三菱UFJ銀行の元行員が、貸金庫の中身、十数億円相当を盗んでいた問題。 チェック体制を欺く「手口」が明かされ、関西を拠点にする銀行でも、同様の事案がないか調査が行われています。
【街の人】「今までに横領とかはあったけど、そんなことができるとは思ってなかった」
【街の人】「信頼を裏切られたという思いです。どういうことやねん!?としか言えない」
大阪の街の人から聞こえてきた怒りの声。
その理由は…
【三菱UFJ銀行 半沢淳一頭取】「信頼・信用という、銀行ビジネスの根幹を揺るがすものであると、厳粛に受け止めており、お客さまや関係者の皆さまに心よりおわびを申し上げます」
三菱UFJ銀行の半沢頭取が謝罪したのは、元行員がおよそ60人の資産を盗んだ事案について。 被害は、時価総額で十数億円にのぼります。
■「貸金庫の中身が違う」問い合わせで発覚 “巧妙な手口”と“ずさんなチェック”
きっかけは、ことし10月、「貸金庫の中身が違っているのではないか」という顧客からの相談でした。
銀行が調査したところ、東京都内にある2つの支店で、2020年4月からことし10月までの4年半にわたり、支店長代理の女性(当時40代)が、無断で貸金庫の扉を開け、現金や貴金属などを盗んでいたことがわかりました。
会見で明らかになったのは、巧妙な手口とチェックのずさんさでした。
【三菱UFJ銀行 半沢淳一頭取】「行為者は貸金庫の管理責任を担う立場にあり、支店で保管している予備鍵を不正に利用して、お客さまの貸金庫を無断で開け、現金等のお客さまの資産を窃取しました」
窃盗があった支店では、貸金庫を開ける際に、「銀行の鍵」と「顧客の鍵」の2つが必要でした。
行は紛失に備え、顧客の鍵のスペアを作成。
スペアキーは専用の封筒に入れ、客と管理者の印鑑で割り印をし、銀行の金庫で保管されていました。
元行員の女性は、このスペアキーの管理者で、大胆にも封をあけて鍵を使い、窃盗を繰り返していたのです。
半年に1回、子会社がスペアキーの保管状況をチェックする体制がとられていましたが、これもすり抜けていました。
【三菱UFJ銀行 向井理人執行役員】「封筒が破封、破れていないか確認すると書かれているが、どのように確認するかが、決められていなかった」
(Q.割り印の照合は?)
【三菱UFJ銀行 向井理人執行役員】「それは、してございません」
■「同じような鍵管理の銀行は少なくない」と元メガバンク支店長は指摘
メガバンクの支店長の経験がある菅井さんは、同じような方法でスペアキーの管理している銀行は少なくないと指摘します。
【元メガバンク支店長 菅井敏之さん】「『えっ!?うちもあるかも』って、肝を冷やしてるところはあると思う。(鍵を)本部管理にしないと、また起こり得るなっていうふうに、恐らくほとんどの銀行が思ってる」
■貸金庫の特性「盗まれたことに気付きにくい」 “預けた本人しか分からない”“証明もできない”
また、窃盗の背景には「盗まれたことに気付きにくい」という貸金庫の特性もありそうです。
【貸金庫で窃盗被害 安達元一さん】「あれ!?何にも入ってねえ。空っぽだと思って。何が起きたみたいな」
安達さんは2019年、三菱UFJ銀行とは別の銀行の貸金庫で、現金がないことに気が付きました。
中を確認したのは2年ぶり、さらに…。
【貸金庫で窃盗被害 安達元一さん】「貸金庫って、中に何を入れたかって別に申請もするもんでもないし、入れた本人しか分かんないんで、証明もできないから、(銀行から)『安達さん本当に入れたんですか、どっか出して忘れてるんじゃ』と疑われるなって思った」
しかし、2カ月後…。
【貸金庫で窃盗被害 安達元一さん】「(銀行から)『うちの行員が盗んでいました。申し訳ありませんでした』と連絡がありました。銀行員が預けたお金盗んじゃダメでしょ」
■関西に拠点を置く金融機関は一斉点検を実施
三菱UFJ銀行の事案を受けて、関西に拠点を置く金融機関は…。
【関西に本店を置く銀行】「まさに今、貸金庫の一斉点検をしている。記者会見で分かってきたこともあるので、不正防止のための対策を検討していきたい」
【関西にある信用金庫】「客から問い合わせが来ている。一斉点検を終えて、窃盗被害はなかった。鍵の管理体制も見直した」
■民間の貸金庫では鍵は客が管理 「信用してもらうには全て渡した方が」
鍵を悪用した窃盗をどう防ぐのか。 兵庫県にある民間の貸金庫を取材すると…。
【トレジャーセーフティー美野田勇二代表】「鍵はスペアキーを含め2本あるんですけど、これは2本ともお客さまにお渡ししてという形になります。弊社は、鍵に関しては持ってない。
こちらの貸金庫では、鍵の管理を会社側は行わず、スペアも含め利用客に任せています。弊社のスタッフが金庫開けられるとなると、お客さまに信用していただけない可能性もあるので。プライベート空間という形で借りていただいている中で、人間ですから、信用していただこうと思うのだったら、全てお渡しする方が」
三菱UFJ銀行によると、元行員は盗んだ金を「投資にまわした」と供述。 他にも複数の顧客から、「盗まれた」という声が寄せられていて、被害が拡大するおそれがあるということです。
(関西テレビ「newsランナー」2024年12月18日放送)