いよいよQRコード乗車スタート 切符にまで導入の「QR」 カブらない理由は「10の78乗」通りのパターン 「数万年は枯渇しません」と開発会社 同じコード2回出現の心配はなさそう 2024年06月13日
鉄道各社がQRコードの利用を進めている。関西では、主要な鉄道が乗り放題となる新しい乗車券、「スルッとQRtto(クルット)」が6月17日に発売される。その名前通り、QRコードを使用した「乗車券」だ。スマートフォンに表示したQRコードを改札機の読み取り部にかざすことで、そのまま「チケットレス」で乗車できる。電車だけでなく、バスや提携する観光施設でも利用できるという。
また、JR東日本など首都圏の鉄道8社は5月29日、現在の「裏面に磁気が付いた切符」を、「QRコードを印刷した切符」に切り替えると発表した。「切符を改札機に通す方式」から、「券面(QRコード)を改札機の読み取り部にかざす方式」に変更する。磁気切符の「リサイクルしにくい」などの欠点解消につながるという。2026年度末から順次実施する予定だ。
今や、あらゆるところに利用されているQRコード。すっかり生活の一部となっている。しかし、これだけQRコードが社会にあふれていて、さらに鉄道の切符にまで利用となると、同じものが出現して、混乱が起きたりしないのだろうか?
QRコードを開発したのは日本の会社。愛知県に本社を置く株式会社デンソーウェーブ(開発当時は株式会社デンソーの一部門)が、1994年に開発した。QRコードについて、デンソーウェーブ広報の小島秀治さんに詳しい話を聞いた。
■バーコードの数百倍の情報
【株式会社デンソーウェーブ広報 小島さん】
QRとは「クイック・レスポンス」の略で、その名の通り、超高速で読み取れるのが最大の特徴です。そして、縦横2方向の二次元にすることで、数字なら最大7089文字と、バーコードの数百倍の情報を、小さなスペースで表現できるのです。
QRコードを見ると、左上、右上、左下の3か所に「四角形」があると思います。これは「切り出しシンボル」といって「位置を検出するためのもの」です。「ここにQRコードがありますよ」ということを3つのシンボルで示すことで、特定が早くでき、高速読み取りができます。そして、四隅の中で1つ、四角がない所が右下です。右下に切り出しシンボルを作らないことで、QRコードの向きを正確に読み取れるのです。
■QRコードは「数万年は枯渇しない」
(Q:毎日、あらゆる所でQRコードを見かけますが、同じQRコードが出現する心配はありませんか?)
【株式会社デンソーウェーブ広報 小島さん】
QRコードは、よく使われる大きさの場合、「10の78乗」通り以上のパターンを表せます。天文学的な数字ですから、数万年は枯渇する心配はありません。
具体的には、QRコードは、小さいものから順に、バージョン1~バージョン40まであり、よく使われる大きさはバージョン2(25セル×25セル)です。バージョン2の場合、データに使えるマス目が260個あります。
260個それぞれのマス目を白黒2種類のデータを表すので、全ての組み合わせは2の260乗、つまり約10の78乗になります。
バージョンが大きくなれば、更に多くの組み合わせが出来、最大のバージョン40は177セル×177セルです。入力できる文字数は、数字では、バージョン2が77、バージョン40は7089まで扱うことができます。(デンソーウェーブ広報 小島秀治さん)
10の78乗…。
万(まん)、億(おく)、兆(ちょう)、京(けい)、垓(がい)・・・と続き、「垓」からみて12単位上の「無量大数」でも「10の68乗」である。一般的に知られる最大単位は「無量大数」で、0が68個ついている。それよりさらに0が多く、単位すらない数。確かに天文学的数字である。同じQRが2回出現する心配は、しなくて良さそうだ。
■QRコードは汚れやゆがみに強い
切符は、ポケットに入れて、ちょっと曲がってしまうことがよくある。QRコードはたくさんのドットが書いてあって繊細な気がするが大丈夫なのだろうか?
【株式会社デンソーウェーブ広報 小島さん】
QRコードの特徴の一つとして、「汚れやゆがみひずみに強い」というのがあります。最大30%程度まで、情報の汚れや欠けがあっても読み取れますし、ゆがみやひずみも、ある程度は読めるようになっています。QRコードの、右下4分の1ぐらいの所に、小さな四角があります。専門用語で「アライメントパターン」というのですが、これがあることで、若干のゆがみやひずみ、汚れや欠けなどを補正することができるのです。(デンソーウェーブ広報 小島秀治さん)
知れば知るほど、QRコードの凄さと便利さを感じるが、当初は「バーコードより情報量が多くて汚れに強いコードを」と開発されたのだそう。その後、特許を取りつつも、権利交渉なしに自由に使える「パブリックドメイン」にしたことで、世界中に広まった。今や公共性の高いものから、地元スーパーのお得情報まで、あらゆる場所で使われているQRコード。読み取るだけならオフライン状態でも利用できる特性を活かして、災害現場などでも活躍する可能性もある。切符の次は、何に利用されるだろうか。今後ますます広がりそうだ。