17日、京都の「祇園祭」は、最大の見せ場「山鉾巡行」を迎えました。
一方で、伝統ある祭にも容赦なく襲いかかる「暑さ」。
今年は、祭り史上初となる、さまざまな「熱中症対策」が施されました。
午前9時すぎ、先頭の長刀鉾に乗るお稚児さんの見事なしめ縄切りで「前祭」の「山鉾巡行」が始まりました。
毎年7月17日に行われる前祭の山鉾巡行では、23基の山や鉾が祇園囃子の音色を響かせながら都大路を練り歩き、疫病退散を祈願します。 最大の見せ場は、曲がり角で90度向きを変える「辻回し」。
巨大な鉾が回転すると、沿道に集まった観客からは歓声が上がりました。
【東京都からの見物客】「初めて見たんですけど、すごくきれいで来て良かったなと思いました」
【山形県からの見物客】「今まで二十何回来てます。コロナでしばらく来られなかったので、感激してます」
午後0時半時点でおよそ14万人が訪れ、盛り上がりを見せましたが、珍しいハプニングも発生しました。 9番目に練り歩いていた「鶏鉾」の車輪が壊れてしまったのです。
【記者リポート】「鶏鉾を月鉾が追い越そうとしています」
立ち往生となった鶏鉾を慎重に避けながら、後続の月鉾がすれすれで追い抜きました。
この珍しい光景を不安そうに見つめていた観客からは、自然と拍手が起こりました。 ほっとひと安心も束の間。その後、気温が上がり始めると、 熱中症とみられる症状の人が続出しました。
暑さ・熱中症対策が、祭り運営の大きなポイントになっています。
京都「祇園祭」の最大の見せ場「山鉾巡行」。およそ14万人が訪れ、京都が熱気に包まれました。
さらに、今年も「山鉾巡行」を特等席で楽しみたい人のために、「プレミアム観覧席」が設けられました。
お値段、なんと最高で20万円!
巡行の歴史を解説してくれる音声ガイドや、浴衣の貸し出しなどサービスも充実しています。
一方で、「祭りの意義や歴史を感じる席にしてもらいたい」という理由から、今年はアルコールや料理は提供されず、利用客には熱中症対策のソフトドリンクが配られました。
沿道で見物する人たちもそれぞれに暑さ対策をしていますが、17日正午の京都市の気温は33度ちょうど。
熱中症とみられる症状で座り込む人の姿も見られました。 男女10人が熱中症の疑いで運ばれています。
観客だけでなく、山や鉾を曳く人たちは大丈夫なのでしょうか?運営側は、かつてない危機感を持っていました。
【祇園祭 山鉾連合会 山口敬一事務局長】「昨年も実際に現場で測った温度は40度近い暑さがありまして、みんなもう大変なんです」 「(巡行の参加者には)結構お年寄りも多いですし、小さいお子さんもいらっしゃいますので、その全てが安全に巡行できるような形を取らなければいけない」
今年はこれまで以上に巡行中の熱中症対策を強化しました。
去年までは、炎天下で自分の山鉾の出発まで最大で1時間近く待機しなければなりませんでしたが、今年からは巡行を始める時間に集合すれば良いというルールに変更し、待機時間を大幅に短縮しました。
また、水分補給については…。
【祇園祭 山鉾連合会 山口敬一事務局長】「以前は『人前でペットボトル飲むのはどうか』という議論がありましたけど」
これまでは山鉾巡行が由緒正しい神事であるがゆえに、人前での水分補給は控えるべきという意見もありましたが、今年は、「こまめな水分補給」を強く勧めています。
【祇園祭 山鉾連合会 山口敬一事務局長】「今は連合会としても『飲みたいときは飲んでください』と。ちょっと止まったところで、あんまり下品にならないようにペットボトルの水を飲むとか、おしぼりで拭うとか、こういうことは最近やっても問題ないという風な形で」
【ボランティア】「塩分補給大丈夫ですか?どうぞ、どうぞ」
見え方よりも命が大事。
飲み物などを携帯したボランティアが一緒に歩くなど、長い歴史の中でも異例の熱中症対策で臨む山鉾巡行となりました。
さらに、給水所を4カ所に増やし、万が一に備えて看護師も配置しました。
運営側は祭りの後に今年の熱中症対策を振り返り、来年以降、対策を更に拡充させていきたいとしています。
1000年以上続く歴史ある祭りを守り続けるために、時代に合わせた熱中症対策が求められています。
(関西テレビ「newsランナー」2024年7月17日放送)