「龍のしっぽ」切ったのは「カニ」だった? 先月切られた「金龍ラーメン」看板のしっぽを近隣のかに料理店「カニ」立体看板が挟んで展示 「地域活性化・能登半島地震復興支援」のためコラボ 2024年09月18日
「龍のしっぽ」を切ったのは「近所にいたカニ」だったー
先月、民事裁判の結果切り取られた、大阪・ミナミのラーメン店のシンボルとして親しまれていた龍の立体看板のしっぽを近所にある「かに料理店」の立体看板が持った形で展示する取り組みが17日、始まりました。
騒動を逆手にとって、地域の活性化や能登半島地震の復興支援につなげようという取り組みです。
■裁判を受けて「しっぽ」を切断
「金龍ラーメン道頓堀店」は国内外から客が訪れる人気店で、龍の立体看板は店のシンボルとして知られています。
しかし、龍のしっぽの部分などが隣接する土地にはみ出しているとして、土地を所有する不動産会社が撤去を求めて4年前、裁判を起こし、金龍ラーメン側は、ブランドイメージが低下するなどと反論していましたが、大阪地裁は去年10月、はみ出した龍のしっぽ部分などは「不動産会社の土地所有権を侵害している」として金龍側に撤去を命じました。
ことし5月の控訴審でも金龍側の主張は退けられ、立体看板の『しっぽ部分』の撤去を求める判決が下されたため、金龍ラーメン側は「裁判手続きにこれ以上心血を注ぐことは難しい。従業員一同、真摯に向き合っていくことが大切だと考えた」などとして上告を断念し、『しっぽを切る』決断に至りました。
そして先月23日には、しっぽが切り落とされることに。
切られたしっぽの断面は「金龍ラーメン」の名前にちなんだ「金色」に塗装されたほか、切断された痛みに耐えるかのように、龍の目の下に『水色の涙』が取り付けられました。
■「地域活性化のため」実現したコラボ
そしてきょう17日からは期間限定で、近隣にあるカニ料理店「大阪かに源 道頓堀店」の立体看板のカニがこの龍のしっぽを挟む形で展示することになりました。
同じ道頓堀にある飲食店同士で地域活性化のためにコラボレーションした企画だということです。
カニの立体看板の横には、「金龍さん、まあ、気張っていこや!」という応援メッセージも掲載されています。
■石川・七尾市出身の社長が「震災の復興支援」にも活用
また「大阪かに源」を経営する武田源社長は、能登半島にある石川県七尾市の出身。
「龍のしっぽ」を「カニ」に持たせて展示することで、募金活動のPRなどに活用し、能登半島地震の復興支援につなげたいと話しています。
【大阪かに源 武田源社長】「以前道頓堀で、能登半島地震の募金活動をやらせてもらい、金龍ラーメンさんはもちろんたくさんの商店街の方、大阪の方に協力してもらいました。今回金龍ラーメンのニュースを見て、何かできないかなと。恩返しという意味合いで。
能登半島(地震復興支援)の募金活動を(龍のしっぽを挟んだカニの)看板のもとでやっていくつもりなので、募金活動が広まったらいいかなと思っています。 『捨てるしっぽあれば拾うカニあり』というところですかね!」
この展示期間中、大阪かに源は、 道頓堀店の店内で、加賀野菜や石川県の名産を用意し、募金した人にプレゼントする「能登震災被災地募金運動」や名産品の販売を行い、売上金はすべて寄付するということです。
■実は廃棄処分の予定だった「しっぽ」 制作者も設置作業見守る
設置工事が始まる少し前、「龍のしっぽ」は、金龍ラーメンの立体看板を制作した「ポップ工芸」の中村雅英前社長から、かに源の武田社長へと手渡されました。
ポップ工芸は、道頓堀のユニークな立体看板の7~8割を制作しているということで、金龍ラーメンのものは、中村前社長が初めて手掛けたものでした。
取り付けは施工業者が担当し、ほかの土地にはみ出して設置されるとは思っていませんでした。
切断時には…
【ポップ工芸 中村雅英前社長(先月23日)】「なんかそういう事情があって取らなあかんとなると寂しいのはさみしいですね」
実は切断後、しっぽは廃棄処分されることになっていたそうで、中村前社長は17日朝、喜びを語っていました。
【ポップ工芸 中村雅英前社長】「廃棄処分することになっていた。このしっぽも喜んでいると思います。廃棄するものが、道頓堀にとって、繁栄に役立ってくれるのはうれしいと思います。奇抜なアイデアで面白いかなと思いますけどね」
【大阪かに源 武田社長】「ちょっと傾ける感じ、右か左」
設置作業では、カニが挟んでいるとはっきりわかるように、微調整しながら行われました。
【ポップ工芸 中村前社長】「いろいろ下から見てたけど、この角度が目立つと思いますよ。切ったしっぽを活かしてくれはって、みんなが見てくれたらうれしいですね」
そしてしっぽを切られた「龍」も「うれし涙」を浮かべる表情に。
金龍ラーメンを運営する金龍製麺の林裕人社長は、「先月に龍の立体看板のしっぽを切除した際、予想を超える大きな反響をいただき、さまざまなご意見・ご感想を頂戴しました。今回の出来事をうけて、龍の立体看板は金龍ラーメンのアイデンティティであることを当社としても再認識したと共に、この龍のしっぽを道頓堀の活性化に少しでも活用できないかという想いを持つに至りました。このように考える中、同じく道頓堀に店舗を構える大阪かに源様にお声がけをいただき、コラボレーションの機会を頂戴したことに、エールのメッセージまで寄せていただいたことに、感謝の気持ちでいっぱいです。この気持ちをうれし泣きする龍の立体看板で表現させていただきました。今後とも、他店様とも協力しながら、道頓堀を盛り上げていきたいと思います。また、コラボレーションの期間中、大阪かに源様が行う能登復興の取り組みに、少しでも貢献できればと思っています」とコメントしています。
龍のしっぽは、10月10日まで挟まれるということです。