6日も猛暑日となった京都市。
鴨川沿いで休む人もいる中、ぽつんと佇む丸太。これ実は、ベンチなんです。
【街の人】「これを取っ払って道を広くしたらいいのではと思いますね」
【街の人】「大体、外国人の方かカップル(が座る)。僕は座らないですね」
Q.座ってみるとどうですか?
【街の人】「これは…5分ぐらい(しか無理)。勘弁してほしいです」
否定的な意見も多いようで…。
このベンチはSNSでも話題になり、「人に優しくないベンチ」「いけずいす」など、さまざまな声が上がりました。 設置されたのは12年前。鴨川沿いにはところどころにこのベンチがあります。
記者が座ってみると…。
【記者】「ひと休みするにはちょうどいいですが、背もたれがないので長時間の利用には適してなさそうです」
定点で観測してみると、2時間の取材で座った人は2人。 京都府は、なぜこのベンチを設置したのでしょうか。
【京都府 担当者】「橋の下に作ったパネルを見るために設置したもので、短時間の滞在を想定している。座りにくいデザインをあえて選んではいない」
Q.パネルを見るためにつけたベンチだそうですが?
【街の人】「そういうことなんですね。それなら背もたれをつけると(パネルが)見えにくくなるから、座面を広くしたらいいんじゃないかと思いますけどね」
■JR大阪駅前には奥行が約13センチのベンチも
取材を進めると、変わったベンチはJR大阪駅前にも。奥行はおよそ13センチで、背もたれの部分に隙間があります。
【座っていた人】「結構いつも利用していて座りやすい」
【座っていた人】「座りやすい」
【座っていた人】「お尻大きいからちょっと狭いのかな。痛いかな」
2023年、大阪市の公募事業で設置され、大阪の中心部にふさわしい景観を保とうと、寝たり、長時間滞在したりしないよう、このデザインにしたといいます。
【街の人】「こういうところって人が多いので、疲れてきた人が座るためにあるベンチなので、ずっと同じ人が座るのは良くないと思う」
【街の人】「すごく疲れてたら座ろうと思いますけど、もう少しお尻の部分を足してもらえたらなと」
受け止め方はさまざまなようです。
■全国で増える意地悪ベンチ 専門家が警鐘
一方で、「一部の人を排除しているのでは?」との声が上がるベンチも…。
東京・新宿区の高架下。繁華街が近く、夜中から早朝に若者や外国人が飲酒するため、住民から苦情があり「長く座れないように」とベンチの上に“ポール”を立てました。
これには街の人も…。
【街の人】「なんか悪意を感じるよね」
【街の人】「座れないですよね」
【街の人】「意地悪なベンチって感じですかね」
こうした座りにくい“意地悪ベンチ”は全国で増えていて、専門家は「不便で不寛容な世の中が進むのでは」と警鐘を鳴らします。
【東北大学 五十嵐太郎教授】「少しずつみんなの心が削られるようなものを公共に置くのは、多くの人が声を上げて怒ったらいいと思います」 「震災や災害があったら緊急の場所に使われるかもしれないし、いろんな可能性があるので、一部を排除すればいいという話ではない」
ベンチでゴロリとひと休みできなくなる日も? 街の思いと座る人の思い、そのバランスが求められます。
■災害・緊急時など「横になる」ことが必要な状況も?
座りにくいベンチが増加した背景はどのようなものなのでしょうか。
例えば大阪市では、座面を肘置きで仕切られたベンチが増えています。
これは30年前に「ホームレスの人が寝そべる」という苦情があり、設置されたものです。
現在は、「高齢者が立ち上がる時の手すりに必要」として新設されているそうです。
こうした現状について、東北大学の五十嵐教授は次のように話しています。
【東北大学 五十嵐太郎教授】「最近のベンチは横になる選択肢がない。調子が悪くなった時や災害などで必要な時もある。不便になる世の中が本当にいいのか、考えるべき」
状況や立場によっては、ただの“意地悪”ではありません。
「高齢者や子どもに優しいベンチであってほしい。手すりが必要ならベンチの両サイドにつけたらいいのでは。横にならないといけない時もあると思う」との声もありました。
【関西テレビ 神崎 博デスク】「緊急のことで考えると、例えば大阪市のベンチのような間に手すりがあるものだと、災害時や緊急時など、いざという時には寝られるように、盗まれないように対策を施したうえで、手すりを外せるようにしたらいいんじゃないかなと思います」
利用者のさまざまな声を拾い上げて、地域に合ったベンチが増えていくことが望まれます。
(関西テレビ「newsランナー」2024年8月6日放送)