滋賀県大津市で保護司の男性が殺害された事件。
逮捕された男がSNSに保護観察への不満を投稿していたとみられることがわかりました。
さらに取材を進めると、保護司の男性が「男の仕事が続かない」と、周囲に相談していたことも明らかになりました。
■自分の保護司を殺害した疑いで逮捕の男が送検
【記者リポート】「午前8時半です。飯塚容疑者を乗せた車が出てきました。中の様子をうかがい知ることはできません」
10日、大津地方検察庁に送検された、無職の飯塚紘平容疑者(35)。
大津市に住むレストラン経営者の新庄博志さん(60)を刃物で複数回刺すなどして殺害した疑いがもたれています。
6年前に起こした強盗事件で有罪判決を受け、保護観察中だった飯塚容疑者。新庄さんが保護司として立ち直りを支援する関係でした。
その2人に一体何があったのでしょうか。
■保護観察への不満の投稿や殺人をほのめかす投稿も
【飯塚容疑者のものとみられるX】「保護観察とか。全然保護しない」「やっぱり保護って言葉は要注意ワード」
飯塚容疑者のものとみられるXのアカウントには、保護観察への不満とも思われる投稿がいくつも確認されました。
さらには…
【飯塚容疑者のものとみられるX】「殺そうかなって妄想してる」
殺人をほのめかすような内容も書かれていたのです。
■保護観察中も就職先を転々と 「長続きしない」と新庄さんが周りにもらす
近所付き合いがほとんどなかったという飯塚容疑者。保護観察中も就職先を転々としていたとみられています。
2022年、新庄さんから飯塚容疑者のために、仕事を紹介してほしいと頼まれた男性は、関西テレビの取材に…。
【仕事を紹介した人】「話し方も口調も丁寧にあいさつするし、年齢からみて、そのあたり気配りできる人物という気がしました」
しかし男性が飯塚容疑者に建設会社を紹介したところ、2カ月程度で辞めてしまったといいます。
【仕事を紹介した人】「自分に対する評価が納得できない(と新庄さんから聞いた)。働く側と雇う側のずれが…」
(Q.新庄さんは何と言っていた?)「『長続きしないところがある』と言っていました」
2023年8月には、当時の勤務先への心境を署名付きで投稿するなど、仕事に対する不満があったことがうかがえます。
■保護観察中の人物に担当保護司が殺害される事件は初めて 同じ地区の保護司は「怖い」
法務省によると、保護観察中の人物に担当の保護司が殺害された事件は、初めてとみられます。
新庄さんと同じ地区で活動する保護司が不安な思いを語りました。
【新庄さんと同じ地区の保護司】「怖いことだと思います。保護司として、色んな人が立ち直って社会人として立派に果たしていくのを、期待して対応するわけです。相手がどんなことを考えているか分かりません。そういう点で、とても悩みが深いと思います」
保護活動の中で、新庄さんの人柄が垣間見える様子もあったといいます。
【新庄さんと同じ地区の保護司】「(新庄さんは)性善説をもっていたと思う。環境や事情によって人間は落ちて、あなたは悪い考え方をして、罪を犯してしまうんだろうと。新庄さんが明るい人で、人を性善説でとらえていた」
飯塚容疑者は調べに対し、「私はやっていません」と容疑を否認していますが、警察は2人の間のトラブルについても調べています。
■保護司の減少・高齢化などの課題 なり手不足の背景には「対応難しい犯罪の増加」
保護司の新庄さんは飯塚容疑者の仕事が続かないことを、周囲に相談するなどしていたようです。
【共同通信社・編集委員 太田昌克さん】「今回の事件で保護司という仕事に対する関心が、社会自体低かったんじゃないかなと、初めて思いました。人を更生する、やり直しの人生を与えるっていうのは、新しい命を吹き込む、魂を吹き込む作業なんですよね。それを背負って、大変崇高な仕事をされてた新庄さんの死を、私たち社会全体が、重く受け止めなければいけません」
改めて保護司の仕事についてみていきます。
罪を犯した人などの立ち直りへ向けて指導・助言を行っていきます。非常勤の国家公務員ですが給与はなく、民間のボランティアとなっています。
具体的には、保護観察中の人の住まいや就職先など支援し、保護司1人につき担当するのは2人から3人です。月に2回程度の面接を行います。
保護司の減少、高齢化の課題もあるということです。
地域の安全や安心を守るために、誰かが担わなくてはならない役割ですが、なぜなり手が不足しているのでしょうか。
【関西テレビ 加藤さゆり報道デスク】「国の調査などによると、保護観察対象者の犯罪類型が『覚せい剤・精神疾患・家庭内暴力』など対応の難しいケースが増えていることがあります。それによって、自宅での面談に家族が不安を抱くとか、保護司自身も活動そのものに不安を抱くといった傾向があります。対策がいま急がれている状況です」
保護司が抱く不安をどう取り除き、どう安全を確保するか早急に対策を講じる必要があります。
(関西テレビ「newsランナー」2024年6月10日放送)