関西屈指の観光地・奈良で鹿による事故が急増しています。
さらに京都・福知山市では鹿に襲われた可能性がある死亡事案も発生。
その危険性と対策に迫りました。
【赤穂雄大記者】「奈良公園に来ています。多くの外国人観光客が鹿と触れ合っているのですが、時折こちらの鹿のようにまだツノが生えた状態で歩き回っている鹿もいます」
外国人観光客からの人気が高い古都・奈良。 コロナ禍も明け、観光業にも活気が戻ってきたこの場所で今、これまでにはなかった深刻な事態が起きています。 奈良県などによると、鹿にツノで突かれるなどしてけがをする事故が、9月は43件に上り、去年の同じ時期のなんと2.5倍。 中には救急車で搬送されるような重篤なけがもあったということです。
■京都府では鹿のツノで刺されたことによるとみられる死亡事故
さらに、京都府福知山市では…
【司紫瑶記者】「9日の夜、こちらの田んぼで男性が倒れているのが見つかり、その場で死亡が確認されました。男性のそばには雄のシカがいたということです」
亡くなったのは福知山市に住む68歳の男性。 胸から血を流して倒れていて何かが刺さったような傷があったことから、警察は鹿のツノで刺された可能性があるとみています。
【近隣住民】「僕の娘が仕事から帰るときに、(事故の)当日の昼間、フェンスの中入ってる鹿がウロウロしてたと言ってた」
11日も現場周辺では…
【司紫瑶記者】「まわりに民家もあるような場所ですが、鹿5頭の群れが見えます」
11日朝、地元の猟友会などが現場をパトロール。被害者に黙とうも捧げられました。
【京都府猟友会 西村義一会長】「住民の人はこれからなかなか大変だと思います。対策を考えていかないといけないと思います」
■角に触れる人も
今の時季の雄のシカは、春頃から伸びてきたツノが大きくなるタイミングで、さらに発情期も重なるため非常に危険。 取材班は、例年にないペースでけが人が相次いでいる奈良公園でその実態を調査しました。
【赤穂雄大記者】「あのように、せんべいを持った外国人観光客に、ツノを押し当てような形で、せんべいをねだる鹿が見られます」
ツノの生えた鹿の方が、写真などを撮った時に“映える”からなのか、次々と集まってくる観光客。 奈良県としては、この時季の雄シカには不用意に近寄らないように呼びかけていますが、中にはツノに触れたり、つかんだりする人もいます。
また、この時季、いたるところで見られたのは、発情期の鹿同士が頭をぶつけ合って、押し合う光景。 気の立った状態の鹿は突然、走り出したり人を襲ったりする危険性を常にはらんでいます。
■取材中 男の子が鹿のツノで危険な目にあう場面も
取材中にも非常に危ない場面に遭遇しました。 男の子がツノの生えた若い雄のシカに餌をあげている時のこと…
【男の子】「うわ、痛った」
突然、鋭い角を男の子のおなかへ向けて突進。 幸いけがはなかったようですが、少し位置がずれていたら大きなけがにつながる可能性もありました。
被害の拡大を食い止めるため、鹿の保護活動を行う「奈良の鹿愛護会」や県は、観光客などに対する呼びかけを10日から強化しました。
・妊娠で気が荒くなった雌ジカが増え、危険が予測される場合は「注意」
・雄ジカの角が伸びるなど、極めて危険な状況は「厳重注意」
・「厳重注意」より危険性が高いと判断した場合は「警報」 の3段階に分けた情報を各地で掲載しています。 また、危険を減らすための取り組みは他にも…
8月のお盆明けごろから雄ジカの角切りを開始。今年は例年よりペースを早めて実施しているということです。
長年、奈良の鹿と向き合ってきた愛護会は、今年のけが人急増について、何が原因と考えているのでしょうか。
【奈良の鹿愛護会 山崎伸幸事務局長】「海外からの観光客の方がたくさんお越しになっている」
【奈良の鹿愛護会 山崎伸幸事務局長】「外国人の方は何かあの鹿に触れる、鹿が安全な動物であるというような、認識をお持ちであるようで。具体的にはですね、外国の方は自らお子さんをツノジカの方まで近くに連れて行ってですね。何か触るような仕草をしたり…」
奈良公園の鹿は、あくまで危険のある野生動物にも関わらず、非常に距離の近い外国人。
さらに、愛護会が抱える深刻な課題も影響していると取材に対して明かしました。
【奈良の鹿愛護会 山崎伸幸事務局長】「愛護会の方も求人は出してるんですけどね。なかなか人材が集まらないというような状況もあってですね。ギリギリのような状態で」
【奈良の鹿愛護会 山崎伸幸事務局長】「今年のツノジカの数が多いとことはもう間違いないと思います。例年300頭の鹿のツノを切れば、ほぼ終了なんですが、11日時点で330頭超を切っておりますけれども、まだ100頭あまりは公園内にツノのある鹿がおりますので。非常にこれまでにない多忙さというか、ちょっと職員は疲れてしまっている状況です」
鹿の増加に相反する愛護会の人員不足。県としてはこの状況をどう捉えているのか聞くと…
【奈良県観光局 奈良公園室 牧田孝光室長】「県としては、限られた人員で奈良の鹿愛護会の活動には、できる限りの支援をさせていただいているんですけれども、やっぱりそこのマンパワーというのは、我々も今課題かなという風には感じてます」
「奈良市であったり、春日大社さんであったりとか、そういった関係機関とも連携を取りながら、必要な対応を一緒に連携してと思っています」
奈良に受け継がれてきた鹿と人との適切な関係を守るために、なんとかこの状況を食い止める必要があります。
(関西テレビ「newsランナー」 2024年10月11日放送)