大阪府門真市にある大型商業施設で、深刻な渋滞が問題となっています。 その実態と原因を探りました。
■2時間で50メートルしか進まない 商業施設で渋滞が深刻な問題に…
7月14日、3連休の最中にSNSで相次いだ、ある投稿…
「屋上駐車場から無事に今、脱出しました」
「4時間半かかりました」
「冷凍食品が全て解凍された」
「2時間で50メートルしか進んでない。絶望」
車で店から出られない。 車で店から出られない。 こんなことが起きたのは、大阪府門真市にある商業施設。 実際にこの渋滞に巻き込まれた人が、関西テレビの取材に応じました。
■もともと交通量が多い場所へ、人気の商業施設が複数出店
【利用客 原田恭一さん】「子供をぼくの両親に預けて、午後から妻と買い物に行ったんですけど、車に向かうと、出庫できないような車がたくさん並んでいて、全然動いてなくて。一旦、店の中に戻って、30分お茶して戻ったんですけど、やっぱり全然動いてなくて。
もうこれは諦めようということで、インフォメーションに言ったら、翌朝取りに来ても追加料金はかからないと確認できたので、電車で帰った。最寄り駅にお願いして(両親に)迎えに来てもらった。皆さん結構イライラされてました。怒って(警備員に)詰め寄っている方もいらっしゃいましたね。一触即発みたいな」
この施設は、大阪の中でも有数の交通量がある中央環状線や、国道、さらに住宅などに囲まれた場所に位置していて、もともと交通量の多い場所です。
さらに、同じ敷地内に、人気の商業施設が2店舗出店しているため、近隣以外の場所からも多くの客が詰めかけます。
■取材班が実態調査
取材班も、この渋滞の実態に迫るために、お盆休み中の施設を取材しました。
【記者リポート】「午後3時です。出口から定期的に車は出てきているものの、道路の混雑は見られません」
この日は、7月の3連休のように「立体駐車場で車が全く動かない!」というようなことは起きなかったものの…
【記者リポート】「午後4時です。施設の入り口には、たくさんの車が列をなしています」
お盆休みの最終日だからなのか、商業施設のガソリンスタンドに長蛇の列が。 それに伴い、周辺道路にも渋滞が発生しています。
■車で10分のはずが1時間半 近隣住民も頭を悩ます
近隣に住んでいる人たちも、この渋滞には頭を悩ませているようです。
【近隣住民】「便利悪くなったというのは正直ある。こっち出ようと思ったら渋滞で遠回りするとか。オープンの時とか、車で10分で帰れるところが1時間半かかってた」
【近隣住民】「土日祝は(環状線に)いかないようにしている」
一体、なぜこの場所でひどい渋滞が起きるのか。
■「渋滞研究」の専門家に聞く
東京大学で渋滞のメカニズムなどを研究をしている、西成活裕教授に聞きました。 実は7月の大渋滞を受けて、この商業施設からの相談も受けたそうです。
【東京大学 西成教授】「土日の(利用客の)読みが、(施設にとっては)やっぱりうれしい悲鳴で、実は想定の倍来てます。立体駐車場の合流は課題ですね。お互いの駆け引きで決まっちゃっているので。立体駐車場の問題点が見事に出ちゃったなって」
主な原因は、これまでこのエリアを通ることのなかった人たちが、施設開業によって想定よりも多く、付近の道路を使うようになったことや、立体駐車場の利用者が帰るときに、各階で合流渋滞が起きることだということです。
■「1キロ25台だと渋滞、24台なら解消」 渋滞の『臨界現象』とは?
防ぐ手立てはあるのでしょうか。
【東京大学 西成教授】「高速道路って、1キロあたりの台数が25台ぐらいで渋滞するんですね。24台にするだけで渋滞なくなるんですよ。そういう『臨界現象』と言って、そこを境に風景がガラリと変わるのは、渋滞の面白いところなんですね。だいたい4時から5時ぐらいが、皆さん出庫のピーク。そこのピークを30分ずらすだけで、全く変わります。30分ずらしませんか?みたいなのを、例えばスマホだとか、場内のサイネージとかに表示するだけで、相当行動変容になるんですね。その代わり、ちょっとコーヒー1杯無料券みたいな配ったりですね」
■「今後、解決に取り組む」と運営会社
このような状況について、運営する三井不動産は「渋滞発生で、近隣の皆様及びお客様にご迷惑をおかけしていることは承知しており、ご不便をおかけし申し訳ないと考えています。今後、誘導員の増員、渋滞緩和に向けた施設内の改良工事を予定しています」とコメントしていて、今後、西成教授とも、この現状の解決に取り組むそうです。
利用客が多い人気施設だからこそ起きる渋滞問題。 利用客以外のためにも、早期の解決が求められています。
■「商業施設の渋滞」約8割が巻き込まれた経験あり
商業施設での渋滞について番組でLINEアンケートを実施しました。
「Q.商業施設の駐車場“激”混み経験は?」という質問に対して、経験があると回答した人は77%にも上りました。
回答した中には「アイスが溶けた」(10代)、「入り口で渋滞。映画の上映時間に間に合わなかった」(60代)、「助手席で夫に寝られて腹立たしかった」(40代)という声がありました。
■“ごほうび”効果? 「客の行動変容で渋滞は解消する」
渋滞解消に向けた取り組みは行われています。 未来の混雑を独自分析で予測する東京大学の西成活裕教授によると、去年12月に埼玉県の「ららぽーと富士見」で実証実験を行ったそうです。
・館内への滞留を促す放送を9回実施
・“ごほうび(500円の商品券)”を配布
その結果、客の行動変容が起こり、渋滞が解消したということです。 ちょっとした行動変容で渋滞は解消するそうです。
【共同通信社 編集委員 太田昌克さん】「恐らく一種の行動経済学だと思いますが、大切なことは買い物は家を出てから帰るまでが買い物なんです。安いから買って帰ってくださいじゃないんですよ。そして地元の皆さんにとってはオーバーツーリズムならぬ、オーバーコマーシャリズムになってはいけないのですよ。
色んなアイディア使いながら、場合によってはAIも使って、行動分析をしながら、お客様のより利便性の高いモデルを提供して行く専門家の知見、それから行政もしっかり関与して、地元がからむ話ですから、より良き買い物文化を創造してほしいですね」
近隣住民の方が迷惑しているという声もあったこの渋滞。解消につながることが期待されます。
(関西テレビ「newsランナー」 2024年8月19日放送)