12月18日朝、和歌山県串本町から打ち上げられた、民間ロケット「カイロス2号機」。
打ち上げは、成功したかと思われましたが、上空100キロを超えたところで、中断されました。
一体何があったのでしょうか?
好天に恵まれた18日、和歌山県串本町の海水浴場で大勢の人が待っていたのは、民間では国内初となる人工衛星の軌道投入を目指すロケット「カイロス2号機」の打ち上げの瞬間でした。
【大阪から見に来た人】「(Q.ここに来るのは何回目?)3回目。きのう仕事が終わってからこっちの方に来て白浜で泊まったんですけど」
【大阪から見に来た人】「私ね3つのお願いのうちの1つが、ロケットを見るということなんですよ。それが今日かなうかどうか」
みんなの大きな期待を背負ったカイロス2号機です。
「カイロス」を巡っては、ことし3月、初号機が打ち上げられましたが、発射から5秒後に爆発。
【見に来た人 3月】「え。残念…悲しいな、悲しいな」
あれから9カ月たった12月14日、リベンジを目指して「カイロス2号機」が打ち上げられることになり、串本の町中が盛り上がっていました。
【見に来た人(12月14日)】「カイロス元気に飛んでね」
見学会場には、大勢の人が集まりましたが、結局、強風の影響で土曜日、日曜日と連続で延期が発表されました。
【見に来た人 母】「2号機飛ばないんやて、きょう」
【見に来た人 子】「えーあしたは?」
【見に来た人 母】「分からへん、日にちまだ決まってないんやって」
地元・串本でシーカヤックの体験ができるビーチハウスでは、打ち上げに合わせて国の名勝・天然記念物の「橋杭岩(はしぐいいわ)」周辺で、ロケットを見学できるツアーを開催していましたが…
【ビーチハウス・ラパン 青木寛代表】「(15日は)9人くらい来てまして。3月からのリベンジ組ですね。1回目延期のときはお金もらいましたけど、2回目の15日の時は無料で。お金もらうためには次々と打ち上がってほしい」
打ち上げに期待を寄せる一方、“複雑”な思いを寄せる人も。
串本町にあるホテルでは、去年12月と比べかなり稼働率が上がり、17日は平日でも満室でした。
【大江戸温泉物語 南紀串本 藤本裕貴支配人】「去年の同時期、同曜日を見ても満室になるようなことはなかったんで」 「(Q.延期で悲しい反面、いい効果も?)あんまり喜べないですけど、(効果は)あるかと思います」
■カイロスを見守り続ける「串本の三姉妹」
9カ月前、打ち上げ場所近くで見守っていた「串本の三姉妹」がいます。
【三姉妹 (ことし3月の打ち上げ時)】「お、来た。上がった、上がった」「落ちたん?」「落ちた!」
12月14日には、お手製の「カイロス2号機」を立てたクリスマスケーキを用意して見学。
15日にもごちそうを用意して、骨折で入院していた次女・芳子さんも無事退院し、三姉妹で待ち望んでいました。 しかし…
【三女・康子さん(74)】「中止やて。わーん。もう次こそ絶対に…、今度何しよ?すき焼きかね?頼むから上がってください」
【長女・初子さん(87)】「(つくる)メニューなくなりますよ」
そして迎えた18日…
【三女・康子さん】「(犬に向かって)ロケット打つから静かにするの」
打ち上げを期待し、この日は「豚汁」を用意してその時を待ちます。
【三女・康子さん】「(打ち上げ実施判断のニュースを見て)打ち上げ『ゴー』や。打ち上げゴーらしいよ」
そして、ついにロケットが打ち上げられ…
【三姉妹】「すごい、すごい、すごい」
打ち上げ場所近くにある小学校の屋上では…
【打ち上げを見て泣く人】「うれしい」
【子どもたち】「バンザーイ、バンザーイ」
あのシーカヤックのツアーも無事、開催されたようです。
歓喜に沸いた「カイロス2号機」の打ち上げでしたが…
【会場アナウンス】「飛行中断措置が取られました」
三姉妹は…
【三女・康子さん】「この本体が爆発したん?」
