7年前、当時2歳の娘に暴行を加えて死亡させた罪などで、一審で懲役12年の実刑判決を受け5年半以上勾留が続く父親について大阪高裁が保釈を認めました。
一審で実刑判決を受けた被告が、二審判決を目前に保釈されるのは極めて異例です。 取材を続ける弁護士資格を持つ記者は「逆転無罪の可能性が高まった」とみています。
■2歳の義理の娘の『頭部を暴行』死亡させた傷害致死罪
今西貴大被告(35)は2017年12月、大阪市東淀川区の自宅で、当時2歳4カ月の義理の娘・希愛ちゃんの頭部に何らかの暴行を加え、死亡させた傷害致死罪などで逮捕・起訴され、否認し続けた今西被告は、5年半以上勾留生活が続くことになりました。
■裁判の争点は『病死』か『暴行』か 一審は『懲役12年』の実刑判決
体に目立ったケガはなかった希愛ちゃん。
一審の裁判員裁判では、13人の医師が法廷に立ち、希愛ちゃんの死因が揺さぶりなどによる暴行か病死かが争われました。
大阪地裁は「損傷は脳の深い部分にある脳幹を含んでおり強い外力がないと生じない」などとして懲役12年の判決を言い渡し、今西被告は控訴。
■二審の判決を前に認められた『異例の保釈』
去年5月に始まった二審でも新たに8人の医師への証人尋問が行われ、弁護側は「脳幹の損傷を示す証拠はなく心臓突然死の可能性が高い」と改めて無罪を主張。
二審の判決言い渡しは11月となり、あとは判決を待つばかりでしたが、26日、大阪高裁は今西被告の保釈を認めました。
■「逆転無罪の可能性高まった」と弁護士記者
この裁判の取材を続けている弁護士資格を持つ上田大輔記者は「逆転無罪の可能性が高まった」とする見解を示しています。
上田記者はその理由として『二審の検察側の医師が虐待の根拠を示せていなかった』ことなどを挙げています。
上田記者の解説です。
■「一審で懲役12年の実刑。二審判決目前で保釈は想定できない状況」
【上田大輔記者】「午後5時前、今西被告は大阪拘置所の門からゆっくりとした足取りで出てきました。頬はかなりこけていてかなり痩せている印象を持ちました」
「今回の保釈決定は、私も非常に驚きました。これまで弁護団は一審から合わせて10回の保釈を請求してきましたが、いずれも認められず、今回が11回目の保釈請求となりました」
「一審では懲役12年の実刑判決が出ているので、二審判決の直前に保釈が認められることはなかなか想定できない状況でした」
■「二審の審理終了後に裁判官が2人交代になったことも影響か」
「ことし5月に二審の裁判の審理が全て終了しました。3人で裁判官は審理するんですが、その直前に裁判長を除く2人の裁判官が交代になったんです」
「審理終了後、交代した2人を加えて改めて新しい裁判官3人でこれまでの審理を再検討した結果、これ以上、今西被告の身柄の拘束を続けることはできないという異例の保釈決定の判断に至ったのだと思います」
■「虐待の根拠示せない場面が目立った検察側の医師」
「これで逆転無罪の可能性が高まったと感じています」 「私は、二審の裁判を全て傍聴しましたが、二審で検察側の医師が『画像に映っていない場合でも出血はあるんだ』と証言するなど、非常に虐待の根拠を示せていないという場面が目立ちました」
「そうした審理経過を踏まえて、今回の保釈判断に至っているものとみられるので、二審の結果は、逆転無罪の可能性が高いと感じています」
注目の判決は11月28日に言い渡されます。