どうなる兵庫県…。
注目が集まる斎藤知事の進退問題について、知事経験者でもある弁護士の橋下徹氏はこう解説します。
■橋下氏「斎藤知事は意固地になっている」
県議会議員86人全員が辞職を求めるという事態。斎藤知事は今のところ続投の意思を表明しています。
かつて知事を経験した橋下さんが斎藤知事に伝えたいこととして、次のように話しました。
【橋下徹氏】「“もっと感情を出してもいいのでは”と。(斎藤知事の)インタビューを聞いても、『批判の声があまりなかった』って言っていたでしょ。かなり意固地になってるなと。もう県庁に批判の声がたくさんあるのに、出かけて行った場所で『批判の声がない。がんばれという声をいただいている』というのも、かなり意地になっている。その理由は、これは推測ですよ。斎藤さん、僕は辞めるべきだと思いますけど、やっぱりやってきたことが色々あるんですよ。で、全く今は評価されていないでしょう。だから、腹の中で『いや、俺これだけやってるやんか』っていうのは絶対あると思うんです」
「(元明石市長の)泉(房穂)さんが『斎藤さんは何もやっていない』ってことを言いまくってるんですよ。『ちょっと待て』と言わせてもらえれば、私立高校の授業料を無償化したりとか、知事報酬をカットしたり、それから天下り団体を改革したりとか。それから、大学の授業料無償化もやって、その元明石市長の泉さんがいろんなことを自分で『やってる、やってる』って言うけど、彼がやっていることよりも困難で、規模も大きな改革をやっています。僕はそう評価します。それはやっているんだけど、でもダメなものはダメ。でもこの部分、やっていることもちゃんと伝えてあげなきゃいけないなと思う」
「おねだりについても、多分、斎藤さんは腹の中で『いやみんな知事、市長もやっているだろう』と。最近、松井さんとか色んな人が今どんどん番組に出て、みんなもらっているって言ってますから。『みんなもらっているやんか』と。だからパワハラの部分も、これダメなんですよ、今の時代は。『でも国会議員みんな、いまだにそういうことやってるだろう』と。『俺は霞ヶ関の総務省官僚時代、こういうパワハラを受け、これはパワハラと思わずにやっていた』という思いがあるから。これはアップデートしなきゃいけないんですよ、思考をね。でもそこの感情を出したらいいと思う。出した上で、『ここは評価できる。でもダメなところはダメ』って議論にならないと、全否定になってるから、殻に閉じこもってますよ」
■告発者探しの末に職員が死亡…「本来は辞職だと思う」
橋下氏は斎藤知事に対し、知事として実績があったと評価した上で、 告発者捜しをして、当事者の職員が死亡した時点で「本来、組織のトップとしてはもう辞職ということ」としたうえで、こう指摘します。
【橋下徹氏】「今もう全国からここまで100%、自分の存在とか人格を全否定されてるようなことになれば、人間誰しも、やっぱり防御反応になってしまいますよ。誰か、ちゃんと(斎藤知事の)話を聞ける人がいないんですか。『ちょっと腹割って話そうよ』と。だから(大阪府知事の)吉村(洋文)さんが電話したみたいですけど、維新の代表としても『辞めたら』って言ったんですけど、(吉村知事と斎藤知事は)ほぼ同い年ぐらいなんで、もう維新の立場を離れて、『一回ちょっと休憩がてら話そうよ』といった事を言ってあげてもいいのかなと思います」
【橋下徹氏】「もう完全に意地になっちゃっている。もう『法的に問題ない』『適切だ。不適切はない』、もう自分を完全に正当化しているでしょう。もう全否定されてるもんだから、これに反発しようと思ったら、そうなってしまうんですよ。道義的責任、それは(斎藤知事も)分かってますよ、あるの。だって亡くなっているんですから、職員が」
■辞職を促した吉村知事 かつて斎藤知事の上司だった
知事同士の立場でありながら辞職を促した、大阪府知事で日本維新の会の吉村共同代表と、斎藤知事について。2人はかつて、上司と部下の関係でした。
斎藤知事は東京大学を卒業後、総務省に入省し、その後、大阪府庁に勤務。財政課長などを務めています。大阪府知事の吉村さんと上司と部下の関係だったということです。
そして2021年には、自民党維新の会の推薦を受けて、兵庫県知事に初当選しています。
選挙で共に戦い、知事としての立場も分かる吉村知事だからこそ、斎藤知事にいえることがあるのかもしれません。
吉村さんが斎藤知事へ直接行った電話での説得に関して、橋下氏はどのように見ているのでしょうか。
【橋下徹氏】「維新の立場としてはそうせざるを得ないでしょう。やっぱり維新は今、大ピンチの状況だから、斎藤さんを最初はしっかり守っていくというところを、維新は方針転換したというふうにいっていますけど。維新の立場としては、斎藤さんに辞めてもらわなきゃという風になるんでしょうけど。ここは維新の立場でも、吉村さんはやっぱり知事経験者としていろんな苦労も知っているから、さっき言ったように、斎藤さんがやっているところは評価すると。だけど、もっと『ここは本当はダメだよ』って」
「斎藤さん、いろいろ聞くと、財政課長時代はものすごく仕事できる人だったみたいです。仕事にも厳しく臨む人だったんだけど、時代が変わったことに着いていけていなかったんですよ。だから、自分がされてきたこと、国会議員も今ものすごく横柄にしてます。だから『これぐらいのこと当然やんか。こんなの全然パワハラでも何でもない』っていう意識で、兵庫県庁の職員にその仕事のやり方を求めてしまったから、今、反省はしてるんだけども、これは自分からするとパワハラじゃないっていう思いがあるんでしょうけど。それはやっぱり吉村さんとかが『いやもうそれもあかん、あかん』ということも、もうちょっと評価するところは評価しながら言ってあげないと。斎藤さんも本当に今、耳を閉ざしてしまってますよね」
■「考え方が違う人を副市長にした」大阪市長時代の橋下氏
橋下氏は知事時代、何かあれば相談できるような人はいたのでしょうか。
【橋下徹氏】「僕が大阪市長になった時は、市役所職員が全員敵だったわけですよ。もう市役所が総力を挙げて僕を落選させようとしたわけですから。その時の、ある意味、これはその当事者が聞くと『いやいや』と言うかもしれないけど、でも僕、確認したんです。ある市役所のドンの人。多分、僕のやり方や僕の考え方にも反対してるだろうし、大阪都構想に反対しているかもしれないけど、ぜひその反対する声を僕にぶつけてほしいと言って、その人を副市長にしたんですよ。
(Q.あえてちょっと考え方が違う人を副市長に任命した?)
