障害のある人たちに強制不妊手術を行った、旧優生保護法の規定は違憲だとする最高裁判所の判決を受けて、17日、岸田首相が被害者たちと面会し、直接謝罪しました。
■不妊手術をされた原告に首相が直接謝罪
【岸田首相】「政府の責任は極めて重大なものがあり、心から申し訳なく思っており、政府を代表して謝罪を申し上げます」
岸田首相が謝罪をしたのは、不妊手術を強制された原告たちです。
原告たちは旧優生保護法の下、障害があることなどを理由に、不妊手術を強制されたとして、国に損害賠償を求めて提訴。
国は、不法行為から20年が経過すると賠償を求める権利が消滅する、「除斥期間」という規定から、原告たちには賠償を求める権利がないと主張していました。
しかし、7月3日、最高裁大法廷は「旧優生保護法は憲法に違反する」として、国に賠償を命じる判決を言い渡しました。
この判決を受けて、岸田総理は「原告たちに直接、反省とおわびの言葉を伝えたい」と表明。
最高裁判決から半月ほどたった17日、面会の場が設けられたのです。
大阪府に住む原告の野村さん夫婦は、この日を特別な思いで迎えました。
【野村太朗さん(仮名・80代)】「裁判も大変時間がかかって、つらかったんですけども、やっと裁判も終わって、このように首相と話す機会をいただけてありがたい」
【野村花子さん(仮名・70代)】「今から首相に会えるんですよね?会えるよね?ほんまやね?会いたいと思います。障害者に支援が行き渡るように、誰もが平等に暮らせるようにしてほしいと伝えたいと思います」
2人は50年ほど前に結婚し、子どもを授かりましたが、病院側から「赤ちゃんに異常がある」と言われ、妊娠9カ月の時、帝王切開で出産。子どもは生まれた翌日に亡くなりました。
この時、不妊手術をされていましたが、2人はそのことを40年以上知りませんでした。
救済に動くどころか、裁判で闘い続けた国。
最高裁が判断を下した時には、提訴から5年が経っていました。
■「除斥期間による権利消滅の主張は撤回」と岸田首相
岸田首相は17日、現在も審理中の同様の裁判において、「除斥期間」の適用の主張を取り下げるとしたうえで、原告以外も含めた、幅広い補償を検討する考えを示しました。
【岸田首相】「除斥期間による権利消滅の主張は撤回し、優生手術の実施が認められる訴訟については、和解による解決を速やかに目指してまいります」
旧優生保護法の下、不妊手術をされた人は分かっているだけでおよそ2万5000人。
野村さん夫婦は、加藤鮎子こども政策担当大臣などの閣僚が耳を傾ける中、長年抱えて来た思いを語りました。
【野村花子さん(仮名・70代)】「手術をされなければ、2人目を授かったかもしれません。障害者を差別せず、誰もが平等に、そのような世の中になってほしいと心から願っております。今でも私の傷は癒えません」
面会を終えた野村さん夫婦は。
【野村太朗さん(仮名・80代)】「本当に首相は優しく、色々話していただきましたので、これから色々私たちのためにも支援してくださると思います」
【野村花子さん(仮名・70代)】「本当に悲しい経験をしたんだなと分かっていただけたので、良かったと思います」
また、超党派の議員連盟は秋の臨時国会で、すべての被害者に補償するための法案成立を目指しています。
(関西テレビ「newsランナー」2024年7月17日放送)