経営者の高齢化などで年々数が減り続けている、町の銭湯。
そんな銭湯を救おうと活動する、京都大学のサークルがあります。率いるのは、銭湯愛あふれる“熱血京大生”です。
■掃除などが負担になった店主に救いの手
店内にはビートルズが流れる銭湯「東山湯」。
京都大学からわずか100メートルの場所にあり、創業以来100年以上、大学生や地元の常連客で賑わっています。
【常連客】「週3回、多い時で4回(通う)。ジェットバスとサウナ、電気風呂も気持ちいい」
【常連客】「汗の出方が違う、家の風呂とはな。これで一杯飲める」
「ビートルズ」が大好きな2代目店主・東山四郎さん(76歳)が、夫婦2人で切り盛りしています。
しかし、掃除のために女風呂と男風呂を隔てる壁の通路を通るのも、ひと苦労。
【東山湯 店主 東山四郎さん】「足が悪いから、昔は一気に超えられたけど、超えられない。よいしょ…」
数年前から病気で足腰が悪い2人にとって、銭湯の準備や片付けは体の負担となっています。
そんな状況を救うのが、風呂場を掃除する若者たち。その名も「京大銭湯サークル」。週2回、閉店後の掃除をボランティアで手伝っています。
【京大銭湯サークル 3代目会長 竹林昂大さん】「流し終わったら、いすとおけを重ねて隅っこに置いておこう」
中心にいるのは竹林昂大さん(26歳)。京都大学工学部の6回生です。
【京大銭湯サークル 3代目会長 竹林昂大さん】「カランはスポンジ使ってやるんですけど、カランって曲面の角度変わってる部分、触ったらざらざらして、こういうところに汚れがたまりやすいので。ただこするだけだと、意外とこすれてなくて」
掃除の指導も熱い、熱血男。
【東山湯 店主 東山四郎さん】「(皆さんのお手伝いは)僕は本当に助かってますよ。凝りすぎかな。凝っているからな…。性格なんだ」
■お湯より熱い?銭湯愛で存続危機のサークルを復活へ
真面目に勉強もしていますが、それ以上にハマっているのが「銭湯」。
【京大銭湯サークル 3代目会長 竹林昂大さん】「京大に受かって、京都に住むことができるようになったら、『絶対に銭湯に通うんだ』っていう固い決意を持って。実際に受かった後も不動産屋さんで下宿を選ぶ時に、京大の付近に4軒くらいある銭湯に歩いて通える範囲内で、銭湯行く前提で風呂なしの家を選ぶくらい、銭湯に思い入れがあります」
高校時代によく自転車旅行に出かけ、銭湯で汗を流していた竹林さん。
【京大銭湯サークル 3代目会長 竹林昂大さん】「地域のコミュニティの拠点といいますか、いろんな人々の営みが集まって、こう溶け合って行く場所なんですよ」
そこで出会った人々のおかげで、銭湯にどっぷり“浸かって”しまいました。
銭湯には通いつつも、実は京大銭湯サークルとは縁がありませんでしたが、今年3月…。
【京大銭湯サークル 3代目会長 竹林昂大さん】「完全にサークルが消滅する危機にあると聞きまして、これはまずいと思って2代目会長に直談判して『ぜひ引き継がせてくれ』と」
名前は聞いていた京大銭湯サークルの廃部の危機を知り、立ち上がったのです。その結果、今ではメンバーが100人以上と見事復活。
■一心不乱に磨く学生たち 最後の楽しみは…
ある日の午前0時半、サークルの面々が東山湯の前に集まっていました。
【京大銭湯サークル 3代目会長 竹林昂大さん】「四郎さん、よろしくお願いします」
【東山湯 店主 東山四郎さん】「よろしくお願いします」
サークルの活動は、営業終了後の深夜です。
竹林さんの銭湯愛に惹かれた学生たちは、彼についてこう語りました。
【サークル員】「行動力の化身だよね。どんどん活動の幅を広げているので、すごい人ですよ。あの人は」
熱い背中と共に…。皆、一心不乱に磨きます。
8人がかりで1時間かけ、掃除完了です。
【京大銭湯サークル 3代目会長 竹林昂大さん】「四郎さん、今日も掃除終わりましたので。ありがとうございました。あの…お風呂いただいていいですか?」
【東山湯 店主 東山四郎さん】「どうぞ!」
【京大銭湯サークル一同】「ありがとうございます!」
これが本当の一番風呂。汗を流して一生懸命掃除をした後だからこそ、その気持ち良さはひとしおです。
【京大銭湯サークル 3代目会長 竹林昂大さん】「銭湯っていうのは命の洗濯場やと思ってます。身も心もリフレッシュできて、明日、あさってと人生を楽しむ活力を与えてくれる場所です。そこを自分たちの手できれいにするお手伝いをさせてもらえるというのは、非常に光栄です。これからも続けていきたいですね」
竹林さんや地元の常連客にとって、銭湯はなくなったら困る場所。
若い力と“熱い”銭湯愛が、これからの銭湯の歴史を紡いでくれそうです。
(関西テレビ「newsランナー」 2024年8月19日放送)