■教員不足の解決に…免許持つものの教壇離れた「ペーパーティーチャー」 大阪府では3年で約50人が講師に採用
全国的に深刻化している「教員不足」。育休などを取った教員の穴埋めができず、大阪では160人あまりが不足しています。解決策はあるのか?人材掘り起こしの現場を取材しました。
大阪府河内長野市の天野小学校。
小学4年生たちに算数を教えている、山本美由紀先生(40)は、育休を取った教員の代わりとして赴任してきた「講師」です。
「講師」とは非正規の教員のことで、正規雇用の「教諭」に欠員が出た場合に派遣されます。
山本さんは、もともとは専業主婦でしたが、昔からの夢だった先生になりたいと一念発起。3年前に教員免許を取得したばかりです。
■学校を支える「講師」の先生 校長「おかげで適正な仕事量に」
【山本先生】 「子供たちからしたら、きょう初めての先生も10年目の先生も同じ先生なので、子供たちの1時間、すごく貴重な1時間なので。がむしゃらに必死に、今目の前にいる子供たちだけのことを考えて、ちょっとずつ改善とみたいな感じで、毎日の繰り返しです」
【小学4年生の児童】 「優しくて、わかりやすくて、丁寧に教えてくれる先生です」
この日は午前中の1時間目から4時間目まで休む暇なくフル稼働。学校にとって欠かせない「戦力」です。
【天野小学校・宮城正樹校長】 「子育ての経験をされているので、本当に上手に子供たちと接してくれているなと思います。(山本先生のおかげで)1人1人が適正な仕事量で仕事できていますので、本当にありがたく思っています」
学校現場を支えるこの「講師」が今、人材難に直面しています。
■講師が見つからず生じる「教員不足」 産・育休などの穴埋めできず…苦肉の策も
「教員不足」は、育休などの欠員を埋める非正規の「講師」が見つからないことで生じています。
大阪府内の公立学校では(大阪市・堺市・豊能地区除く)6月時点で、164人が不足していて、2023年の同じ時点より4割ほど増えています。
近年、産休や育休をとる人や、精神の不調を訴えて病気休職をとる人が増えたことが要因と考えられています。
【大阪府教育庁教職員人事課・岸野行男課長】 「我々としては非常に危機感を持ってここは受け止めているところです。学校現場の方は代替がいなければ現有戦力といいますか、配置されている元々の先生方で、チーム学校という形。かなり先生方にご負担かけているところだという認識をしております」
代わりが見つからない場合は、こんな苦肉の策も取られています。
【大阪府内の中学校の校長】 「病気休職した家庭科の先生の代わりが見つからず、分野の近い技術の先生に臨時免許を発行し、1カ月ほど家庭科の授業をやってもらった」
■「ペーパーティーチャー」掘り起こし 大阪府では3年で約50人が講師に
ただ、行政側も手をこまねいているだけではありません。
2024年5月に開かれた教員志望者向けのイベントでは、教員免許を取得しているものの、長らく現場から離れている人や一度も教壇に立ったことのない人、「ペーパーティーチャー」の掘り起こしに、特に力が入れられていました。
(Q教員免許は何年前に?)
【教員志望者向けのイベント参加者】 「13年くらい前ですかね。結婚して出産したので子育てに専念しようと思いまして」
【別の参加者】 「(教員免許の取得は)18年前です。(当時は)採用倍率とかもすごくて、ちょっとあきらめてしまった」
大阪府教育庁では、こうしたイベントを3年前から実施し、およそ50人が講師になっていて、手応えを感じているといいます。
■「非正規」に不安持つ人も… 貴重な人材掘り起こしへ
しかし、こんな声も…
【参加した40代の女性】 「講師ってなると、収入面が不安でもあるなと、毎年どこかしらの学校に所属できてたらいいと思うんですけど、必ずしもそうではないじゃないですか」
こう話すのは、およそ20年前に教員免許を取得した40代の女性。
教員になる夢を諦めきれない一方、中学生の娘を1人で育てていることから、今の仕事を辞めて、非正規雇用の講師になるのは迷いもあると話します。
【参加した40代の女性】 「自分がどれだけ先生になりたいかということは再確認できたので、ちょっと前向きには考えようかなと」
大阪府教育庁は、今後も講師人材の掘り起こしに力を入れていく方針です。
■停滞する文教費 教員の待遇改善に政府の意識改革を
関西テレビ「ニュースランナー」コメンテーターの共同通信社編集委員・太田昌克さんは「国や行政の意識改革が必要だと思います。国の文教費は、ここ20年ぐらいずっと4兆円台で続いていて、全く増えていない。これから防衛費が倍増になり、少子化予算も3兆円ついてきますが、文教費ももっと上げて、先生の給料を上げて人も増やすというように、教育改革をやって行くんだという政府の意識改革から始めてほしいです」と話しました。