神戸市北区で2010年に殺害された男子高校生の遺族が、加害者とその両親に損害賠償を求めた裁判。
被害者の父親が法廷で「どこまで責任から目を背けるのか」と訴えました。
■殺人事件の遺族が起こした民事裁判 被害者の父の意見陳述
2010年、神戸市北区の路上で高校2年生だった堤将太さん(当時16歳)が、ナイフで何度も刺されて殺害されました。
事件からおよそ11年後に逮捕されたのは、事件当時17歳だった男(31)でした。
去年開かれた刑事裁判で、男は殺意を否認し、当時は精神疾患があったと主張。
神戸地裁は男側の主張を退け、懲役18年の判決を言い渡し、およそ9300万円の損害賠償を命じましたが、男は控訴し、損害賠償についても不服申し立てをしました。
遺族は男に対し改めて、事件の責任を問うとともに、両親については「監督を怠り、事件が起き、さらに事件直後に転居させ、犯行の発覚を遅らせた」などとして、損害賠償を求める民事裁判を起こしました。
■「お金を求めているわけじゃない」責任を果たすよう求めて起こした民事裁判
【堤将太さんの父・敏さん】「お金を求めているわけじゃない。その責任をちゃんと果たしなさいと」
そして22日の第一回口頭弁論で父・敏さんが意見陳述し、裁判官たちに自身の経験をもとに、犯罪被害者の苦しみを語りかけました。
【堤将太さんの父・敏さん】「自分の将来を夢見て、希望に胸を膨らませているさなか、将太はそのすべてを打ち砕かれ、奪われ、殺されてしまったのです。記憶が不意によみがえってくるたびに、あの時、あの場所に気持ちは引き戻され、息が詰まり、内臓が締め付けられ、足元から何もかもが崩れ落ちるような感覚に襲われます。あの時、あの瞬間に、私たちの心も殺されたのです」
そして刑事裁判で、遺族にとって納得のいく動機の説明や謝罪がなかったことから、22日出廷しなかった加害者側にこう訴えました。
【堤将太さんの父・敏さん】「どこまで責任から目を背けようとするのでしょうか。納得のいく答えを得るために、この訴訟を起こしました」
■「もうちょっと真摯に向き合ってほしい」 加害者の両親は「予見できなかった」と主張
【堤将太さんの父・敏さん】「もうちょっと真摯に向き合ってほしい、という気持ちしかないですね」
加害者の両親は、「転居は事件以前から決めていた。ナイフを使って第三者に危害を加えることは予見できなかった」などと主張しているということです。
(関西テレビ「newsランナー」2024年8月22日放送)