど言葉と気持ちが、こんなんして笑って迎えられると思ってへんかった」
「会いたい」と願い、過ごしてきた13年間。
新しい思い出の1ページが、ようやく増えました。
(2024年1月14日 関西テレビ「newsランナー」)