シートベルトが凶器に。
幼い姉妹が死亡した事故を受け、チャイルドシートの着用基準を変更すべき、という議論が起こっています。
■子供が「シートベルト着用」で死亡とみられる事故が発生
日本自動車連盟=JAFの実験映像を見てみると。
時速55キロの車が正面衝突すると…、助手席に乗った子どもは、シートベルトを着用していても、身体が前に乗り出しさらに、首にベルトが食い込み、締め付けられています。
実際にシートベルトで死亡したとみられる事故も起きています。
8月18日、福岡市で路線バスと軽乗用車が正面衝突し、軽乗用車に乗っていた7歳と5歳の姉妹が死亡。
警察によると、姉妹はチャイルドシートではなく、後部座席のシートベルトを着用していて、腹部の出血がひどいことから、シートベルトの締め付けが原因の可能性があるということです。
【名古屋大学大学院 水野幸治教授】「シートベルトは大人用に設計されているので、骨盤からベルトが外れたり、あらかじめベルトが腹部に入っていたり、こういった状況で、恐らく今回もけがしたのでは」
■「正しくシートベルト装着」できない場合は「チャイルドシート」を
どのような対策をすれば良いのでしょうか。
【JAF大阪支部事業課 中植啓伸さん】「大人も子供も一緒なんですが、鎖骨の中央辺りにベルトがかかる状態。腰骨があるので、腰骨を通る位置で固定できるのがいいと思います」
首などにシートベルトが引っかからないよう、6歳未満は道路交通法でチャイルドシートの使用が義務付けられています。
国交省などは、6歳以上でも正しくシートベルトが装着できない場合は、チャイルドシートの着用を推奨しています。
■街の人「つけておきなさいとは言うけど、どうかな」
しかし、街の人に聞くと6歳を境に、使用するか悩む人も多いようで…。
【2歳と5歳の子を持つ親】「つけなくてもいいと思ってたかもしれないですけど、そういう事故が必ずしもない訳ではないので、やっぱりつけようかなと」
【2歳の子を持つ親】「小学生入ったら、多分もう(座席に)座りってなるか、そもそも子供が嫌がっちゃうんちゃうかな。もう自分で座るって言いたがるだろうな。(チャイルドシートを)つけておきなさいとは言うけどどうかな」
■チャイルドシートは「体に合ったものを正確に」
大阪市西区の商業施設では、チャイルドシートやジュニアシート、およそ30種類を取り扱っています。
商品の多くは2万円から3万円ほど。最近は座席に簡単につけられるチャイルドシートが主流になっています。
【イオン大阪ドームシティ店 岡部歩さん】「お子さまの体に合ったものを正確に取り付けできる。それが一番安全にはつながると思うので、そういったことを基準にお選びいただければ」
■6歳以上でも140センチ未満の場合は使用を推奨 「法律の改正するべき」と専門家
JAFは使用が義務づけられていない6歳以上でも、身長140センチ未満の場合は、使用を“推奨”していて、さらに基準を150センチ未満に引き上げることを検討しています。
【JAF大阪支部事業課 中植啓伸さん】「法律では6歳未満が着用義務になっているので、“6歳超えたら使わなくてもいい”という判断をする方もいると思います。お子さまを乗せた際に、シートベルトが鎖骨を通っているのか、腰骨の横を通過するかを見ていただきたい」
一方、海外では年齢だけでなく、身長150センチ未満の子どもにはチャイルドシートの使用を義務付けている国も。
専門家は「子供の安全のために、法律を改正し着用基準を改めるべき」と話します。
【名古屋大学大学院 水野幸治教授】「ショルダーベルトが肩からかかるかが、身長に関係するので、身長で選ぶのが本来の姿。150センチ未満の子供は、必ずジュニアシートをつけると、法律改正を考えていただきたい」
■「新しい事実が発覚すれば、法律を変えていくのは一般的」と藤井教授
専門家からは、法改正すべきではないかという意見が聞かれました。
また番組コメンテーターの京都大学大学院藤井聡教授はこのように話します。
【京都大学大学院 藤井聡教授】「元々チャイルドシートそのものは、昔は義務付けられていなかったものが、義務付けられたわけですが、なぜかというと交通安全研究や、事故の研究を通して、科学的にそういうことが必要であるとなったから、その事実に基づいて法律が変わったわけです。新しい事実が発覚してくれば、きちんと法律を変えていくのは、極めて一般的なことです。僕はこういう議論は進めて、検討を進めていけばいいと思います」
(関西テレビ「newsランナー」2024年8月23日放送)