【三女・康子さん】(Q手に持っている模型のようなものは何?)「これ“カルロス”やんか」
見学会場でも…
【大阪から見に来た人】「良かったです。すごく感動しました」
【大阪から見に来た人】「(Qかなえたい夢の1つと言っていたが?)そうです。涙を流す人ではなかったんですけど、今日はさすがに涙が出ました」
その直後に飛行中断が発表され…
【見に来た人】「残念やね。打ち上げは良かったんやけどね」
■「今後もスペースワンは失速することなく打ち上げサービスの実現に向けてまい進」
18日午後2時半過ぎからスペースワンが記者会見を開きました。
【スペースワン 豊田正和社長】「今回のミッションは、衛星を軌道に投入させるという最終段階まで達成させることができませんでした。このことに関し、衛星を託してくださったお客様、打ち上げにご協力いただいた関係者の皆様に、おわびを申しあげます」
「(7つのステップのうち)ステップ3まで達成し、ステップ4の段階で、リフトオフ(打ち上げ)から約3分後に、飛行中断の措置が取られました」 「今後もスペースワンは失速することなく、小型ロケットによる打ち上げサービスの実現に向けて、まい進させていただきます」
会見によると、打ち上げから1分20秒が過ぎた段階で最初の異常があり、その後3分過ぎに地上から100キロメートル以上の高さのところで飛行中断措置が取られたということです。
【スペースワン 遠藤守取締役】「(想定では)南方向に飛んでいくんですが、西側に飛行が徐々にずれてまいりました。計画していた飛行経路のあらかじめ設定している限界線を超えたために、飛行中断が行われたと考えております」 「(Q.回っていたのは?)1~2段分離の前の状態ですね。姿勢がおかしくなって、最終的にはぐるぐる回っているような状態になっていることが想定されます」
飛行中断で破壊された機体については、紀伊半島の南方数百キロメートル先に落ちていると考えられ、現時点では被害が発生したという連絡は入っていないということです。
■「本当のバンザイをみんなでもう一度したい」と串本町長
和歌山県串本町の田嶋町長は。
【串本町 田嶋勝正町長】「本当に改めてロケット技術の難しさというのを、今回も感じたところであります。今日来ていただいた皆さんと一緒にバンザイをしましたが、それは成功のバンザイとはなりませんでした。次、皆さん方に来ていただくときには、本当のバンザイを、みんなでもう一度したいなと思います」
今後の宇宙への夢は、「カイロス3号機」に託されることになります。
ヘリコプターに搭乗して空からカイロス打ち上げの様子をリポートした田中友梨奈アナウンサーは、間近で見た印象を次のように話しました。
【田中友梨奈アナウンサー】「宇宙映画を見ているような迫力で、小型ロケットといっても、ヘリの窓越しに見るロケットのスピードはもちろん、火力もすごくて、すぐに自分の目で追えなくなってしまうほどでした」
結果的にミッション達成できませんでした。日本政府としても期待するところは大きかったのでしょうか?
【政治ジャーナリスト 青山和弘さん】「日本政府は、宇宙戦略基金というものを作って、10年間で1兆円のお金を積んでいるんです。2030年代前半までに、民間を含めて年30機のロケットを打ち上げると目標にしているんです」 「ただアメリカの、例えばイーロン・マスクさんのスペースXと今回打ち上げしたスペースワンの企業価値・企業規模を見ると、スペースXはなんと50兆円の企業価値。スペースワンは大体400~500億で全然違う。1000倍ぐらい違うわけです。そういう資金面で大変なんですけど、官民みんなで応援して、ビジネスにもつながるし、日本の安全保障にもつながるんで、応援していきたいと思いますね」
スペースワンは原因を究明して、できるだけ早く3号機を打ち上げたいということで、次のチャレンジに期待が集まります。
(関西テレビ「newsランナー」 2024年12月18日放送)