【橋下徹氏】「ちょっとどころか全然違うみたいな、真逆の人をね。維新の会は大騒動になりました。『あの人が副市長か』と。『今まで維新がさんざん苦しんできたのに』と言うんですけど。ただ、僕はその人に言ったんです。『反対するのはいいけれども、最後決めたことには従ってくれますか』って言ったら、『われわれは公務員ですから、決まったことには法律に基づいて従う』と。
その代わり市役所の中ではもう反対意見がバンバン出るし、僕が反対意見を浴びているところも職員にわざと見せていました。もちろん全部の意見に従うわけではないけど、最後に決める時は決めるけども、でもやっぱりそういう、周りに反対する人がいっぱいいる方が、綱から落ちなかったですね。これは大阪府知事の時もそう。いっぱい僕の意見に反対する人が周りにいたから。でもそれを最後に振り切っていく時はあったけど」
■「供述聞いて恐ろしくなった」告発受けた兵庫県幹部の当時の対応
百条委員会で橋下氏が大問題だと思う点は“告発者探し”です。
3月20日に斎藤知事は告発文を把握し、21日に調査を自ら指示しました。これに対して、百条委員会で片山前副知事は「知事から『徹底的に調べてくれ』と話があった」と証言。
斎藤知事は「告発というより誹謗中傷性の高い文書であった。なのでその作成者が誰なのかを探して行くことは必要」と、調査を指示したこと自体は本人も認めました。
その後、3月27日に「うそ八百、公務員失格」と問題発言。これに対し、百条委員会で片山前副知事は「想定外だった」と証言しています。
さらに5月7日、告発者である元局長に停職3カ月の懲戒処分が下されています。これは内部調査で処分を決定していて、第三者の調査は行われていないことも分かりました。
公益通報として扱わず、誹謗中傷性の高い文書だと捉えていますが、橋下さんの見解は?
【橋下徹氏】「ここが一番の問題。百条委員会での供述を聞いて恐ろしくなった。こういうことが兵庫県庁で行われていたのかと。しかも数人の幹部で。まず告発文を斎藤知事が受けて、自分に対しいろいろ書かれていました。それから副知事に対することも書かれているんですね。本人たちからすると『うそだ』と自分たちで判断して『不正の目的だ、誹謗中傷だ』というんですよ。第三者から見ると誹謗中傷ではない。人格攻撃で書いているわけじゃないから。この告発文が誹謗中傷なのか、不正の目的なのか、それとも事実なのかというのは本人じゃなくて、第三者に判断させないと」
「ところが兵庫県庁の幹部は、自分たちの文章で『これはうそだ。不正目的だ。誰がこの文章を書いたんだ。徹底的に調査しろ』と、副知事が本人にかなり圧をかけた調べをして、パソコンの中を調べて。最後は懲戒処分。ただ懲戒処分の中身は、確かに仕事上のパソコンで私的な文章を作るのはアウト。この告発文以外に数百ページにわたって私的な文章を作っているので、これはアウトなんですけど。でもここに、その告発文を配布したことも混ぜこぜにして懲戒処分になったというのは、明らかに告発者つぶしです。これは絶対にやっちゃいけない。やるなら本人たちじゃなく、第三者に調べさせて本当にこれが“うそ八百”、不正目的、誹謗中傷だったら、第三者がその意見を出して処分しなきゃいけない」
■一番のポイントは“告発者つぶし”
最初から第三者機関に委ねて対応していけば、、ここまでの大ごとにはなっていなかったということでしょうか。
【橋下徹氏】「なっていないと思います。だから第三者がきちんと調べて、場合によってはやっぱりこれは真実じゃなかったという結論になるかも分からない。真実だとしたら、これはやっぱり知事、いや副知事に何か是正措置が来るかもしれない。その手続きにしっかり沿っていけばいいわけです。となれば、その職員の方も亡くならなかったかも分からない。もう斎藤さん、ずっと『これは誹謗中傷の文章だ、公益通報に当たらない。不正目的だ』。副知事も、知事も言っているんだけど、疑惑を受けた当事者が言っちゃいけませんよと。第三者で判断させなきゃっていうところが一番の問題点ですね」
「パワハラ、おねだりは確かにしっかり見ていかなきゃいけないんですよ。でも一番の重大なポイントは“告発者つぶし”の方なんです」
兵庫県議会の議員、86人全員から辞職を要求される斎藤知事の進退について、引き続き注目です。
(関西テレビ「旬感LIVE とれたてっ!」9月11日放送)